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2020-12-11

【連載 名力士ライバル列伝】最大の壁・ライバル、横綱玉錦

昭和13年春場所千秋楽、38度の高熱をおして登場した玉錦と、52連勝中の双葉山。双葉山が玉錦の出足を利用し左上手投げで横転させる。逆転した力関係に、玉錦の悲壮なる執念も通用しなかった

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69連勝という不滅の大記録を
樹立した無敵・双葉山。
その存在の前には
横綱ですら脇役になったが、
時におびやかし、ときに引き立てる
名脇役がそろっていた。
※平成28~30年発行『名力士風雲録』連載「ライバル列伝」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

逆転された前王者が見せた
晩年の執念と抵抗

見事な太鼓腹から一気の寄り身。昭和に入って最初の横綱栄進力士、玉錦は昭和期屈指の名横綱だった。11(1936)年春場所、11戦全勝で2度目の3連覇、優勝回数を9に伸ばし、「玉錦時代」を築き上げていたとき、突然現われた大敵が双葉山だった。

昭和7年春場所に繰り上げで入幕した双葉山は地力が伴わず、特に玉錦には初顔から5連敗と、まったく歯が立たなかった。6度目の対戦となった11年春場所6日目も、新横綱武蔵山、大関男女ノ川らを倒し全勝の玉錦に挑んだ双葉山だったが、気負いすぎたか引き落としに両手をつく。大記録、69連勝が始まったのは、その翌日からだ。

続く夏場所9日目。全勝同士の対戦は世紀の大一番となった。時間前に立ち、激しい攻防の末、双葉山が玉錦を浴びせ倒し、7度目の対戦で初めて破る。その勢いで双葉山は勝ち続け、全勝で初優勝。まさに覇者交代を決定づける歴史的勝利だった。

昭和12年夏場所は強烈な下手投げで双葉山の連勝。翌13年春場所千秋楽、横綱昇進後初対決も、双葉山が左上手投げで斬り捨てた。もはや力の差は歴然としていた。

それでも玉錦は失われた王座を奪還しようと燃えた。昭和13年夏場所千秋楽、狙い澄ました玉錦の右外掛けに双葉山がグラつき満場は熱狂。水入りの大熱戦となったが、反撃もそこまで。同年12月、玉錦は盲腸炎から腹膜炎を併発し、帰らぬ人となった。双葉山も場所後の巡業で体調を崩し、翌14年春場所ついに連勝が途絶えることになるが、一矢報いる絶好のチャンスを前に玉錦は散ってしまった。

『名力士風雲録』第10号双葉山掲載

相撲 12月号 11月場所総決算号(No.916)

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