アメリカンフットボールのXリーグは、11月30日、日本社会人選手権・ジャパンXボウルの準決勝2試合を東西の2会場で行った。富士通スタジアム川崎で開催された富士通フロンティアーズ対エレコム神戸ファイニーズの1戦は、富士通がエレコム神戸に快勝して、7年連続11回目のジャパンXボウル出場を決めた。大阪・吹田市の万博記念競技場で開催されたオービックシーガルズ対パナソニックインパルス戦は、パナソニックが24-14でオービックに勝って、4年ぶり14回目の出場を決めた。この結果、ジャパンXボウル(12月16日、東京ドーム)は富士通対パナソニックの対戦となった。
富士通オフェンスが、第4クオーター(Q)冒頭までにレッドゾーンに攻め込んだ4回のドライブをすべてTDにする決定力で勝負を決めた。
富士通は第1Q、最初のオフェンスでRBサマジー・グラントの70ヤードのランで一気に攻め込むと、QB高木翼からWR中村輝晃クラークにタッチダウン(TD)パスが通って先制。さらに、DB小椋拓海のパスインターセプトから、高木が2本目のTDパスをWR岩松慶将に決めた。富士通は第2Qには、K西村豪哲が48ヤードのFGを決めて17点差として、後半へ折り返した。
追うエレコム神戸は第3Q開始のドライブで16プレー9分余りを使って83ヤードを進みTDを決めるが、ポイントアフタータッチダウンに失敗、11点差に。しかし富士通は直後のドライブでグラント、ウィリアムズ・デレク・アキラの2人のRBが続けて32ヤードずつゲインしてレッドゾーンに侵入、QB高木がルーキーWR松井理己にTDパスを決めて再びリードを広げた。富士通は第4Qにも、高木がこの日4本目のTDパスをWR岩松に決めて、勝利を決定的にした。
富士通守備陣は、エレコム神戸のQBコーディー・ソコールに強いプレッシャーをかけ続け、第3Qのドライブ以外は、オフェンスを封じ込んだ。エレコム神戸は第4Q6分に川淵将紀のランでTDを返したが、反撃はここまでだった。
両者はレギュラーシーズンでは第5節に対戦し、27-10というスコア以上に富士通が苦戦した。そして、この準決勝は富士通が負傷でエースQBマイケル・バードソンを欠いた。エレコム神戸が有利という予想も一部であったようだが、ポストシーズンでの3連覇の王者の力はそんな底の浅いものではなかった。
RBグラントに加え、この試合からはRBデレクも復帰。魔術的な動きで相手ディフェンスを幻惑するグラントと、縦に力強いランを見せるデレクのコンビネーションでは効果的で、2人で236ヤードを奪った。さらに、レッドゾーンに攻め込んでからは、QB高木のパスが冴えた。この試合のパス獲得距離は122ヤードながら、タイプの異なるレシーバーに違うパスを投げ分け、奪った4本のTDはすべて20ヤード以下。ディフェンスの密度が上がって難しいと言われるレッドゾーンのパスオフェンスを、確実にものにした。
高木は「ランが出ていたし、楽だった。僕が(チームが認定する)ゲームMVPを貰ってしまったけれど本当はRBやOLが貰うべきだったと思う」という。
そんな高木を先制TDのWR中村クラークは「本当に頭の良いQB。ゲームに対しても練習に対してもよく勉強して準備をしている」と評価する。2TDパスキャッチのWR岩松も「単純にパスだけでみたら、ボールの落しどころなど、高木さんの方がバードソンよりも上手いところがある」という。「僕の今日のパフォーマンスは、高木さんが素晴らしかったから。ブリッツが入り、外の長いパスもエレコムの米国人CB(ショーン・ドレイパー)がカバーしていてなかなか通らない。そういう状況にきちんとアジャストして、球離れよくショートのパスを投げ込んでいた」と話した。
QBバードソンは負傷で、今季はもう出場不可能の富士通オフェンスは、高木にすべてを託す形になる。「もちろん。これからあと2試合戦って、必ず勝つ」という高木だが、今季はそれだけでは終わらない。先日発表された日本代表の米国遠征を高木は強く意識している。「それ(日本代表)を狙うためにこのチームに来た」と断言する。だからこそ、「目の前の1プレー、目の前の1試合にすべてをかけて戦う。一歩一歩を着実に登っていく。その結果が先にもつながっていく」という高木。27歳のQBの目は真っ直ぐ前を見据えていた。【写真・文:小座野容斉】
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