close

2021-01-31

【第93回センバツ出場校の指導法】長崎県立大崎高校Part3 フォームにつながる体力トレーニングA、B、C

長崎県立大崎高校・清水央彦監督に聞く練習メソッドPart3は指導のスパン、考え方と丸太を使った下半身強化トレーニングを紹介する。

体力を見極め段階的に技術を身につける体系的指導


 投球フォームは全体の調和で成り立つもの。一部分の動きの修正を試みたことで、パフォーマンスが崩れてしまうことは珍しくない。選手をそうした事態に陥らせないために、技術を体系立てて身につけさせていく必要がある。

――――――――――――――――――――――――

 Part1、2のような段階を追うのは、「トップ」を時間軸にしてそのほかの動きのタイミングを見ることで、フォーム全体の調和を意識しながら指導できるからです。時間軸となるものがなく、部分的な動きをその都度、修正していくようなやり方では、一カ所を修正するたびにほかのパーツとのタイミングがズレてきて、ゴールにたどり着きにくいと思います。

 高校生に対する、これらの指導のスパンとしては、(右投手の場合)まず右手がトップを通っていることを確認した上で、左腕の使い方を身につけていき、1年生の冬季から左脚の使い方に取り組み、2年生の冬季から右脚の技術を身につけ、3年生になって最終的に右腕の動きで全体を調整するという流れで行っています。


ロープ回しやロープを使った縄跳びを肩回りの筋力強化の一環に取り入れている

 大枠で「上」の技術を身につけてから「下」に移行するのは、下半身の技術を身につけるには最低限の筋力が必要だからです。体の力が足りていないところには技術が入っていくはずがありません。取り組みの中ではフォームに必要な動きをトレーニングに落とし込むようにしています。極端な話、トレーニングをしているうちに、自然と動きができるようになっているという状態がつくれればいいと考えています。

 特に軸脚の要素は、常にトレーニングで動作につながる筋力を高めていきながら2年生の冬季でようやく取り組めるくらいのものだと思っています。「乗せる」ことが確実にできなければ、「残す」ことが生きません。よって、順を追って身につけていくことが大事なわけです。


 フォームにつながる体力トレーニングA 
ランジ
丸太を使った下半身強化。丸太を両腕で保持しながら体幹を固めて実施することで体幹の強化にもつながる。ステップ脚への「乗せる」動作につながるトレーニング。後方の脚の位置を上げることで負荷が上がる。


 フォームにつながる体力トレーニングB 
ジャンプスクワット
軸脚の「残し」の際の足首からヒザを垂直に立てる動きをつくるトレーニング。


 フォームにつながる体力トレーニングC 
サイドランジ
パワーポジションを軸脚からステップ脚に移し替える動作につながるトレーニング。

 突出した運動能力がなくても、こうしたことを段階的に身につけた選手は投球動作のムダがそぎ落とされるとともに、軸がしっかりするので、スピードも出るようになってコントロールも安定してきます。ですから、野手として活躍することが能力的に難しいと思われる選手を投手に転向させることも珍しくありません。あらゆることを身につけないといけない野手と比べて、投手は投げられるようになりさえすれば、試合に出るチャンスがあるからです。

 ボールや人の動きにタイミングを合わせる打撃や守備、走塁と違い、投球はその動作だけを見て評価したり、指導したりできる分、投手の技術はシンプルです。それだけに、指導する側が技術を体系立てて考える視点は、選手を着実に成長させるためにも、選手を技術的に迷わせないためにも大事なことだと思います。

Part1はこちらから
Part2はこちらから

【ベースボールクリニック2020年2月号掲載】

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事