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2021-05-22

【相撲編集部が選ぶ夏場所14日目の一番】遠藤、照ノ富士を破り、優勝の行方は千秋楽へ

今日勝てば優勝の照ノ富士を遠藤がモロ差しから前に攻め立て土俵際で投げの打ち合い。軍配は照ノ富士に挙がったが長い協議の末、差し違いで遠藤が勝ち、優勝は千秋楽に持ち越された

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遠藤(下手投げ)照ノ富士

14日目に優勝が決まる可能性があった十両は、単独トップの千代ノ皇が敗れ、優勝の行方は千秋楽に持ち越された。幕内は2差をつけての単独トップである照ノ富士が勝てば優勝となる。相手は3敗の遠藤。結びの一番前で大一番が組まれた。

立ち合い、右足から低く踏み込んだ遠藤が左を差すと右も差してモロ差し。遠藤は抱え込まれる前にあおってヒジを張って極めさせない。さらに右を深く差して腰に食いつき、横から攻めて前に出る。土俵際で右外掛けにいくと、照ノ富士はこれをはね上げて小手に巻いての掛け投げ。遠藤も下手投げを打ち返し、両者ほぼ同時に土俵に落ちた。

軍配は照ノ富士に上がったが、物言いがついて長い協議。照ノ富士の右ヒジがつくのが早かったが、このときには遠藤の体が裏返っていた。これをどう判断するのか。印象としては、遠藤の勝ちか取り直し。遠藤の負けはないなという感じだった。

土俵上の輪が解け、伊勢ケ濱審判長(元横綱旭富士)が場内説明。「軍配は照ノ富士に上がりましたが、照ノ富士のヒジが先についており、軍配差し違いで遠藤の勝ちとします」。照ノ富士は表情を変えず、一礼して土俵をあとにした。一方の遠藤は表情が緩みうれしさがにじみ出ていた。

取組を振り返ると、遠藤のうまさが光った一番だった。照ノ富士攻略法としては差さずにハズ押しがセオリーだが、差したらヒジを曲げて抱え込ませない作戦もある。この日の遠藤は「小さく入って大きくなれ」というモロ差しの極意を体現していた。ただ遠藤としては外掛けにいったのは失敗だった。右に重心がかかっているときの右外掛けなら効くが、重心が左に移っていた状態なので、照ノ富士に逆転のチャンスを与えてしまった。絶体絶命の体勢だった照ノ富士はこれを見逃さず、はね上げて掛け投げにいったのはさすがだった。今場所で一番、見ていて力の入る相撲だった。

優勝争いを整理すると、トップは変わらず2敗で照ノ富士。3敗で貴景勝、遠藤となる。千秋楽は結びで照ノ富士と貴景勝が直接対決。遠藤は結び前に正代と対戦する。貴景勝が勝てば決定戦、遠藤も勝っていれば巴戦となる。

中盤過ぎからつまらない場所になったなと思っていたが、遠藤のおかげでわくわくする展開になった。自力優勝の可能性が出た貴景勝は、「準備をしっかりして、一生懸命やるだけ。結果はなるようにしかならないから」と語って国技館をあとにした。明日はどんな結果が待っているのか。とにかく千秋楽まで盛り上がってよかった。

文=山口亜土

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