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2021-10-24

【ボクシング】スティーブンソンがヘリングにTKO勝ち。名実ともに2階級制覇

スティーブンソン(右)は中間距離での攻防から、着実にヒットを重ねた

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 WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦、チャンピオンのジャメル・へリング(35歳=アメリカ)対同暫定チャンピオン、シャクール・スティーブンソン(24歳=アメリカ)の一戦は23日(日本時間24日)にアメリカ・ジョージア州アトランタのステートファーム・アリーナで行われ、スピードで大きく上回るスティーブンソンが一方的に戦いを支配した後、10回1分30秒、レフェリーストップによるTKO勝ちを収めた。日本の伊藤雅雪(横浜光)からタイトルを手に入れたヘリングは4度目の防衛に失敗。次世代スーパースターとも目されるスティーブンソンは、この勝利で但し書き抜きの2階級制覇を成し遂げた。

新時代到来の呼び水とまではいかなかった?

 ライト級周辺でトップ評価を受けるジャーボンテ・デービス(アメリカ)の地元に乗り込んでのこの興行。テーマにははっきりと『新世代の輝き』が掲げられていた。前座にはあのモハメド・アリの孫、ニコ・アリ・ウォルシュ、イベンダー・ホリフィールドの息子であるエバン・ホリフィールド、さらに期待度120%のティーンエイジャー、ザンダー・ザヤスが登場。メインイベントでハイセンスがこぼれ出るヤングスター、スティーブンソンが、手練れのベテラン、ヘリングを圧倒してくれれば、興行するトップランクが思い描いたとおりのストーリーが結実にもなる。

 そして、試合はスティーブンソンがほぼ自在にコントールしたまま、流血の正規チャンピオンをストップに追い込んだ。だが、これが100点満点の結末というにはいささか物足りなかったのも事実だ。

 なるほど、このサウスポー同士の戦いはまったくのワンサイドだった。身長170センチのスティーブンソンは身長で8センチ、リーチで10センチ劣るのだが、まるでハンディは感じさせない。豊かなスピードをフルに活かした。スウェーバックを軸にする守りから素早く反応し、速いジャブを突き刺しす。さらに左のクロス、右フックと決めていく。得意の右ボディブローを足がかりとしたボディ攻めもほどよく織り交ぜた。逆にまともに当てられたパンチと言えば、初回、ジャブの刺し合で、よけそこねた1発くらいか。あとはヘリングの術のすべてを読み切り、まったく危なげなく戦いを進めていく。
ヘリングの頑張りも、反応のいい対戦相手を追い詰めることはできず
ヘリングの頑張りも、反応のいい対戦相手を追い詰めることはできず

スティーブンソンが一方的に戦いを管理し続けた

 初回中盤以降、あるいは2ラウンド、上下にパンチを打ち分けるスティーブンソンが確実にラウンドを奪い、その後は思うがままに戦っていった。じっくりと自分の距離を守り、わずかなステップインからジャブをヒットすると、ジリジリとプレスをかけていく。4ラウンドにはヘリングの左目上が腫れ始めた。

 深い懐をうまく使い、対戦者をインサイドに呼び込んでは、左アッパー、ストレートで痛めつける。それがヘリングの持ち味だが、スティーブンソンの速いテンポの攻防に追いつけない。反撃を試みようとすると、もうチャレンジャーはそこにはいない。空振りを重ねているうちに、またもシャープなパンチが飛んでくる。5ラウンドには思い切り距離を詰め、ラフな左右でかき回しにかかったが、スティーブンソンは自慢の守りでかわし、ヘリングの思惑が実ることはなかった。

 中盤戦もスティーブンソンの1人舞台。9ラウンドにはヘリングの右目上が切れて、勝負は時間の問題となった。10ラウンド開始早々のドクターチェックでは続行が許されたヘリングだが、勢いを増したスティーブンソンの攻めに無抵抗状態に。再三にわたってロープを背にするヘリングに対し、レフェリーのマーク・ネルソンがストップをかけた。
暫定から正規王座に昇格。次期スーパースター候補は正真正銘の2階級制覇を果たした
暫定から正規王座に昇格。次期スーパースター候補は正真正銘の2階級制覇を果たした

スティーブンソンは成長途上

 これで戦績を17戦全勝(9KO)としたスティーブンソンは「ヘリングは偉大なファイター。今日は自分のほうが強かっただけ。今後は王座統一戦を狙いたい。それにティモシー・ブラッドリー(ESPNの解説者)に感謝したい。ぼくの試合を『退屈』だと言ってくれたおかげで、力を出せたのだと思う」と皮肉含みもいたずらっぽく自分をほめたたえた。ただ、スピード、センス抜群ながらもパワー不足は相変わらず。左のパンチは脇を開けたまま当てに行くだけのケースもままあり、大胆なカウンターパンチを狙うこともない。KOばかりがボクシングの魅力ではないが、ここぞで決める一撃がないと、本物のカリスマは作れないのではないか。そんな大きな課題を抱えつつ、成長途上にあるスーパースター候補というのが、この日のスティーブンソンに対する結論か。

 ヘリングは26戦23勝(11KO)3敗。「シャクールはとてもシャープだった。今はいち早くジムに帰って練習したいと思っている」。年齢的にも限界説がささやかれるなか、敗者は現役続行に意欲的だった。恵まれない家庭環境に育ち、海兵隊員として派遣されたイラクでは人間の生き死にの修羅場にも直面した。プロとしてスタートを切った後も愛娘を亡くす不幸もあった。鳴かず飛ばずのまま迎えたキャリア終盤戦に世界王者に輝いた男は、まだあきらめるつもりはないようだ。

文◎宮崎正博(WOWOW観戦) 写真◎ゲッティイ メージズ

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