アメリカンフットボールのXリーグは、新しいトップリーグ「X1スーパー」が8月24日に開幕した。富士通スタジアム川崎では、3連覇の王者・富士通フロンティアーズとIBMビッグブルーが対戦し、富士通が55-13でIBMに大勝した。
富士通が、ターンオーバーからのオフェンスをタッチダウン(TD)につなげて、着実にリードを奪い、快勝した。IBMは QB政本悠紀の速いタイミングのパスで攻め込んで第1クオーター(Q)3分に、K佐藤敏基のフィールドゴール(FG)で先制したが、富士通は第1Q10分に、インターセプトから得たオフェンスでQBマイケル・バードソンがWR中村輝晃クラークへTTDパスを決めて逆転。IBMは第2Qに佐藤がFGを決めて6-7と1点差としたが、富士通は第2Q6分過ぎからウィリアムス・デレク・アキラや新加入のサマジー・グラントの活躍で3TDを重ね、IBMを突き放した。後半に入っても富士通はオフェンスの手を緩めず。パス330ヤード、ラン261ヤード、26ファーストダウンの猛攻で、快勝した。
2年連続で「ジャパンXボウル」を戦った両雄の対決。ハーフタイムをはさんだ第2、第3Qの5分で5TDを奪った富士通が勝敗を決した。富士通オフェンスは目を見張るスタッツだが、おぜん立てをしたのがディフェンスのインターセプトだった。
序盤、ペースを握ったのはIBMオフェンス。QB政本のクイックリリースが冴えて、ファーストダウンを重ねゴールに迫った。最初から3回のドライブで、計32プレー、141ヤードをゲインした。
富士通LB鈴木將一郎
「IBMは『富士通ディフェンスのプレッシャーが届かないタイミングで、早くボールをQBから離そう』ということを実行していた」
確かに、IBMのパスは通っていたが、パスだけが通っていた。IBMはプレー選択が1元的でランプレーもQBのキープやスクランブルばかり。冒頭の3ドライブでは、RBのランプレーが、ほぼ無かった。
鈴木將一郎
「こういう展開になった時に、僕らディフェンスのできることは『出来るだけ早くタックルする、めげずにQBにプレッシャーをかけ続ける、投げミスを誘う』ということしかない」
それが、5本のインターセプトにつながった。5本ともただのインターセプトではない。レシーバーが弾いたり、ディフェンスの手に当たって宙に浮いたリバウンドのボールを富士通ディフェンス陣がことごとくものにした。
富士通LB 趙翔来
(2本のインターセプトを記録して、試合後のマイクパフォーマンスでは「密かに練習していました」と話す)
「リバウンドボールを捕るのは、練習してできることではない。練習しようがないので。ただコーチからは『ボールが宙に浮いている(生きている)間は、全速力でボールに行け、足を絶対に止めるな」と言われている。それが実践できていた」
LBやDBがフルスピードで動けるのは、DLやOLBのパスラッシュが厳しかったためだ。秋のリーグ戦で初サックを記録した2年目のDL山崎奨悟や高谷 亮太、OLB池田健人らが、政本やケビン・クラフトを追いかけまわした。
山崎奨悟
「DLが頑張ってプレッシャーをかけて、IBMのOL(パスプロテクション)のカップを小さく小さくできていた。結果としてLBやDBが動けてインターを取れたと思う」
パスが投じられて、リバウンドするまでの個々のプレーは、IBMオフェンスと富士通ディフェンスの、やるかやられるかという互角の状態だった。双方の戦術や選手の技量に差があったわけではない。宙に浮かんだ瞬間、ボールはオフェンスのものでもディフェンスのものでもなくフリーとなる。それを地面に落ちる前に確保する。集中力の差が点差となって表れただけだ。
鈴木將一郎
「政本君はやはり怖いQB。パスだけでなく、スクランブルもある。どっちに転ぶかわからない勝負の目が、ウチに転んだ。運が来た。オフェンスがその後TDを取り切ったことを抜きにして、僕らディフェンスだけで考えれば、試合を通じてやり続けることができた、コミットできたということが、あの点差となって表れた」
◇ ◇
フットボールは、点差は結果であって、実力の差ではない。1昨年のジャパンXボウル以来、3回の富士通戦で、屈辱の大敗が続くIBMだが、敵のLB鈴木が語る「めげずに試合を通じてやり続ける」という言葉しか、処方箋はないように思える。リーグ戦はまだ始まったばかりだ。【写真/文:小座野容斉】
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