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2020-12-06

“奇跡の人”スペンスがガルシアに完勝

強烈な左ストレートでガルシアに迫るスペンス

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WBC・IBF世界ウェルター級タイトルマッチ12回戦、チャンピオンのエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)対挑戦者ダニー・ガルシア(アメリカ)の12回戦は、5日(日本時間6日)、アメリカ・テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで行われ、スペンスが3-0の明白な判定で勝利を収めた。スペンスはIBF王座5度目、WBCでは2度目のタイトル防衛に成功している。

 センスあふれる動きと、どこまでも攻撃的な戦いが光るスペンス。あざといまでの左フックのカウンターを軸にして堅調に展開を作るガルシアの顔合わせ。パンデミックに揺れた2020年のなかでは、間違いなく屈指の好カードに違いない。ただし、試合前は不可視な要素だらけだった。

 不安の種はスペンスにあった。昨年10月、テキサス州ダラス市内で重大な車事故を起こしていた。市中を高速走行中にハンドル操作を誤って、複数回、回転したのちに壁に激突。白いフェラーリは大破した。スペンスは奇跡的に軽傷とされたが、ほんとうのところはどうなんだろうか。多くが疑問の目を向けるなかで、難敵と戦うのだ。しかし、この夜、リングに立ったスペンスは絶好調だった。体はむろん、心も健やか。頭脳的なペースメイクで、12ラウンド36分間すべて、30歳のサウスポーが思い描いたとおりに管理していった。

 序盤からスペンスがプレスをかけて出る。伸びのいい右ジャブを次々にヒットする。至近距離へと迫り、左ストレートをボディに痛打する。さらに攻撃を顔面に切り返し、その左をストレート、オーバーハンド、スイングと多彩に打ち分ける。数は多くはないが、右フックも鋭い。ガルシアは引いて戦うことを強いられ、左フックを打つ体勢を作れない。右のパンチも単発に終わり、それもスペンスのしなやかな上体の動きに威力を減殺された。

 中盤戦を過ぎるあたりから、スペンスはやや攻め数を手控える。12ラウンドの戦いを設計するうえで、これも計算どおりだったのだろう。ポイントこそ失ったが、ガルシアに流れを譲り渡すことはなかった。最後の2ラウンドは、スペンスが再びギアを上げ、ポイント差を安全圏にまで押し広げていった。

30歳のサウスポーは交通事故からの完全復活を印象づけた

 オフィシャルの採点は116対112、116対112、117対111。いずれもスペンスの勝ちとしていた。
「これが真実だ。完全復活を証明できたと思う。ガルシアは偉大な選手だが、この階級のベストは私だ」とスペンスは満足げに振り返った。ガルシアは「より強かったのはエロールだということだ。とにかくジャブが強くて、やりたいことができなかった」と完敗を認めていた。

写真◎ゲッティ イメージズ

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