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2020-12-21

「第99回全国高校サッカー選手権大会」開幕直前<2> 神戸弘陵学園高校のテクニック論:前編

12月31日に始まる第99回全国高校サッカー選手権大会の1回戦で岩手県の遠野高校と戦う神戸弘陵学園高校

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12月31日に始まる第99回全国高校サッカー選手権大会。兵庫県代表としてこの大会の出場するのが、2年連続11回目の出場となる神戸弘陵学園高校だ。Jリーグ屈指のアタッカー江坂任らを育てた谷純一監督にテクニックの定義と指導法を聞いた。

出典:『サッカークリニック』2020年7月号

足元だけでなく、的確な選択まで

――神戸弘陵学園高校のテクニックの定義について教えてください。

谷 テクニックという言葉からは、足元の技術だけが思い浮かぶかもしれませんが、相手を見て的確なプレーを選択するまでが大事だと考えます。神戸弘陵では、的確な判断を伴ったテクニックを卒業までに発揮できるようになるために、年間を通してのトレーニング計画を作成しています。

まず初めに大事になるのは、状況に応じたトラップです。持っているテクニックを発揮するためには、その前提条件として、扱いやすい位置にボールを置かなければいけません。2020年度は、新チームが立ち上がってから春先まで、2種類のトラップを意識させました。ボールの回転を止めて足元にピタリと収めるトラップと、スペースがある場合にファーストタッチで運ぶトラップです。

ボールを的確に止めることができると、どんな状況でも慌てずに落ち着いてプレーできます。落ち着いていれば、相手に素早く寄せられたとしても、空いているスペースにボールを運ぶことができ、失わずに済みます。公式戦でよく起きてしまう、相手が寄せていないのに慌ててミスをするケースも少なくなるでしょう。2種類のトラップに取り組んだことで、20年2月の新人戦で成長が見られた選手がいます。これまでは何も考えずにトラップしたところを狙われてボールを失うプレーがあったのですが、相手を見て足元にピタリと止めてドリブルで前進につなげるなど、的確な判断を伴ったテクニックを発揮できていました。

――トラップの次は、どんなプレーを意識させますか?

谷 今年は新型コロナウイルスの影響によって3月半ばから活動休止になりましたが、当初の予定では4月からインターハイ予選にかけては、マークをはがしてパスを受ける動きと受けた際の体の向きを意識させるつもりでいました。例年、夏に向けての時期には、相手や試合状況など、「何を見るべきか」を意識させて取り組ませます。状況を理解するためにどのような情報を集めて判断材料とするか、を身につけさせるためです。

最終的には、全国高校サッカー選手権大会(以下、選手権)のようなプレッシャーがかかる舞台でも、状況に応じて最初の判断を変えられる選手にさせるのが目標です。プレーの強度が高くなって選手に余裕がなくなってしまうと、とっさに判断したプレーを実行せざるを得ません。しかし、落ち着いて周りが見えていれば、相手の出方によっては最初に下した判断を変え、違うプレーができるようになります。

例えば、サイドからカットインを狙う選手が中を切られた場合にワンツーパスでの縦への突破や遠目からのシュートに切り替えるといった動きです。2つ目の判断が相手に対応された際には、さらに3つ目の判断に変えられる、そういう選手が本当の意味でテクニックが高い選手だと考えます。逆に、スピードがあるとドリブルで縦に突っ込んでいく選手が多いのですが、スピードに対応しようと最初から構えている相手に工夫もなく仕掛けてもかわせません。これは判断がないプレーと言えるでしょう。

ボールを大事にしながら前進するサッカーを目指す神戸弘陵の場合、狭い局面ではスピードを落とし、味方とのコンビネーションで崩しながら、スペースが生まれたタイミングで縦に仕掛けようと意図しています。試合でテクニックを発揮するには、状況に応じてチームの意図に合わせながら、選手それぞれが持つ特長を活かしたプレーを選んでいくことが重要になります。

サッカークリニック 7月号

サッカークリニック 1月号

取材・構成/森田将義

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