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2021-07-23

【ボクシング】43歳の躍動。野中悠樹が大差V2で「歴史に名を刻んだ」

野中(左)は13歳年下の挑戦者・越川を無難にコントロールした

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WBOアジアパシフィック・ミドル級タイトルマッチ12回戦は23日、大阪市のエディオンアリーナ大阪第2競技場で行われ、チャンピンの野中悠樹(43歳=渥美)が日本スーパーウェルター級3位の挑戦者・越川孝紀(30歳=一力)を危なげなくコントロールし、大差判定勝ちを収めた。野中は43歳にして2度目のタイトル防衛に成功している。

 パンデミックのさなか、野中、越川ともに20か月ぶりの試合になる。30歳の越川もむろんながら、野中は40代になってからの長期ブランク。初めて走り込みキャンプを張り、厳しいスパーリングスケジュールをこなしながら準備をしてきても、実戦をやってみなければ何もわからない。どこまで動けるのか、技術の錆びつきはないか、さらにスタミナは最後まで持つのか。

 だが、野中は試運転の初回を終えると、迷うことなく動き出す。大きくフットワークを使い、距離がわずかでも縮まるごとに左ストレート。さらに縮まればアッパーカット。それも上下に素早く打ち分ける。ボディワーク、ヘッドワークもきれいに決めて、越川のパンチを空転させた。中年から壮年へと差しかかる世代、これだけの運動量を費やすのは、大きな挑戦でもあったはずだが、野中の挑戦は確かに成果を結んだ。最後まで、攻防のピッチは衰えることはなかったのだ。

 ここまでウェルター級、スーパーウェルター級で戦ってきて、これがミドル級では初の試合になる越川は、ずっと追いかけるのだが、野中の動きについていけない。攻撃の大半は右のパンチだけ。それも、自分のやりたいポジションをチャンピオンが与えてくれなかったからだろう。

 6ラウンド、わずかにペースを落とした野中にチャレンジャーは肉薄。右ストレートをねじ込んでいったが、ラウンド終盤には野中が右アッパー、左ストレートときれいにクリーンヒットして流れを見失うことはない。その後も左右へのステップワークで、越川の攻めをいよいよ単調にさせていった。

 9ラウンドにバッティングで野中が、10ラウンドにはヒッティングで越川が、それぞれ目の上をカット。流血戦になっても、野中の攻防の冴えを失うことなく、そのまま最終ゴングまでたどり着いた。採点はジャッジ1者が115対113と僅少差をつけたのは意外だったが、残る2ジャッジは119対109と大差をつけていた。

「43歳で防衛という歴史に名前を刻んだのだから、世界戦線で戦いたいと言ってもかまわないと思います。チャンピオンは強いけど、頑張ります」。やるからには、常にてっぺんを目指したい。野中は野心を包み隠すことはなかった。

 野中は48戦35勝(10KO)10敗3分。越川は12戦9勝(6KO)3敗。

写真/佐藤真一

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