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2021-01-01

【アメフト】今季の全米王者となるのは?ハイズマン賞は誰に? 米カレッジフットボール

ハイズマントロフィー受賞が有力視されるアラバマ大のWRスミス=Photo by Getty Images

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米カレッジフットボールは、ボウルゲーム真っ盛りだ。130大学が所属する最上位カテゴリーの1部FBS(フットボール・ボウル・サブディビジョン)は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、なにからなにまで異例ずくめだったシーズンを、なんとか終えようとしている。開幕時の9月上旬に比較すると、3カ月余りで、感染者数が3倍以上の1966万人(米CDC調べ、2020年12月31日)に膨れ上った米国では状況は深刻で、選手やコーチ・スタッフの感染が相次ぎ、多くの試合が中止になるなど、大きな変更を余儀なくされた。

昨シーズンのボウルゲームは、全米優勝戦を含めて41。それが今季は30まで減った。開催予定だった試合も、12月31日までの21ボウル中4試合がCOVID-19の影響で中止となった。

◇議論を呼んだ「全米4強の選出」

全米王座を決めるカレッジ・フットボール・プレーオフ(CFP)に進出する4チームは、CFPランキングの1位アラバマ大学(11勝0敗、サウス・イースタン・カンファレンス=SEC)、2位クレムソン大学(10勝1敗、アトランティック・コースト・カンファレンス=ACC)、3位オハイオ州立大学(6勝0敗、ビッグテン・カンファレンス=BIG10)、4位ノートルダム大学(10勝1敗、今季限定でACC)となった。


4校は準決勝として、クレムソン大‐オハイオ州立大がシュガーボウル(ニューオーリンズ・スーパードーム、1月1日)で、アラバマ大‐ノートルダム大がローズボウルゲーム(ダラス・AT&Tスタジアム、1月1日)で、対戦する。勝者は、1月11日の全米王座決定戦(マイアミ・ハードロックスタジアム、1月8日)で対戦する。

CFPは、ローズ、オレンジ、シュガー、フィエスタのカレッジ4大ボウルに、コットン、ピーチを加えた6ゲームを、順番に準決勝として割り当てる。今季はローズボウルとシュガーボウルが準決勝となっていたが、新型コロナウィルス感染症が全米で蔓延しているために、ローズボウルスタジアム(パサデナ)のあるカリフォルニア州は、有観客の開催を禁止したために、テキサス州ダラスでの開催となった。

4大ボウルの中で最も伝統があり、試合に合わせて開催される有名なパレードも含め米国の新年最大の行事でとなっているボウルゲームが、無関係の他の場所で開催されながら、「ローズボウル」の名を冠することは、議論を呼んだ。そのために、この試合は「ローズボウルゲーム」という呼称となった。

4強の選出にあたっても、大きな議論があった。オハイオ州立大は、相手チームの事情とはいえ、伝統のミシガン大との一戦など、ゲーム中止が相次いだ。カンファレンス決勝を合わせても戦ったのは6試合だけ。そのカンファレンス決勝進出さえも、BIG10の取り決め変更という「救済策」でギリギリ出られたに過ぎなかった。

CFPとしては、米の東北部から中西部の広いエリアに所属大学が存在し、マーケットの大きさから来る経済力や注目度は、米カレッジフットボールでNO.1の存在であるBIG10の代表校、オハイオ州立大を外すわけにいかなかったというのが本音だろう。

クレムソン大のスイニーHC=photo by Getty Images
クレムソン大のスイニーHC=photo by Getty Images
 
これに対し、AACのクレムソン大で指揮を執りながら、出身校はアラバマ大で、米南部諸州をベースにするSECに心情的に近いダボ・スイーニーヘッドコーチ(HC)は、公然と異を唱えた。9勝1敗のテキサスA&M大(SEC)や、9勝0敗のシンシナティ大(アメリカン・アスレチック・カンファレンス=AAC)を選ぶべきだというのだ。コーチ投票でオハイオ州立大を11位にランクしたことも明らかになったスイーニーHCは「9試合以上戦っていないチームは10位以内には入れなかった」と答え、オハイオ州立大の試合数を問題視した。

クレムソン大のHCとして12年で140勝を挙げ、2度の全米王座に輝くスイーニーHCに比べると、オハイオ州立大のライアン・デイは、名将アーバン・マイヤー氏からHC職を引き継いでまだ2年目。実績不足もあって、言い返したいことは山ほどあっても言い返せない。だからこそ、この準決勝での対戦には心中期するものがあるだろう。

BIG10で優勝し、喜ぶオハイオ州立大の選手たち。中央はデイHC=photo by Getty Images
BIG10で優勝し、喜ぶオハイオ州立大の選手たち。中央はデイHC=photo by Getty Images

この両校の対戦が注目される理由はもう一つある。カレッジフットボールのNo.1QBは誰かという争いだ。それはイコール、来年のNFLドラフトを大きく左右する戦いでもある。開幕前の段階では、クレムソン大のトレーバー・ローレンスが、オハイオ州立大のジャスティン・フィールズを少しリードしているとみられていたが、2019年にはパスで41タッチダウン(TD)に対し、インターセプトわずか3本というパフォーマンスのフィールズを評価する声も高かった。

シーズン途中でCOVID-19に感染し、2ゲームを休んだためにパス成績は積みあがらなかったものの、堅実なパフォーマンスでトップQBという評価を維持したローレンスに対し、フィールズは、今季第4戦のインディアナ大戦で3インターセプトの乱調。12月19日のBIG10決勝、ノースウェスタン大戦では、パスわずか114ヤードでTD無し、インターセプト2本という酷い成績となった。前述したようにオハイオ州立大の試合数は少なかったために、パス獲得距離、TD数はいずれも2019年の半分以下、インターセプトだけが上回った。
エンドゾーン内で、オハイオ州立大QBフィールズのパスをインターセプトするノースウェスタン大のDB=photo by Getty Images
エンドゾーン内で、オハイオ州立大QBフィールズのパスをインターセプトするノースウェスタン大のDB=photo by Getty Images

今季途中までは、モックドラフト(模擬指名)で、どのメディア、どのサイトでも、判で押したように1位ローレンス、2位フィールズという予想だったが、ここへ来てフィールズの予想指名順位が1巡中位まで落ちてきている。

準決勝のシュガーボウルで、ローレンスをしのぐパフォーマンスを見せ、チームが全米優勝戦に進むようなことになれば、ドラフトの順位もまた大きく変わるだろう。チームの為にも自分の将来の為にも負けられない戦いとなる。

オハイオ州立大のHCとQBが意地を見せることができるか。日本時間1月2日のゲームから目が離せなくなりそうだ。

クレムソン大のQBローレンス=photo by Getty Images
クレムソン大のQBローレンス=photo by Getty Images

アラバマ大とノートルダム大の「ローズボウルゲーム」は、アラバマ大の優位は動かない。QBマック・ジョーンズ、WRデボンテ・スミス、RBナジ-・ハリスの「3本の矢」に、伝統の強力ディフェンスと大きく強いOLは死角がない。今回も優勝候補の筆頭だ。

ノートルダム大は12月19日のACC決勝では、クレムソン大に完敗した。クレムソン大とはシーズン中の対戦では勝っていたが、この時はQBローレンスがCOVID-19に罹患したため出場していなかった。ACC決勝戦では、オフェンスの獲得ヤードはクレムソン大の半分以下で、34-10というスコア以上に、力の差が目立った。ノートルダム大が勝つためには、エースQBイアン・ブックの大活躍と、ディフェンスの奮起が必要だ。

ノートルダム大のエースQBブック=photo by Getty Images
ノートルダム大のエースQBブック=photo by Getty Images

◇ハイズマン賞にWRスミスが急浮上の背景

カレッジフットボールの年間最優秀選手賞、ハイズマントロフィーは、例年なら12月上旬の土曜日に発表されていたが、今季は1月5日発表となった。シーズン前の予想は、NFLドラフトのトップ評価と同じで、本命ローレンスに対し、対抗がフィールズだった。しかし、前述のように、ローレンスは試合欠場、フィールズは不調で、成績が積みあがらず、脱落した形となった。

代わって台頭したのが、フロリダ大のQBカイル・トラスクと、アラバマ大のQBマック・ジョーンズだ。トラスクはFBSでトップのパス4125ヤード、43TDを記録した。ジョーンズはFBSで2位の3739ヤード、32TD。共に近年のカレッジフットボールでは珍しく、ほとんど走らない純粋のパサーだ。

フロリダ大のQBトラスク=photo by Getty Images
フロリダ大のQBトラスク=photo by Getty Images

12月19日のSEC優勝戦では、両チームが対戦し、アラバマ大が52-46でシュートアウトゲームを制した。この試合でジョーンズはパス418ヤード5TD、トラスクは408ヤード3TDという好成績を残した。ただ、内容的には、この2人が昨年のジョー・バロウ(現NFLベンガルズ)や、1昨年のカイラー・マレイ(現カージナルス)、3年前のベイカー・メイフィールド(現ブラウンズ)のパフォーマンスに匹敵するとは、言い難いものだった。トラスクは球離れが遅いため度々サックされ、ファンブルロストするなど課題も多く、ジョーンズもアラバマ大の強力なOLと優秀なWR、RBに助けられている部分が目についた。

米スポーツ専門局ESPNの特集コーナー「ハイズマンウオッチ」では、週ごとにハイズマン受賞候補をランキングで掲載しているが、この試合が終わった段階で、アラバマ大のWRデボンテ・スミスがトップ候補に躍り出た。スミスの今季の成績はパスレシーブ1511ヤードで17TD。WRがハイズマン受賞となると、1991年のデズモンド・ハワード(ミシガン大)以来となる。

スミスのシーズン後半6試合での活躍は、パスレシーブ955ヤード13TDと目を見張るものはあったにせよ、ここへ来てのトップ浮上は、候補となったQBたちが、周囲を納得させるパフォーマンスを見せられなかったことの結果と言えそうだ。試合や練習などプレー機会の減少で、最も影響を受けているのはQBという見方もできるだろう。アラバマ大WRスミス。ハイズマントロフィー受賞が有力視されている=photo by Getty Images
アラバマ大WRスミス。ハイズマントロフィー受賞が有力視されている=photo by Getty Images

スミスは12月29日に、AP通信が選出する「プレーヤーオブザイヤー」の受賞も決まったが、過去22人の受賞者から17人がハイズマントロフィーも勝ち取っているので、スミスのハイズマン受賞は濃厚となった。

なお、ハイズマントロフィーは記者投票によって決まるが、選考の対象はあくまでレギュラーシーズンのゲームで、ボウルゲームは含まれない。発表は、全米準決勝の4日後だが、投票は12月21日までになされている。現地12月30日のコットンボウルではフロリダ大がオクラホマ大と対戦し、フロリダ大のQBトラスクは、パス158ヤード、3インターセプトと今季最悪のパフォーマンスとなったが、仮にトラスクがハイズマントロフィーを受賞できなかったとしても、この試合は関係ないということになる。

【小座野容斉】

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