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2021-11-09

【全日本大学駅伝】鉄紺の逆襲、箱根路で――ルーキー石田洸介&梅崎蓮が見せた可能性

スーパールーキーの石田は10月の出雲駅伝に続き、全日本大学駅伝でも区間賞を獲得した

石田が出雲に続く区間賞

10月の出雲駅伝で3位に入った東洋大は全日本大学駅伝で10位。8位の中央大に52秒届かず、14年ぶりにシード権を逃した。29回目の伊勢路は苦しい戦いとなったが、4区の石田洸介、5区の梅崎蓮、2人のルーキーの好走が光明となった。

群馬・東農大二高3年時の昨年9月、5000mで当時の高校記録となる13分34秒74をマークした石田が任されたのは4区。9位でタスキを受けると、まず拓殖大を抜き、7位をいく国学院大のエース・藤木宏太(4年)にも4秒差まで迫った。前半は11秒先に走り始めた髙橋勇輝(青学大4年)に差を広げられていたが、最後はスタート時と同じ11秒差で中継。34分08秒で、髙橋と同記録で区間賞を獲得した。

「前に何校か見えていて、抜きたいと思いながらも落ち着いて入りました。後半は国学院大に近づいたのに抜くことができず、結局、1つしか順位を上げられませんでした。区間賞は取れましたが、同タイム。自分としては、もう少し良い走りができたと思います」

細かいアップダウンがあった5~10㎞で思うようにペースが上がり切らなかったといい、満足はしていない。5区で区間賞を取った出雲以降も順調に練習を積み、良い状態で今大会を迎えられたが、「力不足でした」と笑顔はなかった。それでも、2015年のドミニク・ニャイロ(山梨学大、現・NTT西日本)以来、ルーキーイヤーに出雲&全日本のダブル区間賞を達成した。

今季の駅伝は、来年1月2日、3日の箱根駅伝を残すのみ。その箱根は、全区間が20㎞以上の長丁場だ。「今回の12㎞弱くらいの距離(11.8㎞)なら、前半からもっと押していかなければいけなかった」と、石田に浮かれる様子はない。全日本と箱根を「別物」と表現し、箱根までの2カ月は実戦的な練習を取り入れながら、長い距離に対応できるように仕上げていく。

「東洋のエースになるには、まだまだ力が足りません。歴代の先輩方を超えられるような走りをしたい」と石田。東洋大の先輩で、東京五輪10000m代表の相澤晃(旭化成)のような、どんな展開でタスキを受けても流れを引き寄せる走りを目指す。

 梅崎は石田の流れをつなぐ力走

石田から鉄紺のタスキを託された5区の梅崎は、今大会が学生駅伝デビュー戦。同期の石田が出雲で区間賞を取ったことで、負けたくない思いがいっそう強くなったという。「石田に良い流れでつないでもらったので、前のチームをどんどん抜いて行こうと思って走りました」と、国学院大、法政大、明治大を次々に抜いて5位に浮上。11秒前にスタートした青学大の佐藤一世(2年)が序盤から飛ばして順位を上げていたが、梅崎は佐藤の背中を追って走っていたといい、3校を抜くときも視線は前を見つめていた。

2年連続で同区の区間賞を取った佐藤には最終的に28秒差を付けられたものの、石塚陽士(早大)と並び、36分25秒で1年生最上位の区間4位。「同じ1年生の石塚君と同タイムだったので、1秒でも勝ちたかったという思いはあります」と本音を明かしたが、力は出し切った。


石田の活躍に刺激を受けた梅崎。学生三大駅伝デビューとなった全日本大学駅伝では、石田からタスキを受け、5区区間4位と好走した

マラソンの日本記録保持者・鈴木健吾(富士通)と同じ、愛媛・宇和島東高の出身。2年時にインターハイの5000mで決勝に進出、3年時の全国高校駅伝では花の1区で区間11位の実績がある。両レースを共に走った石田と今春からチームメイトになり、互いに刺激し合って成長してきた。

春には大腿骨を疲労骨折して出遅れたが、復帰後は夏合宿で走り込んで自信をつけた。「ロードが得意。きつくなっても崩れない、粘りの走りが持ち味」と話し、これから箱根に向けてトレーニングを積んでいく。

今後は学生三大駅伝で区間賞を目指すが、「将来的には日の丸をつけて走る選手になりたい」と梅崎。伊勢路で目標達成への第一歩を踏み出した。

文/石井安里 写真/中野英聡

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