close

2020-12-20

【ボクシング】東日本新人王決勝 逆転KOの久保春平がMVPに輝く

スーパーフライ級は久保(左)が富岡に逆転KO勝ち

第77回東日本新人王決勝戦は20日、東京・後楽園ホールで行われ、ミニマム級からミドル級まで10階級で優勝が争われた(ライトフライ級とライト級は中止)。最優秀選手賞はスーパーフライ級の久保春平(宮田)、技能賞はバンタム級の須藤龍揮(RK蒲田)、敢闘賞はフェザー級の平野和憲(KG大和)が獲得した。27日に西軍代表決定戦が行われ、東西の新人王は2021年2月21日、後楽園ホールで開催の全日本新人王決定戦で激突する。

スーパーフライ級は衝撃的な逆転KO劇で決着した。優勝候補に挙げられていた富岡は、サウスポースタイルから右右左のコンビネーションを自信満々に打ち込んでいき、久保のスイングをノーガードでひらりとかわすパターン。だが、いつも以上に倒す気が前面に出ていたような印象だった。

「スピードは思っていたほどではなかった。ジャブも中に打ってくるもので、右手でパーリングして左ジャブを返した。やりやすかった」と久保。2回、富岡は右ダブルからややタイミングを遅らせた左オーバーハンドで久保を倒すが、「ダメージはなかった」(久保)。ここから富岡は右ダブルから、左ボディアッパー、あるいは顔面への左ストレートと再三繰り返す。「ボディは効いていた」という久保だが、富岡が同じタイミングで放つワンワンツーは気になった。

そして3回。両者の攻撃が交錯する中、久保がぐいと前に出る。ロープを背にする富岡。ここで富岡は得意の左カウンターを狙うが、久保が右をリターン。ノーガードのまま、スウェーバックで外そうとした富岡だったが、これがまともに顔面にヒット。富岡はどさりとキャンバスに落下し、なんとか立ち上がったものの、フラつく姿にレフェリーが続行を許さなかった。

「東で優勝というより、富岡選手に勝てたことが嬉しい」と久保。周囲から「富岡はすごく強い」と言われ続け、想像を膨らませていたという。そのイメージと実際のギャップは、この23歳を勇気づけたのかもしれないが、いずれにしてもタフな精神の持ち主であることは確かだ。

兄2人(哲也、達也)と従兄(樹)もプロボクサー。ボクシング一族の“最終兵器”として期待された浩介だが、ロープを背負っての判断を誤った。サイドへ抜ける、ガードを上げる。いずれもできるのだが、“見切り”のみで対処し、伸びるパンチをまともに浴びた。センスあふれる18歳は、ジュニア世代から活躍してきたが、ボクシングの奥深さをあらためて実感したはずだ。

◆東日本新人王決勝戦RESULTS

★ミニマム級決勝5回戦
○佐々木 凌(レパード玉熊)
【TKO4回3分】
●平井 雄士(宮田)

佐々木凌(ささき・りょう)=秋田県出身/26歳/7戦5勝(2KO)2敗/優勝コメント「3回目の挑戦で新人王を獲れてうれしい。打ち終わりを狙っていた。全日本では練習してきたことをもっと出せるようにしたい」

★ライトフライ級決勝5回戦
○狩俣 綾汰(三迫)
【不戦勝】
●青木 勇人(協栄新宿)
※青木が棄権のため狩俣が優勝。
狩俣綾汰(かりまた・りょうた)=沖縄県出身/25歳/5戦5勝(3KO)/優勝コメント「不戦勝に満足はしていないが、全勝で今年を締めくくれてよかった。全日本を取ってからの新人王だと思っている」

★フライ級決勝4回戦
○宝珠山 晃(三迫)
【判定3-0:40対35×3】
●苗村 修悟(SRS)

宝珠山晃
(ほうしゅやま・あきら)=福岡県出身/24歳/4戦4勝(2KO)/優勝コメント「相手の気持ちも強く、苦しかった。勝ててよかった。全日本も強い選手がくるので、しっかり自分のボクシングをしたい。覚えて、ホーシュヤマ!」

★スーパーフライ級決勝5回戦
○久保 春平(宮田)
【TKO3回27秒】
●富岡 浩介(REBOOT.IBA)
久保春平(くぼ・しゅんぺい)=鹿児島県出身/23歳/8戦6勝(4KO)1敗1分/優勝コメント「KOパンチは覚えてない。東日本を取ったことより、富岡選手に勝った喜びの方が大きい。富岡選手のほうが強いと言われていたが、やってみたら評判ほどではなかった。印象は特にない」

★バンタム級決勝4回戦
○須藤 龍揮(RK蒲田)
【TKO1回2分21秒】
●神津 徳臣(角海老宝石)

須藤龍揮(すどう・りゅうき)=北海道出身/21歳/2戦2勝(1KO)/優勝コメント「練習して、狙っていたパンチです。まだデビューしたばかりで優勝の実感が沸かないが、これで自信を持って全日本に行ける」

★スーパーバンタム級決勝5回戦
○矢斬 佑季(花形)
【判定3-0:49対46×3】
●二瓶 竜弥(DANGAN郡山)

矢斬佑季(やざん・ゆうき)=埼玉県出身/28歳/9戦7勝(4KO)2敗/優勝コメント「いろんな経験をしたが、大変なのはみんな一緒。周りより自分が努力した結果だと思います。これからも一歩一歩進んでいきたい」

★フェザー級決勝4回戦
○平野 和憲(KG大和)
【TKO1回2分1秒】
●吉田  諒(イマオカ)

平野和憲(ひらの・かずのり)=東京都出身/31歳/4戦4勝(4KO)/優勝コメント「ラッキーパンチです。レコード自体は全部KOでも、楽な試合は一つもなかった。先輩たちに一歩でも近づくため、まずは全日本を獲れるよう頑張る」

★スーパーフェザー級決勝5回戦
○奈良井 翼(RK蒲田)
【TKO2回1分5秒】
●ドミニク謙心(リングサイド)

奈良井翼(ならい・つばさ)=大阪府出身/21歳/6戦6勝(5KO)/優勝コメント「去年は準決勝で棄権したが、もう1回出させてもらい決勝まで来ました。(2階級上げて)大きい相手は結構怖くて、前より練習に集中した。全日本もKOで勝てるよう頑張る」

★ライト級決勝5回戦
○浦川 大将(帝拳)
【不戦勝】
●山本ライアンジョシュア(ワタナベ)
※山本が計量失格で浦川が優勝。
浦川大将(うらかわ・ひろまさ)=東京都出身/23歳/7戦6勝(4KO)1敗/優勝コメント「全日本では今回やれるはずだった分も、いい試合をしたい。試合がなかったので、むしろ普段やらないような練習もできる。すぐ練習再開します」

★スーパーライト級決勝4回戦
○兒玉 麗司(三迫)
【TKO4回1分25秒】
●鳴海 拓郎(RK蒲田)

兒玉麗司(こだま・れいじ)=宮崎県出身/21歳/2戦2勝(1KO)/優勝コメント「力んで、なかなか思うようにやれなかった。行けるところで行けなかったのは、相手の圧もあった。次はしっかり魅せるボクシングができるよう頑張る」

★ウェルター級決勝4回戦
○山﨑 海知(山龍)
【TKO3回3分】
●齊藤 裕大(DANGAN郡山)

山﨑海知(やまざき・かいち)=東京都出身/20歳/4戦2勝(2KO)2敗/優勝コメント「練習どおりのパンチが打てました。今回1試合しかしていないので実感が沸きづらいが、勝利したことで自信になった。全日本は、どんな相手でも自分のスタイルを見失わず頑張りたい」

★ミドル級決勝4回戦
△可兒 栄樹(T&T)
【引分1-0:39対37、38対38×2】
△吉野 健二(帝拳)
※可兒が勝者扱いで優勝。

可兒栄樹(かに・えいき)=神奈川県出身/19歳/5戦3勝(1KO)2分/優勝コメント「(前回は吉野にTKO勝ちだったが)自分の進化が遅れていることを身に沁みて感じた。不完全燃焼だったので、今度はしっかりいい形で勝てるよう一からやり直したい」

ボクシング・マガジン 1月号

写真/馬場高志

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事