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2021-09-10

【NFL】開幕直前の備忘録 エースQBのシャッフルを追う(2)「期待」「失意」「再起」5,6年目の3人の場合

ビルズの控えQBとなったトゥルビスキー。プレシーズンゲームでは、古巣のベアーズと対戦した=photo by Getty Images

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まもなくNFLの2021年シーズンが開幕する。シーズンに入る前の備忘録として、リーグを代表するスターたちの身に何が起こったのか、シャッフルを追った。(2)は入団5、6年目の3人のQBの「現在地」を確認した。人気チームのスターとして大型契約を手にした者、失意の中でエースの座を追われた者、新天地で再起を誓う者。彼らの2021年はどんなシーズンになるのだろうか。

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大型契約ゲットも「アメリカズチーム」ゆえの期待と重圧・・・カウボーイズQBプレスコット

待望の大型契約を手にしたカウボーイズQBプレスコットだが、人気チームゆえの期待と重圧が待っている=photo by Getty Images
  ダラス・カウボーイズは3月、エースQBのダック・プレスコットと4年間の大型契約を結んだと発表した。複数の米メディアによると、契約総額は1億6000万ドル(約175億円)で、契約ボーナスは6600万ドル(約72億円)、支払い保証は1億2600万ドル(約137億円)という。

 プレスコットは、昨年のオフに長期契約を結ぶ交渉をしたが、7月の期限までに締結に至らず、昨季はフランチャイズタグ契約の3140万ドル(約34億円)でプレーしていた。開幕から5戦目のジャイアンツ戦で右足首を骨折し、シーズン終了となっていた。


 プレスコットは、2016年にドラフト4巡指名で入団。バックアップとしての獲得だったが、当時のエースQBトニー・ロモの負傷で、1年目からエースとなり、パス3667ヤード23TD、ラン282ヤード
6TD、わずか4INTというルーキーらしからぬ成績で、チームをプレーオフに導いた。

 以来4シーズン全試合に出場し、昨季も含めた5シーズン85試合でパス17864ヤード、106TD、40インターセプト。通算レーティング97.3は、トム・ブレイディに並ぶ史上5位だ。

 一方、チームの成績は、1年目の13勝3敗から年々下降した。「アメリカズチーム」カウボーイズは、常に優勝を期待される存在だ。ファンや地元を中心としたメディアからは、過去のロジャー・ストーバック、トロイ・エイクマンというスーパーボウル優勝QBと比較して「勝負弱い」「リーダーとして物足りない」という声も上がっていた。

 今回の大型契約について、カウボーイズのオーナー兼GMのジェリー・ジョーンズは記者団に対し「私がこれまで関わってきたものごとの中で、結果としてスペシャルなものになったのは、ほとんどは私が過払いしたものだ。いつもそうなのだ」と語っている。

 カウボーイズは、9月9日の開幕戦で、スーパーボウル王者のバッカニアーズと対戦する。大型契約を勝ち取ったプレスコットの最初の対戦相手が、スーパーボウル7回優勝の「GOAT]トム・ブレイディということになる。
 
ドラフト同期QBが「でき過ぎ」の不幸、エースの座を追われ移籍・・・ビルズQBトゥルビスキー

ビルズの控えQBとなったトゥルビスキー。プレシーズンゲームでは、古巣のベアーズと対戦した=photo by Getty Images


 シカゴベアーズの元エースQBミッチエル・トゥルビスキーが、バッファロー・ビルズと契約した。NFL.comによると1年契約で、250万ドル。ベアーズは5年目のオプションを行使せず、トゥルビスキーはFAになっていた。

 トゥルビスキーは2017年ドラフト1巡全体2位で指名されたエリート選手。ルーキー年の第5戦目から先発となった。その年は平凡な成績に終わったが、翌18年、負傷で2試合を欠場しながらパス3223ヤード24TDと活躍。ベアーズは12勝4敗で地区優勝を果たした。

  さらなる成長を期待された19年は伸び悩んだ。パス成功率も獲得距離も減ったが、最も大きく減ったのはパスTD。15試合で17本だった。

 サイドラインの消極的なプレーコールもあってショートパスに終始し、1回平均は6.1ヤード。ネット上では「新型コロナウイルス感染症予防のソーシャルディスタンスは、トゥルビスキーのパスと同じ距離」などとジョークが飛び交った。

 昨季終盤、ベアーズの公式ツイッターは、「チーム史上最速の49試合目でパス10000ヤード、ラン1000ヤードを超えたQB」としてトゥルビスキーを称えた。往年のジム・マクマーンは58試合、ジム・ハーボウは77試合かかったという。

 先発した試合の勝敗も、2年目以降は25勝13敗と決して悪くはない。パスの短さはプレーコールの問題でもある。

 ただ、ドラフト同期のQBが、自分より後に指名されたチーフスのパトリック・マホームズ(1巡10位)とテキサンズのデショーン・ワトソン(同12位)。見劣りするのは否めなかった。トゥルビスキーはビルズで、2歳年下のジョシュ・アレンの控えとなる。

 ベアーズは、シンシナティ・ベンガルズの元エースQBで、昨年はカウボーイズでプレーしたアンディ・ダルトンを獲得。さらにドラフト1巡で、全体11位でQBジャスティン・フィールズ(オハイオ州立大)を指名した。

 ベアーズのマット・ナギーHCは、現時点でのエースQBはダルトンと明言している。

大活躍から一転して絶不調に、新天地で復活を期す・・・コルツQBウェンツ

イーグルスから移籍し、再起をかけるコルツQBウェンツ。負傷の経過も良好で開幕から出場可能という=photo by Getty Images


 2月、フィラデルフィア・イーグルスのQBカーソン・ウェンツがインディアナポリス・コルツにトレードされることが決まった。

 交換条件は、コルツの2021年のドラフト3巡(全体85位)指名権と、条件付きで変更の可能性を持つ2022年の2巡指名権。ウェンツが、2021年シーズンにコルツのオフェンスプレーの75%以上に出場か、もしくは70%以上に出場し、かつコルツがプレーオフに進出した場合は、2022年の2巡指名権が1巡に変更となるという。

 ウェンツは28歳。カレッジフットボールでは、下位カテゴリーFCSのノースダコタ州立大出身だが、196センチ、108キロと大型で、冷静かつ強肩、機動力もあるとして2016年ドラフトの目玉選手となった。

 全体2位でイーグルスに入団した後、2年目の2017年には、13試合でパス3296ヤード、33TD、7インターセプトという活躍を見せてチームも11勝2敗と快進撃。しかし、第14週で負傷退場すると、残りシーズンを欠場した。イーグルスはその後、スーパーボウルを制覇したが、ウェンツはプレーすることはなかった。

 2019年シーズン開幕前に4年契約を結んだウェンツは、全16試合に出場、チーム史上初めてパス4000ヤードを超え、27TD、7インターセプトの活躍を見せた。しかし、プレーオフ初戦のシーホークス戦で負傷退場、イーグルスはそのまま敗れていた。

 2020年、ウェンツは深刻なスランプに陥った。パス成功率がプロ入り後初めて60%を割り込み、インターセプトが倍増した。

 オフェンスが機能しなくなったイーグルスは、シーズン中盤から4連敗。ウェンツに替えてルーキーQBのジェイレン・ハーツを送り込んだが、なかなか勝ち星にはつながらず、二桁敗戦でシーズンを終えた。この過程の中で、QB出身のダグ・ペダーソンHCとウェンツの関係に亀裂が生じた。

 シーズン終了後の1月11日、ペダーソンHCが解任され、ウェンツも1時は残留するとみられたが、結局はチームを離れることになった。

 イーグルスの今季先発QBは、2年目のハーツが務めることになる。

 一方、移籍したウェンツは、QBフィリップ・リバースが引退したコルツで、エースとして期待された。しかし、夏季キャンプ早々に足の負傷が発覚し、8月2日に手術を受けた。当初は復帰まで5~12週間という報道があったが、経過が良好で、9月に入ってからは古メニューで練習しているという。最新の情報では第1週から試合出場が可能という。(続く)

【小座野容斉】

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