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2021-01-03

【アメフト】ドラフト1位候補QB擁するクレムソン大敗退  カレッジ全米準決勝

負傷をおして活躍したオハイオ州立大のQBフィールズを称えるデイHC=Photo by Getty Images

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米カレッジフットボールの年間王者を決めるプレイオフ(College Football Playoff =CFP)は、現地1月1日に準決勝2試合を行った。「ローズボウルゲーム」で対戦したアラバマ大学対ノートルダム大学の1戦はアラバマ大が31-14でノートルダム大を破った。「シュガーボウル」で対戦したクレムソン大学対オハイオ州立大学のゲームは、オハイオ州立大が49-28で、ドラフト1位候補のQBローレンスを擁するクレムソン大に勝利した。
この結果、アラバマ大とオハイオ州立大が1月11日の全米王者決定戦(フロリダ州マイアミ)で対戦することになった

CFP準決勝・シュガーボウル(2021年1月1日、ルイジアナ州ニューオリンズ)
オハイオ州立大学(7勝0敗、BIG10)○49-28●クレムソン大学(10勝2敗、ACC)   

オハイオ州立大がNFL注目の好QB、ジャスティン・フィールズの活躍で、クレムソン大に快勝した。
第1クオーターは、2タッチダウンずつ、14-14と互角の展開だったが、第2クオーター、オハイオ州立大がQBフィールズの3TDパスで主導権を握り、35-14で折り返した。
第3クオーター、クレムソン大は、4月のNFLドラフトで全体1位有力とされるQBトレーバー・ローレンスがTDパスを決め、14点差に迫った。
しかし、オハイオ州立大は、QBフィールズからWRクリス・オレーブに56ヤードのロングパスが通り、再びクレムソン大を突き放した。フィールズは第4クオーターにも、この日6本目となるパスTDをWRジェイムソン・ウィリアムズにヒットして、試合を決めた。クレムソン大は第4クオーターに2TDを返したが、反撃もそこまで。3年ぶりにCFPの準決勝で敗退となった。

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】トロフィーを掲げて勝利を喜ぶオハイオ州立大のデイHC、QBフィールズ(中央)=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】トロフィーを掲げて勝利を喜ぶオハイオ州立大のデイHC、QBフィールズ(中央)=Photo by Getty Images


オハイオ州立大、QBフィールズが意地の「アップセット」

「信じられない結果だ。本当に数多くの男たちが、本当に素晴らしい活躍をした。QBはガッツを見せたし、ディフェンスは本当に本当に良い働きをした。OLも最後までハードに戦った」。
試合後のインタビュー。事実上のアップセットに、オハイオ州立大のライアン・デイヘッドコーチ(HC)は、感極まりながら、気持ちを吐き出した。

チームとして伝統や実績は上でも、オハイオ州立大にとって、クレムソン大は苦手な存在だった。過去7シーズンで10敗だが、うち3敗がクレムソン大に喫したもので、通算では0勝4敗だった。

オハイオ州立大はBIG10で優勝した翌日、12月20日に全米4強に選出されたが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の蔓延で、今季の試合数がわずか6試合だったことが批判を招いた。対戦相手となったクレムソン大のダボ・スイーニーHCがその代表格で、ランキング決定の材料となるコーチ投票では、スイーニーHCはオハイオ州立大を11位としていた。

HC歴12年で通算140勝、過去5シーズンで4回全米王者決定戦に進出し、2回の優勝というスイーニーHCの発言は重みを持った。2年目のデイHCとオハイオ州立大は悔しさを押し殺すしかなかった。

QBフィールズにとっても状況は同じだった。QBローレンスは、カレッジトップQBの座を争うライバル、そして4月のNFLドラフトの指名順位でも、常に意識をしてきた相手だ。昨シーズンは同じ全米準決勝のフィエスタボウルで、23-29で惜敗したこともある。デイHCと同様に、負けるわけにはいかなかった。

オハイオ州立大は、2回目のオフェンスシリーズから5回連続でTDを奪った。うち4本がフィールズのパスだった。とはいえ、決して順風満帆の試合だったわけではない。

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】パスで6TDと活躍したオハイオ州立大のQBフィールズ=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】パスで6TDと活躍したオハイオ州立大のQBフィールズ=Photo by Getty Images

大きな危機にも直面した。第2クオーター8分、フィールズはスクランブルした際に、クレムソン大LBジェームズ・スカルスキーのヘルメット頭頂部からの激しいタックルを右の背中に受けた。スカルスキーがパーソナルファウルで退場になったほどのヒットだ。

だが、フィールズは痛みを押して出場を続けた。

フィールズが受けたヒットは相当の衝撃だった。この試合で3本のTDパスをキャッチしたWRオレーブは「フィールドの離れた場所にいた自分にも、その瞬間の音がはっきり聞こえた」という。

デイHCはサイドラインでフィールズの顔を覗き込みながら尋ねた。「大丈夫か。まだやれるか」。
フィールズは「選択の余地なんかない。やらなきゃいけないんだ」と答えたという。

「その時点で、フィールズができること、できないことを考えながら探した。本当は何もできない状態だった。それなのに、なんというガッツのあるプレーだったのか。なんとタフで特別な若者なのか、ジャスティン・フィールズは」とデイHCは語った。

オフェンスを下支えしたのは、RBトレイ・サーモンだ。オクラホマ大を卒業して今季転校してきたパワーバックは、1回平均6.5ヤードという爆発力のある走りが持ち味だが、オクラホマ大時代は成績に波があってエースになり切れなかった。

今季は、12月19日のBIG10優勝戦、ノースウェスタン大戦で、大学史上最多となる1試合331ヤードラッシングで、一気にブレークした。この試合でも、分厚い上半身でタックルを跳ね飛ばし、スティフアームでディフェンダーを突き飛ばし、縦横無尽に走り回った。

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】力強い走りを見せたオハイオ州立大のRBサーモン=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】力強い走りを見せたオハイオ州立大のRBサーモン=Photo by Getty Images

RBサーモンは、ラン31回193ヤード、パスキャッチでも4回61ヤードを記録。QBフィールズはパス385ヤードを稼ぎ、6TDは、シュガーボウルの新記録となった。強力な地上戦と空爆のコンビネーションは、トータル639ヤードを記録し、堅守を誇ったクレムソンディフェンスを引き裂いた。

クレムソン大の49失点は、昨年の全米決勝戦で、ジョー・バロウ(現NFLベンガルズ)率いるルイジアナ州立大に奪われた42点を超え、過去7年で最悪となった。

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】敗戦が濃厚となったクレムソン大。QBローレンスに語り掛けるスイーニーHC=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】敗戦が濃厚となったクレムソン大。QBローレンスに語り掛けるスイーニーHC=Photo by Getty Images

過去5シーズンの勝率がFBS最高の9割3分2厘というクレムソン大のスイニーHCは、自らまいた種で、近年最大の屈辱的な敗戦を味わった。
試合後、記者会見で「オハイオ州立大を11位とランク付けしたことは後悔していない」と言い張ったスイーニーHC。決してオハイオ州立大を侮る意図はなく、より多くの試合を戦った大学を評価すべきだという考えだったという。
しかし、これから戦うことになる相手チームを、投票が公開されることを承知のうえで低く評価したのは、まったく余計な行為だった。この一事が、オハイオ州立大の闘争心の燃料となり続けた。

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】劣勢のクレムソン大、QBローレンス=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】劣勢のクレムソン大、QBローレンス=Photo by Getty Images

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】ゲームMVPを獲得したオハイオ州立大のQBフィールズ=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】ゲームMVPを獲得したオハイオ州立大のQBフィールズ=Photo by Getty Images

フィールズは、会見で、医師の診断はまだ受けておらず、体の右側全体がまだ痛いと明かした。
「明日の朝、自分がもっと傷む体になるのはわかっている。でも、それはチームのため、みんなのために価値ある痛みだ」
12月19日のBIG10決勝・ノースウェスタン大戦の(TDなし、2インターセプトという)無様なパフォーマンス、そしてクレムソンをオハイオ州立大が破ることに疑いを持つ人々の存在が、この試合への原動力だったとフィールズはいう。
「準備して、準備して、今までにこんなにやったことが無いというほど試合前の準備をした。人々が疑えば疑うほど、その疑いが我々を準備へ押しやった」
「だから、それがフィールドに現れたのだと思う。私は今、兄弟たちを、チームメートたちを、彼らのプレーぶりを、ただただ誇らしく思っている」

シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】ゲーターレードシャワーを浴びるオハイオ州立大のデイHC=Photo by Getty Images
シュガーボウル【クレムソン大学対オハイオ州立大学】ゲーターレードシャワーを浴びるオハイオ州立大のデイHC=Photo by Getty Images

◇              ◇              ◇

CFP準決勝・ローズボウルゲーム(2021年1月1日、テキサス州ダラス)
アラバマ大学(12勝0敗、SEC)○31-14●ノートルダム大学(10勝2敗、今季のみACC)

選手層の厚さと、オフェンスのタレント力で上回るアラバマ大が着々と加点して逃げ切った。
アラバマ大は第1クオーター最初のオフェンスシリーズで、QBマック・ジョーンズがWRデボンテ・スミスに26ヤードのTDパスを決めて先制すると、次のシリーズでも、RBナジー・ハリスがディフェンスの頭上を飛び越える「ハードリング」で53ヤードをゲインして攻め込み、ジョーンズからWRジャフリール・ビリングスレイにTDパスが決まって加点。3シリーズ目のドライブでも、ジョーンズからスミスにTDが決まった。

ローズボウルゲーム【アラバマ大学対ノートルダム大学】アラバマ大のQBジョーンズ=Photo by Getty Images
ローズボウルゲーム【アラバマ大学対ノートルダム大学】アラバマ大のQBジョーンズ=Photo by Getty Images

試合途中から、ノートルダム守備陣の粘りに攻めあぐねる場面も見られたが、QBジョーンズ率いるオフェンスはターンオーバーもなく、ノートルダムに付け入るスキを与えなかった。アラバマ大は第3クオーターにジョーンズからスミスに3本目のTDパスをヒットして、ノートルダムを突き放すと、第4クオーターにもフィールドゴールで追加点を奪い勝負を決めた。
ノートルダム大は、強力なOLを武器に、第2クオーターに15プレー8分3秒をかけたロングドライブでTDを奪ったが、その後はファーストダウンを重ねても決定力がなく得点できず。勝負の決まった第4クオーター最終盤でTDを返すのがやっとだった。

【アラバマ大学対ノートルダム大学】アラバマ大のWRスミス=Photo by Getty Images
【アラバマ大学対ノートルダム大学】アラバマ大のWRスミス=Photo by Getty Images

【小座野容斉】

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