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2021-07-22

池江璃花子、第2の水泳人生はここまで。「代表ではしっかり自分の使命を果たす」

白血病の療養から復帰、日本選手権女子100m自由形の表彰式で笑顔を見せる池江

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4月3〜10日に東京オリンピックの競泳会場である東京アクアティックセンターで開催された競泳の東京五輪代表選考会(日本選手権)。女子50、100mバタフライ、50、100m自由形で優勝し4冠を果たした池江璃花子(ルネサンス)は、東京五輪の400mフリーリレー、400mメドレーリレーの代表権を獲得した。(スイミングマガジン6月号に掲載されたレポートを再録)

「まさか勝てるとは思わなかった」

 大会2日目の女子100mバタフライ決勝。緊張の面持ちで入場してきた池江だったが、レースが始まれば、大きく、伸びやかで、滑るような池江本来の泳ぎがそこにはあった。前半50mを26秒98の2位で折り返すと、残り25m付近で逆転。57秒77で制し、400mメドレーリレーで代表権を獲得。レース直後、「まさか勝てるとは思わなかった。つらくて、しんどくても努力は必ず報われるんだな」と、涙を流した。

 なによりも、個人の派遣標準まで0秒67。体力的に厳しい100mバタフライでこれなら、自由形であれば個人でいけるのでは――過度な期待は禁物とわかっていても、期待せずにいられなかった。

 100m自由形の準決勝では、驚きのレースを見せる。前半が27秒22と、26秒47だった予選より0秒75も遅い。さすがに代表選考会の緊張感のなかでは、体力的にキツいか。と思った直後、ペースアップ。後半を27秒14と前半より上げて泳ぎ、54秒36のトップで決勝に進んだ。

「体力的にも自信があったわけではなく、3本全力で行くと決勝に響くのでは」という戦略からだが、それでも前半を予選の26秒47で、後半を準決勝の27秒14で泳げば、53秒61。元来の一発の勝負強さを発揮すれば派遣標準の53秒31に届くかもしれない、とワクワク感が増した。

「決勝では53秒8を目標にしていた」

 そして決勝。いつものセンターレーンに戻ってきた池江の表情は、自信がみなぎっているように感じた。

 前半は26秒19でトップと0秒04差の2番手で折り返すと、そこからスルスルと抜け出し、2位に0秒34差を付ける53秒98で2冠目を獲得した。

「優勝を狙っていなかったというか、4位に入れるか、派遣標準(400mフリーリレーの54秒42)を切れるかという勝負になるのではと思っていました。ただ、想像以上に予選から速かったので、決勝では53秒8を目標にしていて、53秒98だったので、もう少し行きたかったな」と、終わってみれば4位どころか、チームをけん引する立場になっていた。

 レースを重ねるごとに、目標も上方修正。「25秒台で前半を折り返したかったので、あまり納得できるレースではなかったです」と、優勝だけでは物足りず、内容も求めるようになっていた。

 そして最終日は、当初の目標だった50mバタフライ優勝を果たすと、50m自由形も制し4冠を獲得。その堂々としたたたずまいは、かつての風格そのものだ。



「『負けるのは今年まで』と決めていた」

「今大会は50mバタフライで優勝することを目標にしていて、50、100m自由形、100mバタフライは優勝を狙っていませんでした。『負けるのは今年まで』と決めていたのですが、100m種目で2冠したあと、50m自由形でも負けたくないという気持ちがわいてきたんです」

 2019年12月に退院した直後は、パリ五輪を目指すと公言していた。しかし、1年の延期が味方し、リオ五輪に続いて連続出場をかなえた。「代表に決まったからには、しっかり自分の使命を果たさなくてはいけないと思っています」と話す姿は、多くの期待を背負い、結果を残してきたかつての池江だ。

 白血病から復帰したあとを「第2の水泳人生」と表現し、「第2の水泳人生の自己ベスト」を更新することに喜びを見いだしていた。しかし、それもここまで。かつて出した自己記録に挑戦する日々が、ここから始まる。

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