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2021-11-07

【ボクシング】カネロ・アルバレス、終盤に強打爆発。スーパーミドル級王座完全統一

豪快な左フック。カネロは持ち前の強力なプレスでだんだんとプラントの陣地を奪っていった

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4団体統一の世界スーパーミドル級王者を決める12回戦、WBA、WBC、WBOチャンピオンのサウル・“カネロ”・アルバレス(アメリカ)とIBF王者ケイレブ・プラント(アメリカ)の対決は6日(日本時間7日)にアメリカ・ネバダ州ラスベガスで行われ、プラントの巧みな試合運びに苦しみながらも、アルバレスが終盤にハードパンチを爆発させ、11ラウンド1分5秒でTKO勝ちを収めた。

 MGMグランドアリーナに詰めかけた満員1万6586人の観客は、なんとも悩ましい時間を共有していたに違いない。大半はメキシコ系のファンで、彼らのアイドルはずっと難しい仕事を強いられていた。プラントが実にうまく戦っていたのだ。そのパンチの大半は軽打でも、アルバレスの攻撃を見切ってリターンで返す右ショート。あるいはボディ、顔面と多彩に打ち込むジャブが冴える。アルバレスの豪打もあったが、大半はブロッキング、あるいはIBF王者のボディワークに急所を捉えることなく、単発のままだった。試合終了後に公表されたジャッジのスコアは98対92、97対93、96対94とそれなりの差をもってアルバレスを有利としていたが、その数字は必ずしもこの試合の全容を現すものではなかった。

 今、世界で最も人気を集め、さらに戦力的にも最盛期にあるアルバレスを前に、プラントは勇敢に戦った。斜に構え、メキシカンが得意とする左フックはブロックでキャッチし、大胆な右クロスはショルダーブロッキングで頭部に届く前に弾き飛ばすか、ボディワークでかわす。どのときも忘れないカウンターアタックで、右ストレート、左ジャブを立て続けに決めて、アルバレスが思わず立ちすくむシーンも何度かあった。
手際のいい知足運びで、桜蘭とも十分に持ち味は発揮した
手際のいい知足運びで、プラントも十分に持ち味は発揮した

 残念なのは、このプラントのパンチにはほとんど威力が感じられなかったことだ。デビュー当初はワンパンチフィニッシャーとして売り出した29歳の白人ファイターだが、キャリア序盤に拳を痛めてからはずっと手数で勝負するやり口で戦ってきている。アルバレスとその陣営はそんなプラントのハンディを見抜いていたのだろう。厳しいプレッシャーをかけ続けていく。最初はよく動いていたプラントも、だんだんと体力を奪われ、中盤戦は接近しての攻防が多くなっていった。
豪打を連発。11ラウンドのフィニッシュシーンは強烈だった
豪打を連発。11ラウンドのフィニッシュシーンは強烈だった

 そして最後はアルバレスのパワーが爆発する。11ラウンドだった。左フックが効いて、上体が落ちたプラントに、小さい右のアッパーカット。視野の外から飛んできたパンチだったから、プラントは耐えきれない。両手、両ヒザからキャンバスに落下した。

 すぐに立ち上がったプラントだったが、ダメージは深かった。カネロは一目散にフィニッシュに取りかかる。足もとの定まらないプラントはそれでも何とか耐えていたが、最後は右をねじ込まれて仰向けにダウン。ここでレフェリーのラッセル・モラがストップをコールした。
「プラントは偉大なファイター。エディ(レイノソ・トレーナー)のゲームプランどおりに戦っていたら、こういう結果になった。今後のことはわからない。まずは休ませてくれ」

 と語ったアルバレスはこれで名実ともにスーパーミドルの覇者になった。60戦57勝(39KO)1敗2分。流れを自分側に引き寄せた強いプレスも強引ではなく、ステップを微妙に左右に踏み分けており、技術的にもただものではない。プラントは22戦21勝(12KO)1敗。

文◎宮崎正博(WOWOW観戦) 写真◎ゲッティ イメージズ

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