close

2022-01-11

【ボクシング】石澤開が8回TKOで新王者。無敗・森且貴をコンパクト&パワーで仕留める

距離を詰めながらジャブをヒットする石澤。これでもダメージを蓄積させた

全ての画像を見る
 11日、東京・後楽園ホールで行われた日本ミニマム級王座決定戦10回戦は、1位の石澤開(25歳=M.T)が3位・森且貴(21歳=大橋)を8回2分50秒TKO。12月14日にWBO同級新王者となった谷口将隆(ワタナベ)が返上した王座の後継王者となった。

写真_馬場高志

 8回終盤、それまで耐えに耐え、必死に動いては、ボディブローからの攻めに活路を求めてきた森が、石澤の右を食って後退する。待ってましたとばかりに石澤は一気にギアを上げた。左右の連打から右。これをまともに食った森が“決壊”し、キャンバスに横たわると、セコンドの佐久間史朗トレーナーがタオルを振って“白旗”を上げた。

 パワー対スピード。ひと言で表してしまえばそうなるかもしれない。だが、互いにそれを生かすための準備を周到にしていた。石澤は、強固なガードに加え、インサイドからひたすらにコンパクトなブローを確実にヒットさせる。森は、コツコツと手数を集めて動く。いずれも“脱力”を意識したブローが印象的だった。

 かつては、パワーパンチにこだわって、モーション大きく隙が目立ち、被弾も重ねてきた石澤。パワーレスを補おうと、力んで叩きつけるようなブローを放ち、リズムを失って無駄なスタミナ浪費を重ねてきた森。両者とも、それらのマイナス面を、大舞台で改善してみせた点は、大いに評価したい。

インサイドからの右アッパー。これは石澤の得意パンチにして、この日のキーブローだった
インサイドからの右アッパー。これは石澤の得意パンチにして、この日のキーブローだった

 しかし、打っては動く森を、すり足で無駄なく詰めていった石澤は、中から左右アッパーを力感なく突き上げる。初回から森に鼻血を流させて、無理なくプレスを常にかけていった。
 石澤は、以前のようなド派手なモーションを削いだ。が、しっかりと体軸を安定させて放つブローは、傍からはコンパクトに見えるが、相手の芯を突き通すもの。「コンパクトに確実に当てることを意識した」という石澤のブローは、森に着実にダメージを与えていった。

「6回には(森の)目が虚ろになっていた」(石澤)というが、森も強固な意思を曲げなかった。パワーレスへの意識から、力んで出そうとしていた力を封印し、あくまでも石澤を苛立たせるための細かい連打で。しかし、石澤もそれは織り込み済み。「スピードはあってもリズムが読みやすかった」(石澤)ためしっかりとガード。森もそれを感じて、ガードのサイドを叩いて何とかこじ開けようとし、軽打から左ボディブローの強打と変化を試みた。これで動きを止めかけた石澤だったが、「(森が)前の試合で左ボディブローから試合を作るのはわかっていたから、リターンを狙った」。森のボディブローを防いだ右で、そのままアッパーを返したり、右ストレートを返したり。さらには左ボディブローもリターンする。まるであのローマン・ゴンサレス(ニカラグア)のように、体軸と骨盤を利かせ、腕が後から付いてくるような感覚。腕力でなく、体全体の力を凝縮するからこそ、打ち方はコンパクトでも、威力があるのだろう。

 ともに、自身の修正を重ね、相手の出方を読んで、さらに“上書き”を狙う。そういうせめぎ合いを支え、より効果を発揮したのは、表面を叩く森のブローよりも、体の芯に響かせる石澤のブローだった。

名選手ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)スタイルでベルトを手にした石澤
名選手ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)スタイルでベルトを手にした石澤

「日本チャンピオンの立場にふさわしいボクシングをしていきたい」と決意を誓った新チャンピオンは、2019年9月に行われた日本王座挑戦者決定戦で初黒星を与えられた(8回判定)谷口の後を追う。「谷口選手が世界チャンピオンになったので、リベンジのし甲斐があります」と、最後までクールに語った。11戦10勝(9KO)1敗。
 担架で運び出されてダメージが心配された森だが、試合後のホール外で応援者への挨拶に現れた。この日の石澤には屈してしまったが、成長の跡は見られた。10戦9勝(2KO)1敗。

文_本間 暁
タグ:

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事