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2021-06-27

【ボクシング】抜群のボクシングIQ! ジャーボンテ・デービスが世界王座3階級同時制覇

デービス(右)の正確にしてタイムリーなショットが次々にヒットしていく(Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions)

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 WBA世界スーパーライト級タイトルマッチ、チャンピオンのマリオ・バリオス(アメリカ)対WBAスーパーのスーパーフェザー級、同ライト級チャンピオンである挑戦者ジャーボンテ・デービス(アメリカ)の12回戦は26日(日本時間27日)に、デービスの地元ジョージア州アトランタのステートファーム・アリーナで行われ、3度のダウンを奪ったデービスが11ラウンド2分13秒でTKO勝ちを収めた。

 それにしても、なんというデービスの強さか。身長差12センチ、166センチのデービスからしてみれば、マリオスはまさしく見上げるほどに大きい。さらにデービスにとって初めてのウェイト。スーパーフェザー級でレオ・サンタクスル(メキシコ)をセンセーショナルなノックアウトで降した7ヵ月前の前戦から、いきなり5キロ近くも増量しての試合になる。さすがに最初は慎重に手順を追ってからになったが、着実にペースを手繰り寄せ、最後は痛快にフィニッシュしてみせた。

 長いリーチを持つバリオスに対し。最初の3ラウンド、サウスポーのデービスはじっくりと待ち続けた。どのくらいの距離なら相手のパンチは届かないか、どんな角度、タイミングで打ってくるのか。おそらく、デービスはその全数値を感覚に落とし込んでいったに違いない。さらに、ボディを守るショルダーブロッキングを含め、カバーリング、上体の動きまで、守りは完ぺきに近い。バリオスの攻めを読み、自分の守備力で完全に遮断できると確信してから、新しい戦いのページを開いた。

 4ラウンドあたりからだ。デービスの攻撃の頻度が上がってくる。ノーモーションの左ストレートが、バリオスの顔面をかすめると、ソールドアウト1万6570人の観客がどよめく。勇敢なバリオスはジャブ、左フックで反撃してくるが、デービスの急所を捉えることはほとんどなかった。
奪った3度のダウンは右フック、左ストレート、左アッパーのボディブローと決め手のパンチはすべてが違った(Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions)
奪った3度のダウンは右フック、左ストレート、左アッパーのボディブローと決め手のパンチはすべてが違った(Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions)

 力強いボディブローを交え、ラウンドごとにデービスの攻めに鋭さが加わってくる。そして迎えた8ラウンドだった。いきなりの右ロングフック。このパンチを側頭部に打ち込まれたバリオスははじけ飛ぶようにダウンする。ニックネームの戦車のようにチャレンジャーが追撃にとりかかる。右フック2発で追い込んで左ストレート。バリオスは再び倒れた。

 その後の猛攻に耐え、なおかつ反撃のブローを試みたバリオスは、続く9ラウンドを休息に充てたデービスに左フックを2発ねじ込んで意地を見せる。が、10ラウンド、デービスが再び攻勢を強めると、フィニッシュへの道筋が次第に明瞭に見えてくる。

 そのときがやってきたのは11ラウンドの2分過ぎ。デービスの左アッパーカットがストマックを強烈にえぐられて、バリオスは激しく顔を歪めてダウン。立ち上がったが、その直後、左ストレートでロープに寄り掛かったところで、レフェリーのトーマス・テイラーがストップをコールした。

 勝利が確定した直後、コーナーロープ2段目まで駆け上がったデービスは、そのままバックフリップしてキャンバスに着地。メリーランド州ボルチモアの生まれながら、今はアトランタに住む26歳のファイターは、完全にホームタウンのファンの心をつかんだ。
試合終了後、コーナーに駆け上った勝者はそのままバックフリップ。地元ファンの心をいよいよ鷲づかみ(Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME)
試合終了後、コーナーに駆け上った勝者はそのままバックフリップ。地元ファンの心をいよいよ鷲づかみ(Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME)

『USA TODAY』などに記事を提供する『BOXING JUNKIE』のマイケル・ローゼンタル記者はその速報記事で絶賛する。「もちろん、デービスはスーパーフェザー、ライト、スーパーライトのどの階級でも戦える。スーパーフェザーならオスカル・バルデス(メキシコ)、ジャメル・へリング(アメリカ)、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)、ライト級ではテオフィモ・ロペス、デビン・ヘイニー、ライアン・ガルシア(いずれもアメリカ)、スーパーライト級ならジョシュ・テイラー(イギリス)。デービスは彼らのだれよりも上を行っている」。いささか興奮気味に賛辞を連発していた。

 ローゼンタル記者の読みにおそらく正しい。25戦全勝24KOの戦績どおりの圧倒的な破壊力。加えて、緻密な分析力、攻防ともどもの多彩なバリエーション。そのボクシングIQは、上位2パーセント以内に与えられる『メンサ』級である。われらが井上尚弥(大橋)とともにだ。

 勇敢さは見せたものの完敗だったバリオスは27戦目での初黒星(26勝17KO)。2度目の防衛にも失敗した。

文◎宮崎正博(WOWOWオンデマンド観戦)

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