アメリカンフットボール・Xリーグの最上位「X1スーパー」は9月20日、第2節の富士通フロンティアーズ対東京ガスクリエイターズの1戦があり、富士通が東京ガスを振り切って今季2勝目を挙げた。
富士通フロンティアーズ○32-22●東京ガスクリエイターズ(2021年9月20日、富士通スタジアム川崎) 富士通は第1Q2分RBトラショーン・ニクソンのランタッチダウン (TD) で先制した。東京ガスは8分、K朴容俊が48ヤードのフィールドゴール(FG)を決めた。
富士通は第2Q1分、RBニクソンがランTD、QB高津佐隼矢の2ポイントコンバージョンも決まって、15-3とした。東京ガスは、自陣ゴール前から粘り強く前進すると、新米国人QBジェロッド・エバンスがWRナムディ・アグードに24ヤードのTDパスを決めて、5点差に迫り、後半へ折り返した。
富士通は第3Q3分、QB高木翼からWR小梶恭平にTDパスが通って、12点差に。追う東京ガスは10分にQBエバンスがランでTD、2ポイントコンバージョンは失敗したがワンポゼッション差とした。
しかし、第4Q開始早々、エバンスのパスを富士通DB奥田凌大がインターセプトリターンTD。さらに6分にはK西村豪哲がFGを決めて、16点差とした。
あきらめない東京ガスは同10分にエバンスがWR林裕嗣に6ヤードのTDパスを決めたが、2ポイントコンバージョンは失敗した。東京ガスが狙ったオンサイドキックも、富士通が抑えて、32-22で逃げ切った。
第1戦とはまるで別人、富士通苦しめたエバンス 42-6、56-7、77-10、59-0、65-0。これが過去10シーズンの秋季リーグ戦における富士通対東京ガス戦の結果だった。65点差のシャットアウトが2019年11月3日、直近の対戦だ。その時はオフェンスはトータル455ヤードと113ヤード。ファーストダウンは21回と5回という大差が付いた。
その富士通が、この日はあわやというところまで追い込まれた。
東京ガスは、2週間前のパナソニック戦から、新米国人QBエバンスを起用したものの、0-71で大敗。富士通のどこかに油断があったとしても、仕方がなかった。
過去に来日した米国人QBと比べて、No.1といっても過言ではない能力と実績を持つエバンスは、パナソニック戦とはまったく別人だった。実力の片鱗は第2クオーター半ばから発揮された。自陣9ヤードからのオフェンスで、富士通ディフェンスの圧力に味方が反則を重ね罰退しながらも、クイックリリースと強肩でパスを決め、前進した。
仕上げは、194センチの長身WR、アグードへのTDパス。東京ガスのサイドラインは盛り上がった。その雰囲気はチーム全体に波及、前半最後に富士通が狙ったFGをブロックした。
富士通は、ハーフタイム中にアジャストした。後半最初のオフェンスで高木がTDパスを決め、さらに、その後のディフェンスでは、エバンスにDL、LBが群がってプレッシャーをかけ、CBアルリワン・アディヤミがインターセプト、試合の流れをつかんだかに見えた。
それでもエバンスの神通力は続いた。弾丸のようなパスを繰り出してドライブすると、110キロを優に超えていそうな巨体でエンドゾーンに飛び込んで、再び点差を詰めてきた。
東京ガスの反撃にカウンターパンチとなったのが、DB奥田の「ピック6」だった。さらに、歴戦のK西村のFGが貴重な3点を加えたのが、大きかった。エバンスはその後もTDを奪ったが、そこで力尽きた。
両チームのオフェンスは、トータルヤーデージが東京ガス325、富士通321、ファーストダウンは東京ガス19、富士通13と東京ガスが上回った。エバンスはパスとランで293ヤード3TDを奪った。奥田のリターンTDが無ければ、勝負はまったく分からなかった。
連敗スタートの東京ガスだが、この後対戦するチームにとっては大きな脅威となる。対戦が終わったパナソニックと富士通も安閑とはしてはいられない。東京ガスが残り試合をすべて勝ってプレーオフに勝ち残る可能性がないとは言えない。
オービック、富士通、パナソニックの壁は高く堅固で、「BIG3」による優勝争いが濃厚と見られていたX1スーパーに、大きな波乱が起こるのかもしれない。
「エバンスの事前研究、なかなかできなかった」山本洋HC(今の感想は)
山本:こういうスコアになったが、2試合目を勝てたことは素直に喜びたい。
(2年前は65-0で勝った相手と、こういう結果になった理由は)
オフェンスとしてはパントは2回、それ以外はスコアリングレンジに入っていた。ただ2回FGブロックされたり、あるいはTDまでいけずにFGで終わっているところもあった。そこがこういう結果になった。
ディフェンスは、東京ガスのオフェンスに、しっかりとプレーを出されて、ボールコントロールされた。
(オフェンスの得点は25点)
山本:後半は4回のオフェンス中、FGトライとなったのが2回、そのうち1回はブロックされた。その前のところで、ファーストダウン、セカンドダウンで進めず、サードダウンショートを作れなかった。そこの精度を上げて行かないと、スコアにはつなげられない。
(ディフェンスが、東京ガスオフェンスに押されている部分が、サイドラインでオフェンスに伝播したのか)
山本:そういうことはない。オフェンスは中々ボールが回ってこない中で、自分たちのベストな形でスコアリングレンジにまでボールを運ぶということにフォーカスをしていた。第3クオーターの最初のオフェンスシリーズなどは、そこにしっかりフォーカスできていたと思う。
(エバンスの研究を事前にしたか)
山本:前回のパナソニック戦だけで。あとはネット上の動画を探して見たりはしたが、古い映像ばかりだったので、正直なところ、なかなかきっちり研究というところまではいかなかった。
走らせると、しっかりゲインを取って来る。そこはフィジカルの差が出ている。ディフェンスのタックリングという、技術的な問題もある。他チームの外国人選手や、能力の高い日本人選手と対戦する時と同じだと思う。スキルアップ、研究も含めて今後詰めていきたい。
(最終クオーターになっても接戦が続く展開を予想していたか)
山本:点数の予想はしていない。どんな点差になっても、勝つということだけはしっかりやり切ろうと言っているので、そこはあまり気にしていない。
(第3節が不戦勝なので、次戦のIBM戦まで間が空くが、その1カ月の過ごし方が、エバンスのようなQBと戦ったことで変わるのか)
山本:外国人QB・RBに対してはそれなりの対策は必要。ただ、基本的に、やることのファンダメンタルの部分はそんなに変わらない。プレーヤーとしてのスピードや、カットバックの移動距離が長いということがあるので、そこをどう詰め切っていくのかというのはポイントになる。
(まだまだ課題がいっぱい残った形となったが、1カ月あってよかったのでは)
山本:本当にそうですね。選手もしっかり認識しているので、我々コーチサイドと認識をしっかり合わせながら修正すべきポイントはしっかり修正していきたい。
「ディフェンスのサイン的に、当たりだった」DB奥田凌大(インターセプトリターンTD、相手はどういうプレーだったのか)
奥田:内側のレシーバーの5ヤードアウトというパスプレー。僕は、5ヤードアウトを含むフラットゾーンのカバーだった。ディフェンスのサイン的に、当たりだった。
(それで、レシーバーの前にパッと出た)
奥田:そうですね。事前にサイドラインで準備していたことを、フィールドで出すことができたと思う。
(読み勝ちというところか)
奥田:こっちには投げてこないかなと思っていたので、そこは難しいところだった。外国人QBが見ているところは、それぞれ選手によって違う。
(あのリターンTDが無ければ勝敗はわからなかった)
奥田:それだけ、東京ガスのQBもレシーバー陣も精度が上がっていた。それに対する僕たちの準備が、この結果になった。
(194センチのWRオグードは?)
奥田:何回かマッチアップしたのですが、歩幅が大きいし、前に立つとプレッシャーがある。そこに対して自分が下がらずに、いつも練習でやっているプレーをしっかりできるようにというのが大事になってくる。
(趙翔来主将が、試合後のハドルで「これが今の俺たちの実力。勝ったこと以外は何もいいことはない」と言っていたが、4連覇の最初の年に加入した奥田選手としてはどう思うか)
奥田:4連覇したチームは今のフロンティアーズにはない。それは過去の栄光。今、僕たちのチームは、経験値はあるかもしれないが、別のチーム。相手選手ももちろん変わっている。趙の言葉を選手たちはみんなしっかりとらえて、今年のチームとして日本一を目指している。