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2021-01-10

【相撲編集部が選ぶ初場所初日の一番】

綱取りを狙う貴景勝が御嶽海を土俵際まで攻め込むも、引いたところをつけこまれ痛恨の黒星を喫した

御嶽海(押し出し)貴景勝

初場所初日直前に裏方も含む協会員全員がPCR検査を受け、5人の陽性者が判明。九重部屋、友綱部屋の力士が感染し、両部屋と場所前に感染者が出た荒汐部屋、宮城野部屋の全力士65人が休場となった。

多くの部屋で感染していた場合、中止の可能性もあっただけに、何とか開催にこぎつけることができて、我々もホッとひと安心。土壇場で中止になったら、本がつくれないところだった。

今場所の一番の注目は先場所優勝した大関貴景勝の綱取り。大関で連続優勝なら横綱当確なのだが、両横綱不在ということで、「高いレベルでの優勝が求められる」と伊勢ケ濱審判部長(元横綱旭富士)。全勝か14勝なら問題ないが、12勝3敗での優勝なら見送られる可能性もある。

貴景勝の相手は御嶽海。初日から強敵との対戦だ。これまでの対戦成績は9勝9敗の五分。優勝決定戦も含めると御嶽海がリードしている。貴景勝としては御嶽海が密着するのがうまいだけに、いかに引かずに我慢して突き押しに徹し切れるかがカギだ。

軍配が返り立ち上がると、両者、激しい突っ張り合い。御嶽海が叩いたところを貴景勝が土俵際まで攻め込む。ここは回り込まれると、逆に貴景勝が引いてしまい、そこをつけこまれて押し出された。貴景勝は綱取りに向け、痛い1敗を喫してしまった。

殊勲の白星を挙げた御嶽海は、「我慢した一番だった。下から当たれて起こすことができた。叩いたのは反省ですけど、相手のことはよく見えていた」と振り返る。大関昇進で先を越され、横綱まではという意地が感じられた。

痛恨の黒星となった貴景勝だが、リモート取材は拒否せず対応。「負けたということは理由があって負けているので、修正していかないといけない」と淡々と語る。今場所は綱取り場所だが、「自分ではいつもどおりですけど、勝たないと意味がないので切り替えていきたい。伸び伸びと自分の相撲を取り切れればと思います」と落ち込んだ様子はない。

東京都に緊急事態宣言が発出される中での開催に、「こんな世の中ですけど、相撲を見ている人に活力を与えられるように頑張っていきたい」と前を向いた。過去には初日に負けて綱取りに成功した力士もいる。これからが踏ん張りどころだ。

文=山口亜土

相撲 1月号 初場所展望号(No.917)

令和三年大相撲力士名鑑(「相撲」編集部/編)

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