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2020-06-05

笑わない男、妖精の投げキッス、秋田の速球王、井上の右…報道写真展入賞作品【BBMフォトギャラリー4】

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BBMフォトギャラリーの第4回は「雑誌協会報道写真展」の受賞作品から。稲垣啓太、マリア・シャラポア、小口雅之、吉田輝星、井上尚弥と盛りだくさん! アスリートが放った一瞬の煌きを、撮影者の回想とともにお届けします。

上写真=2019年10月13日「ラグビーワールドカップ2019日本大会 予選リーグ・プールA第4戦/日本 28 – 21スコットランド」=横浜国際総合競技場 スコットランド戦25分に代表初トライを挙げた稲垣啓太(写真◎高塩隆)

2019年入賞作品「笑わない男」稲垣啓太、執念のトライ

 タイトルカットの写真…「ワールドカップの日本開催で一気に認知度が高まったラグビー。これまで脚光を浴びることのなかったポジションの選手も注目の的となりました。”笑わない男”プロップの稲垣啓太もその一人。身を挺したタックルに徹するストイックな姿に、多くのファンが感動を覚えました。その彼が、決勝トーナメント進出をかけた大一番、スコットランド戦の前半25分に代表初トライを挙げたのです。その瞬間、チームとスタンドを埋めた満員のファンが歓喜に沸き返ったのは、記憶に新しいところ。この試合の勝利だけではなく、ラグビー日本代表が念願としていたグループリーグ突破を確信するシーンになりました」(撮影者◎高塩隆)

2005年 日本雑誌協会写真記者会賞「コートの妖精 マリア・シャラポワ」

2004年6月25日「ウィンブルドン選手権2004 女子シングルス3回戦 マリア・シャラポワ 6-3 6-1 ダニエラ・ハンチュコバ」=イギリス/オールイングランド・クラブ 澄んだ光線に輝く勝利後の投げキッス(写真◎小山真司)

「シャラポワのトレードマークである「勝利後の投げキッス」で最高の写真を撮りたいと考えていました。3回戦は、運よくセンターコートでの試合でした。背景に文句はない状況です。そこで、500㎜の望遠レンズを選んで、ギリギリのフレーミングでの一発勝負にかけたのです。そして投げキッスの瞬間、傾きかけた日差しが完璧な角度で照らしてくれたことに感謝!」(撮影者◎小山真司)

2004年7月3日「ウィンブルドン選手権2004 女子シングルス決勝 マリア・シャラポワ 6-1 6-4 セレナ・ウィリアムズ」=イギリス/オールイングランド・クラブ サーブの瞬間、長いブロンドヘアが躍動感を際立たせる(写真◎小山真司)

「決勝で指定された撮影席はベースラインの後ろ側でした。他のグランドスラム大会と違い、ウィンブルドンはコートの内壁に広告が入らないため、写真の背景がスッキリします。だから、ご覧の通り、シャラポワの長いブロンドヘアがくっきりと写って、サーブの瞬間の躍動感が際立つ写真になったのです。500㎜のレンズに1.4倍のレンズを付けた超望遠で撮影しています」(撮影者◎小山真司)

2004年7月3日「ウィンブルドン選手権2004 女子シングルス決勝 マリア・シャラポワ 6-1 6-4 セレナ・ウィリアムズ」=イギリス/オールイングランド・クラブ 17歳で初めてのグランドスラム優勝(写真◎小山真司)

「コートで初めてシャラポワを見たとき、かわいくて、顔がとても小さくて、モデルなんじゃないかな、と思ったのが正直なところです。そんな17歳の『妖精』が初めてグランドスラムを達成して臨んだ表彰式では、スタンドの両親に向けて「信じられない!」と言わんばかりの笑顔でした。この優勝を足がかりに、生涯グランドスラム達成へと突き進んでいくのです。残念ながら今年の2月に引退を表明しましたが、私にとって思い出の3枚です」(撮影者◎小山真司)

かつらボクサーの決定的瞬間

2006年入賞作品「かつらボクサー、一躍人気者に」

1枚目。2005年12月13日 コウジ有沢引退興行準決勝 ○小口雅之 7R TKO勝ち 柴田大地●=後楽園ホール。第1R開始、いつもと変わらず試合が始まった(写真◎橋田ダワー)。

2枚目。「まさか…」と疑念を持ったままカメラを構えていたが、このカットで確信に…

3枚目。そして第4R開始。試合は続行。会場内は異様な雰囲気に包まれた

「セミファイナルとなるこの試合は、ボクシングマガジン編集部からの撮影リクエストはありませんでした。私はカメラを構えないまま、リングサイドから試合を目で追っていました。違和感を覚えたのは第1Rが始まってまもなくのこと。ジャブをかわす度に、小口の頭髪がほんの一瞬、パカパカと浮き上がるように動いて見えたのです。
 リングサイドにいた関係者や他社のカメラマンたちに「なんか変じゃない?」と訴えても、誰も気づいていないようでした。でも、私はどうしても気になってしまって、脇に置いてあったカメラをつかみ、慌ててシャッターを押して、数カット押さえたのです。
 第4Rが始まり、小口がこの写真のスタイルでコーナーから飛び出すと、相手選手は一瞬固まったように見えました。お客さんもどう反応していいのか分からず、ますます異様な雰囲気に包まれていきました。
 試合中のかつら着用はルール違反でしたから厳重注意を受けましたが、7R TKOで勝利を収めたのでした。この試合の後、小口は一躍人気者となり、テレビ番組への出演オファーが増えたとのことです。人生、何が幸いするか分かりません」(撮影者◎橋田ダワー)

2018年入賞作品「甲子園100回大会の夏 金農旋風」

2018年8月21日「第100回全国高等学校野球選手権記念大会 決勝 金足農業(秋田) 2-13 大阪桐蔭 (北大阪)」=阪神甲子園球場 試合後、ベンチ前で悔し涙をぬぐう吉田輝星(写真◎高原由佳)

「1回戦から準決勝まで5連続完投を成し遂げ、夏の甲子園第100回大会に『金農旋風』を巻き起こした吉田輝星投手。しかし、決勝の大阪桐蔭戦では5回12安打12失点。帽子のつばに書いた『俺の縄張り』であるマウンドから無念の途中降板となりましたが、『死ぬ気の全力投球』によって勇気と感動を与えてくれました」(撮影者◎高原由佳)

2019年入賞作品「時代を超えたリアルモンスター」

2019年11月7日 WBSSバンタム級決勝 ○井上尚弥 判定3-0 ノニト・ドネア●=さいたまスーパーアリーナ 井上の右が炸裂!(写真◎菊田義久)

「ドネアの左フックで右目上をカットした井上でしたが、右ストレートを放ち、左ボディーでダウンを奪って最後まで貪欲にKOを狙いにいきました。その姿が大観衆を魅了したわけですが、リングサイドでカメラを構えた私もその目に吸い込まれるようにシャッターを押しまくりました。お互いの負けたくない気持ちがぶつかり合った、まさに死闘。年間最高試合に選ばれたのも当然です」(撮影者◎菊田義久)

※BBMフォトギャラリーは毎週火曜日・金曜日に更新予定です。

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