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2020-12-14

【ボクシング】子どもたちに希望の光を─11月下旬、佐賀でキッズイベント開催

元チャンピオンたちと記念撮影

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 11月29日、SAGAサンライズパーク総合体育館ボクシング場(佐賀県佐賀市)で開催された『WBC Cares Japan 2020 in SAGA キッズ・ジュニアボクシングフェスティバル』。77名のキッズジュニアと保護者同行者120名が参加。日本時間同日にエキシビビションマッチで15年ぶりに復帰戦を行った、元世界ヘビー級3団体統一王者マイク・タイソン氏(54歳=アメリカ)からのビデオメッセージが届けられるサプライズもあり、開会式から大いに盛り上がるスタートとなった。

県も協力体制


総勢200名あまりが集合。もちろん着席もソーシャルディスタンス

 イベント開催について聞いたのは、それより2ヵ月ほど前のこと。いざその日を迎え来場すると、万全の感染防止対策を取った上での会場設営が施され、参加費無料にも関わらず、子どもたちのために様々な趣向を凝らした演出やイベントがあふれていた。

  佐賀県は九州で唯一、プロ加盟ジムがない県。しかし、この会場では今年に入り、西部日本新人王予選全戦と西部日本─中日本新人王対抗戦のプロボクシングが行われた。会場だけでなく、佐賀県自体でプロの試合が開催されたのも初めてのことである。
 2019年8月に、大通りを挟んだ向かい側から移転オープンしたばかりの同会場は「ボクシング場」という名のとおり、ボクシング専用の施設とあってリング設営をする必要がない。また、佐賀県は新型コロナウイルス感染者数が安定して少ないという好条件もある。施設運営側も、「無観客であればプロ興行開催もOK」と許可が下りたのだ。そして、「子どもたちのためだったら、施設利用も歓迎したい」との申し出もあり、今回のイベント開催も実現した次第だ。

 発案者は、平仲ボクシングスクールジム会長で、西部日本ボクシング協会長も務める元WBA世界スーパーライト級王者の平仲信明さんと絢子夫人。「いま、新型コロナの影響で子どもたちがスポーツに触れ合う機会が減少している。こんなときだからこそ、未経験者や興味がある人などいろいろな方に参加してもらい、佐賀からボクシングが盛り上がってくれたら」という想いがあった。この大会では、プロ加盟していないジム所属の子どもでも、経験の有無も問わず誰でも参加できるイベントにするなど、配慮が細部に行き渡っていた。


右から山根代表、越本会長、福原さん、平仲絢子さん、黒木、平仲会長

 開会式では、平仲会長、越本隆志・FUKUOKAジム会長(元WBC世界フェザー級王者)、福原辰弥さん(元WBO世界ミニマム級王者)、黒木優子(YuKOフィットネス=元WBC世界ミニマム級王者)の九州が生んだ世界チャンピオンが、スポットライトを浴びて華やかに登場。イベントの冠であるWBC(世界ボクシング評議会)の慈善活動部門『WBC Cares Japan』(https://wbcboxing.com/en/wbc-cares/)の山根千抄代表が挨拶をし、マウリシオ・スライマン会長、マイク・タイソンさんからのビデオメッセージも。


タイソンさんからのメッセージが映し出された

「子どもたちやサポートの必要な方への活動を続けましょう」とスライマン会長。タイソンさんは、「みなさんはオンライン授業など、窮屈な毎日を送っているかと思いますが、よく頑張ってますね。みんなチャンピオンです! そして先生と生徒がこれからもともに頑張れば必ず成功します!」と子どもたちを勇気づけるコメントを届けた。奇しくも同時刻に海の向こうでエキシビションマッチを行い、54歳とは思えぬ動きを披露したタイソンさんの言葉はリアリティがあった。
 さらには、山口祥義・佐賀県知事が激励に駆けつけ、ボクシングに対する熱い思いを語り、参加した子どもたちを大いに歓迎した。


第1部はボクシング教室。2部はシャドー&スパー大会


越本会長の持つミットへ、福原さんが左ストレートを打ち込む

 第1部では、イベントサポートとして元チャンピオンの面々がボクシング教室を開催。困難を乗り越えるための方法など、たくさんのメッセージを伝え、子どもたちからの質問にもわかりやすく回答。実際にミット打ちを披露しながらの技術アドバイスを、子どもたちは食い入るように真剣な眼差しで見つめた。
 また、子どもたちが座るイスのシート裏に当選シールが仕込まれており、10人のラッキーな子どもたちが協賛のアディダスグローブをゲットするという粋な計らいもあった。


WBCカラーのグローブとヘッドギアはこの日のために作られたもの
 
 第2部では、『1dayスパーリングクリニック』と題し、シャドー大会とスパーリングが約3時間にわたり開催。西部地区ボクシングコミッションと西部日本ボクシング協会の全面協力により、安全面に留意した進行が執り行われた。
 勝敗はつけないが、力量差があるとマスボクシングに切り替えられ、1ラウンドに2度スタンディングカウントを数えられると、スパーリングをストップ。レフェリーからのアドバイスも受けながらの実践練習になる場面も見られた。そして、各部門で優秀賞に選ばれた総勢20名の子どもたちに、大会のために特注された『WBCロゴ入りメダル』が授与された。


優秀者に贈られたメダル

 小学生たちは、WBCカラーの鮮やかな蛍光緑色に、WBCのロゴの入った10オンスグローブとヘッドギアを着用。これは、今年7月に創立したばかりのElpizo(エルピス)社が提供したもので、この日のために特別に作製されたもの。まだ試作品とのことだったが、“子どもの安全を守ること”に特化して考案されている。

子どもたちの未来のために


JBCスタッフにより、リングはその都度消毒された

 今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中のアスリートたちが試合の中止や延期を余儀なくされ、練習する場所すら制約される事態となった。スポーツをする子どもたちも同様で、練習に行けないことによる競技離れなどが懸念されている。ボクシング界では、全国アンダージュニア大会(日本ボクシング連盟主催)、ジュニア・チャンピオンズリーグ全国大会(日本プロボクシング協会、日本ボクシングコミッション主催)など大きな大会が中止となった。このことで、ボクシングを続ける意欲や目標を失ってしまうかもしれない。競技人口が下降傾向にあるボクシング界にとって、未来のボクシング界を担う子どもたちは宝。これはどうしても看過できない重大問題である。
「子どもたちを守らなければならない。こんなときだからこそ前を向こう」という切なる想いがこの企画を生み、人々の心を突き動かした。

 このイベントの協賛企業・団体は11社にものぼり、『キッズジュニア年間サポーター』(ボクシングを通じて、子どもたちの人生を豊かにする活動を支援する)も立ち上がった。
 大会関係者、地域、協賛企業・団体、サポーター、保護者とたくさんの“有志”たちの連携と協力、そして支援によって無料参加のイベントが実現した。発案から短期間での開催にもかかわらず、大成功を収めたのはとても意義深く、また困難に負けないパワーと気概がとても伝わってきた。
 このフェスティバルは、プロアマの垣根を越えて、純粋にボクシングの魅力を知ってもらい、再確認をしてもらう場となった。それは、新たな夢や目標、そして笑顔を育み、希望をもたらすことができる“スポーツ活動の力”を感じさせるものであり、“新たな形”としての活動が生まれた記念すべき日でもあった。

 大会実行委員会は、このイベントを今後も継続していく意向。また今回、日本での活動が始まりとなった『WBC Cares Japan』も、これを皮切りに慈善活動を広げていくという。

ボクシング・マガジン 1月号

文&写真_西村華江

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