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2022-01-18

【NFL】“レジェンド”ロスリスバーガーと若き日のマホームズが出会ったのは5年前だった

チーフスディフェンス陣のラッシュに苦しみながら最後まで戦い抜いたQBロスリスバーガー(左)と、パス404ヤード5TDを決めたQBマホームズ=photo by Getty Images

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AFCワイルドカードプレーオフ
カンザスシティ・チーフス〇42-21●ピッツバーグ・スティーラーズ
(1月16日 カンザスシティ  アローヘッド スタジアム)

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試合最後のプレー、というよりはQBベン・ロスリスバーガー現役最後のプレーは、TEザック・ジェントリーへのショートパスだった。ジェントリーがゴール前でタックルされて、試合が終了。ロスリスバーガーにサイドラインから最初に駆け寄ったのは、チーフスのQBパトリック・マホームズだった。

"I'm gonna get one of these at some point."


"I need one too!"

マホームズは、ロスリスバーガーのジャージを指さして、「あとでいいから、これを欲しいと思っています」

と語りかけ、ロスリスバーガーも「俺も君のジャージーを欲しい」と応じた。

 会話はそれだけで、ほんの数秒の短いものだったが、老レジェンドに対する若き英雄のリスペクトがあふれていた。




 2人が出会ったのは、今から5年前のことだ。2017年4月上旬、テキサス工科大のエースQBとして、ドラフトの有力候補だったマホームズは、いくつかのチーム施設を訪問していた。4月3日、ピッツバーグを訪問し、スティーラーズのチーム施設でいろいろと説明を受けた。

 その時のことを、マホームズはNFL.comにこう話している。

"I was watching film there, for about two hours, and he walked in just to say 'Hi'," 

"There wasn't much to it, but that was the most exciting thing of the trip for me. I look at him, and I try to play with that same toughness. He's going to be a Hall of Famer, he's been to Super Bowls, that's the guy you want to be like. Hopefully I'll get to learn from him one day. Maybe I'll end up competing against him."

「そこ(スティーラーズの球団施設)で2時間ほどフィルムを見ていたら、彼(ロスリスバーガー)が『ハーイ』と言って入ってきたんだ」

「大したことではなかったかもしれない。でも私にとっては、この旅で最もエキサイティングなことだった。」

「彼を見ていると、自分も同じようにタフネスを持ってプレーしようと思う。彼は殿堂入りするだろうし、スーパーボウルにも出場している。私はそういう人になりたいと思っている。望みがかなうなら、私もいつか彼から教えを受けたいと思っている。」

「もしかしたら、将来、彼と対戦することになるかもしれない。」

 マホームズは、この時話したことを、ほぼすべて的中させた。

 この時のマホームズは、決してエリートとは言えなかった。テキサス工科大では2016年にパス5052ヤードを記録し、カレッジフットボールの最上位FBSで全米1位となっていたが、同大は以前からスタッツが跳ね上がるパス多投オフェンスで有名だった。同大出身のQBは「システムQB」と揶揄され、クリフ・キングスベリー(現カーディナルスヘッドコーチ)をはじめ、ドラフト1巡で指名されたQBはいなかった。

 ただ、マホームズ自身は、日本のプロ野球でも投手として活躍した父パットさん譲りの強肩、頑健な体格と優れた運動能力、さらにパスラッシュへの対処能力を評価されて、評価が上がっている時期だった。

 ロスリスバーガーも、今でこそ体重オーバーで動きが鈍くなってしまったが、若い頃は機動力があり、パスラッシュを次々にかわしながらパスを決めるスタイルで、「大きく強くなったエルウエイ」「モバイル能力を持ったブレッドソー」と表現できるQBだった。

 ポケットパサーではなく、動きながらパスを投げる能力で勝負することを目指していたマホームズにとって、ロスリスバーガーは、NFLを意識した時に、自分がなるべきモデルだった。

             ◇

 あれから5年がたち、何もかもが変わった。マホームズはNFLを代表するQBとして、この試合でも面白いように次々にTDパスを決めた。
 
  ロスリスバーガーはパス215ヤード2タッチダウン(TD) 、パスのほとんどは、大量リードされた後に決めたもので、前半はわずか24ヤードに抑え込まれた。

 マホームズは、パス404ヤード5TD。プレーオフでパス400ヤード以上で5TDを決めて勝利した最初のQBとなった。

 プレーオフで、パス400ヤード5TD以上を記録しながら、敗れたQBは過去に1人だけいた。それがロスリスバーガーだった。マホームズと出会った8カ月半後の2017年シーズンのディビジョナルプレーオフ(2018年1月)で、ジャガーズに42-45で敗れたゲームだった。 

 NFLで、25歳になる前にスーパーボウルで勝利したQBは、3人しかいない。トム・ブレイディ、パトリック・マホームズ、そしてベン・ロスリスバーガーだ。マホームズには2人を追う宿命がある。今目前にある最大の目標は、3回目のスーパーボウル出場、そして2回目の勝利だ。それを果たせば、ロスリスバーガーに並ぶことになる。

現役最後の試合に臨む、QBロスリスバーガー=photo by Getty Images

チーフスディフェンス陣のラッシュに苦しみながら最後まで戦い抜いたQBロスリスバーガー=photo by Getty Images

パス404ヤード5TDを決めたQBマホームズ=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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