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2021-03-21

【ボクシング】ローレンス・オコリー。クルーザー級にスター誕生の予感

右ストレート一撃。あまりにも鮮やかなノックアウトで勝負は決まった

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 WBO世界クルーザー級王座決定戦12回戦は20日(日本時間21日)、イギリス・ロンドンのウェンブリーアリーナで行われ、イギリス期待のローレンス・オコリーが、過去2度、このタイトルを手にしているクジシュトフ・グロワキ(ポーランド)に6回46秒、鮮やなノックアウトで勝利して、新チャンピオンとなった。28歳のオコリーはこれで16戦全勝(13KO)となった。

極上のアウトボクシングが光った

 身長196センチ、リーチはなんと210センチもある。恵まれた体から歯切れのいいハードパンチが次々に繰り出される。まだまだ未完成と言われてきた28歳のオコリーだが、この一戦、見事なワンパンチKO勝利で、クルーザー級の主役に躍り出たのかもしれない。

 34歳のベテランサウスポー、グロワキは後足に体重をかけ、懐の深さを演出すると、伸びのいい左ストレート、首を刈り取るような右フックを打ち込んでくる。決して扱いやすくはない技巧派だが、オコリーはまるで問題としなかった。速いフットワークでリングをサークリングし、これまた高速のパンチを打ち込んでいく。さしものグロワキも、イギリス人のアウトボクシングに手も足も出なかった。


鋭く多角的なジャブ。オコリーはこのレフトですぐさま展開を支配した
鋭く多角的なジャブ。オコリーはこのレフトですぐさま展開を支配した


 長いジャブが効果的だった。オコリーはこのレフトパンチをまっすぐに打ち込むものと、わずかに内側にひねり込む2種を上手に使い分ける。さらに右ストレート。これで、顔面を弾き、ボディをえぐる。グロワキは攻撃の手立てが見つからない。決定打こそ見えなかったが、まったくのワンサイドのまま試合は進行していった。
 終幕は唐突だった。6ラウンド、イギリス人はワンツーストレートをボディに伸ばす。その直後だ、同じフォームからまたしてもワンツー。今度はその右が顔面に炸裂する。ポーランド人はもんどりうって倒れこむ。からくも立ち上がったが、ポーズはとれない。レフェリーはそのままカウントアウトした。
王座統一。ヘビー級進出。この男なら可能かもしれない
王座統一。ヘビー級進出。この男なら可能かもしれない

大きく膨らむ今後の可能性

「夢がホンモノになったんだ」

 当然ながら、オコリーは喜びを隠さない。9年前、現3団体統一世界ヘビー級チャンピオン、アンソニー・ジョシュア(イギリス)がロンドン五輪で優勝したのを見て、ボクシングをやろうと決意した。それまでは、ただの肥満児だったともいう。

「マクドナルドで働いていた僕が、ジムに通うために、ずっと経済的支援をしてくれた両親に感謝したい」

 それから4年後、ナイジェリア出身の両親を持つオコリーはリオ五輪に出場し、プロになった。現在ではジョシュアが運営するマネージメント・カンパニーの一所属する。

 どことなくぎこちなかった動きも、試合をこなすごとに大きく改善されていった。自信もつけてきた。本来なら、昨年12月にこの王座決定戦が行われるはずだったが、グロワキが新型コロナに感染して、この日まで延期されていた。オコリーは焦らなかった。代替えの対戦者を2ラウンドでストップした後、こう話したものだ。「慌てることはない。世界タイトルはいつだってできるからね」。

 そして生み出した会心の勝利。夢は広がるばかりだ。プロモーターのエディ・ハーンは「まずはクルーザー級で4団体統一、それからヘビー級に挑戦させたい」。この日の速さと切れ味を見る限り、オコリーがヘビー級のトップに輝くのは、決して夢物語ではない。

写真◎Mark Robinson, Dave Thompson/Matchroom Boxing

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