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2020-12-17

【箱根駅伝の一番星】藤色に染まった闘将、駒澤大・神戸駿介「自信が確信に変わった」

出る選手だけなく出場しない選手も本気で喜べる理想のチームに。全日本大学駅伝でも見られた光景を箱根でもと意気込む(写真提供:駒澤大学)

陸マガの箱根駅伝カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」は出場20校の注目選手を紹介。中学時代から憧れだったチームに一般枠で入部し、最終学年で主将を務める。競技に打ち込む姿勢は誰もが認めるところ。全日本大学駅伝を6年ぶりに制した駒大は、そんな神戸駿介(4年)というリーダーに率いられている。もちろん、学生駅伝ラストレースで、二冠達成を譲るつもりはない。

最底辺からはい上がった

 藤色のタスキに懸ける思いは誰よりも強い。駒大のキャプテンを務める神戸駿介(4年)は、全日本大学駅伝の6年ぶりとなる優勝を心の底から喜べた。故障の影響でメンバー入りできず、東京都内の選手寮で観戦。食堂に設置されたテレビの前で声が枯れるまで声援を送り、我を忘れて歓喜した。チームでつかんだ駅伝のタイトルは、何物にも代えがたい。

「ずっと自信はあったんです。ただ、いい練習をしていても、駅伝で結果が出ていなかったので。これで自信が確信に変わりました。今の練習をしていれば、優勝できるって。箱根に向けても、いけいけの雰囲気になっています」

 自信をみなぎらせているが、チーム内に浮かれた様子はない。神戸が主将として言うべきところは言い続け、引き締めているのだ。大八木弘明監督から「人に物をはっきりと言えるタイプ」と信頼され、役職を任された。本人も役割は理解している。誰に対しても同じ態度で接することを心掛け、仲がいいメンバーであっても心を鬼にする。フォローするだけではない。

「誰かが厳しく言わないといけないので。本当は僕だって、みんなに好かれたいし、嫌われたくないです」

 すべてはチームのため。同期にはランナーとして箱根を目指していたものの、「俺はサポート役に徹するから」とマネジャーになった者もいる。彼らの思いも背負っている。


全日本に続く二冠達成に向けて、順調にトレーニングを積んでいる(写真提供:駒澤大学)

「1年生、2年生が強いと言われていますが、僕ら4年生はもっと頑張らないといけない」

 自身にも言い聞かせている。最底辺からはい上がり、キャプテンになったのだ。

 名門の看板に中学生時代から憧れ、箱根を走るために一般推薦で入学。努力を重ねて正式入部を果たし、Bチームでも毎日必死に食らいてきた。「今日は練習についていけるのかと怯えた日もありました」。フォームが汚いと笑われたりもした。それでも、めげることはなく練習を積み重ねた。そして、Aチームに昇格し、3年生でついに箱根に出走。昨年度は9区で区間13位と力不足を痛感したが、悔しい思いをした分だけまた強くなった。今年度は練習を一から見直した。ただ、がむしゃらに打ち込むのではなく、考えながら走ってきた。もう失敗はしないと誓う。

「前回のような情けない走りはしません。復路できちっと仕事をします。区間3位以内では走らないと、足手まといになりますから。最後は全員で笑って終わりたいです」

 努力した者がすべて報われるとは限らないが、成功した者は必ず努力している。


かんべ・しゅんすけ◎1998年4月23日、東京都生まれ。165cm・50kg、A型。町田二中→松が谷高(東京)。自己ベストは5000m13分55秒99(2020年)、10000m29分28秒02、ハーフ1時間02分56秒(共に19年)。大学3年時の全日本、箱根に出場。主将を務める今年度、優勝した全日本は回避したが、箱根では復路での快走が期待される。

陸上競技マガジン 1月号

箱根駅伝2021完全ガイド(陸上競技マガジン1月号増刊)

文/杉園昌之

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