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2020-12-16

【箱根駅伝の一番星】早稲田大の主将・吉田の最後の駅伝「5区区間3位以内でチームに貢献したい」

陸マガの箱根駅伝カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。前回大会5区区間15位に終わった吉田匠(4年)。箱根の山に懸けたこの1年の集大成を発揮する。

往路の優勝テープを切りたい

 11月の全日本大学駅伝、早大は6区途中まで先頭を走り5位に入ったが、そのメンバーに4年生の名前はなかった。だが、箱根駅伝の16人のエントリーメンバーには、2人の4年生がきっちりと名を連ねた。
 前回アンカーを務めた宍倉健浩、そして今季の駅伝主将、吉田匠だ。

 吉田にとって、大学最後のシーズンは悩んで、苦しみ抜いた1年間だった。駅伝主将という立場にありながらも、前回の箱根後に右スネを痛めるなどケガが続き、競技力でチームを引っ張ることができなかった。

「下からの突き上げはうれしいし、それでやる気は出るんですけど、同時に、自分が引っ張ることができていないことに、悔しさも感じました」

 後輩たちは勢いが増すばかり。後輩の活躍を頼もしく思う一方で、自身が結果を残せないことに歯痒さが募った。

 前回の箱根で、吉田は念願の5区・山上りを務めた。だが、区間15位と納得のいく結果を残せなかった。そして、このレースで吉田は1つの決断を自らに下していた。

「もし“山の神”と呼ばれるような活躍ができていたら、競技を続けて、この先もっと上を目指したいって思っていたのかもしれませんが……」

 箱根の前からぼんやり考えていたことではあったが、大学で競技に区切りを付けるという決意を固めたのだ。

 得意の3000mSCでは、日本選手権で決勝進出を果たすほどの名手で、実業団でも十分にやっていける実力はあった。また、12月の日本選手権で、最後にもう一度力を試すこともできたはずだった。だが、吉田の決意は固かった。

「“サンショー”をずっと専門にやってきたので、最後の日本選手権に出たいという気持ちはもちろんありました。でも、箱根と日本選手権とを天秤にかけたとき、自分のなかでは箱根のほうが上でした」

 日本一を決める舞台に立つ権利を有しながらも、出場はせず、箱根駅伝に備えることを選んだ。ケガで満足のいく練習を積むことができていなかっただけに、最後の箱根にかける思いは強かった。

 もちろんこの1年間、順調ではなかっただけに、吉田が再挑戦の舞台に立てるかは確約されているわけではない。それでも、前回の雪辱を期して、集大成と決めたレースで再び5区を走るために強化に務めてきた。

「前回の箱根が終わってから、5区で区間3位以内、71分という目標を立て、箱根で絶対にそれを成し遂げるっていう熱い思いをもってやってきました。本当に、往路優勝を目指せるんじゃないかなと思っていて、その一番のキーになるのが5区なのではと感じています。チームがつないできてくれたタスキをきっちりつないで、往路の優勝テープを切りたいですね。本当に最後なので、最後くらいはチームに貢献したいです」

 チーム目標は総合3位以内だが、全日本で前半を独走したように、往路優勝も視野に入る。それを成し遂げるための最後のピースに吉田はなるつもりだ。


よしだ・たくみ◎1999年3月25日、奈良県生まれ。泉川中→洛南高(京都)。172㎝・57㎏、O型。前回の箱根では、5区区間15位。自己ベストは、5000m14分07秒40、10000m29分58秒90、ハーフ1時間03分55秒(以上、2018年)。

陸上競技マガジン 1月号

箱根駅伝2021完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)

文/和田悟志 写真/菅原 淳

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