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2022-03-19

【NFL】テキサンズQBワトソン、ブラウンズへ移籍 ドラフト1巡指名権3つと交換

3つの1巡指名権などと交換でブラウンズに移籍することが決まったQBワトソン=photo by Getty Images

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米プロフットボール・NFLでまたもスターQBの超大型トレードが決まった。かねてチームに対してトレードを要求していたヒューストン・テキサンズのQBデショーンワトソンが、クリーブランド・ブラウンズにトレードで移籍することが決まった。現地3月18日午後(日本時間19日未明)に、テキサンズが球団公式サイトで発表した。交換条件は、テキサンズがワトソンと2024年5巡指名権、ブラウンズが2022、2023、2024年のドラフト1巡指名権と2024年の4、5巡指名権と公表された。

NFL史上最高、全額保証で274億円の5年契約

 ワトソンは3月15日に、ヒューストン市内でブラウンズ側と面談した。そして好感触を得ていたようだ。テキサンズに対しては、現在の契約の中にあるトレード禁止条項を放棄して、ブラウンズに移籍する意思があることを伝えたという。ワトソンはすでに自身のインスタグラムで、ブラウンズのジャージー姿の合成写真を投稿している。

 ブラウンズはワトソンに対して新たな大型契約を用意しており、米スポーツ専門局ESPNによると、5年契約の総額2億3,000万ドル(約274億円)という。この契約は、原則として全額の支払いが保証されており、実際に支払われる金額としてはNFL選手の最高を更新することになった。

 米のメディアは、ブラウンズはカロライナ・パンサーズと同様、ワトソンのトレード先から外れ、ニューオーリンズ・セインツもしくはアトランタ・ファルコンズへの移籍に絞られたと、報道していた。

 ワトソンは、1995年9月生まれの26歳。米の強豪クレムゾン大学で下級生からエースQBとして活躍し、2016年シーズンには、クレムゾン大が、アラバマ大学を破って全米王者になった際の原動力となった。
 2017年のNFLドラフト1巡12位で指名された。その際、テキサンズは指名順を上げるためにブラウンズとトレードしていたのは因縁だ。ワトソンはルーキーイヤーの途中から先発QBに昇格し、2018年から3シーズン連続でプロボウルに出場、2020年シーズンは4823ヤードで、パス獲得ヤード1位に輝いた。実働4シーズンで、パス14539ヤード、104TD、36INTでレーティングは104.5。テキサンズはワトソンに率いられて、2018年、19年と2年連続でプレーオフに進出していた。
3つの1巡指名権などと交換でブラウンズに移籍することが決まったQBワトソン=photo by Getty Images

ワトソン、トレードの経緯

 ワトソンは、2020年1月にテキサンズが新たにニック・カセリオGMを任命した時の経緯に関して球団に不信感を持ち、トレードを要求した。その後3月には、ワトソン個人に対して、マッサージ中などに性的に不適切な行為をされたとして、複数の女性から訴訟が次々に起こされた。トレード問題は暗礁に乗り上げたまま、ワトソンは2021年まったくプレーすることなくシーズンを終えていた。

 ワトソンの不適切な行為は、刑事事件として起訴される可能性もあったが、1週間前の3月11日、テキサス州ハリス郡の大陪審が、ワトソンの一連の事案について、十分な証拠がないと判断し、刑事事件として立件しないことを決定。その後、各チームとのトレード話が急速に具体化していた。

 ただし、ワトソンは22件の民事訴訟にも直面している。現在もNFLの調査を受けており、リーグの個人行動規範に基づく懲戒処分の対象となる可能性がある。

 テキサンズのニック・カセリオGMは「本日未明、デショーン・ワトソンをクリーブランド・ブラウンズへトレードすることに合意した。私たちが今優先しているのは、過去15カ月間に構築した基盤に才能ある選手を加えることであり、今回のトレードはその計画を後押しするものだ」と声明。また、テキサンズのカル・マクネア会長兼CEOは「ニック・カセリオがこの困難な状況を乗り切ったことを大変誇りに思う。彼は忍耐強く、最終的に短期的にも長期的にも我々にとって最良の決断を下した」とコメントした。
2020年最後の公式戦後に、連れだってフィールドを後にするQBワトソンとDEワット。攻守の大黒柱がいなくなった=photo by Getty Images

メイフィールドの行方は?セインツ、パンサーズは?

 ブラウンズは、2018年ドラフトで全体1位指名されたQBベイカー・メイフィールド が、ワトソンとチームの面談を受けて、地元クリーブランドのファンに対して、感謝と別離を予想させるメッセージをSNSで投稿。3月17日には、ブラウンズに自分をトレードするように要求していた。

 ワトソンを放出したテキサンズは、2021年のドラフト3巡で指名したルーキーQBデービス・ミルズが予想外の健闘。パス2664ヤード、成功率66.8%、16TD、10INTで、レーティング88.8は、ルーキーQBとしてはマック・ジョーンズ(ペイトリオッツ)に次ぐ成績だった。そのためもあって、メイフィールドは今回のトレードには含まれなかった。

 ワトソン獲得を逃したセインツは、FAのQBジェイミース・ウィンストンとの再契約を検討するとみられる。2020年で、チームの柱だったQBドリュー・ブリーズが引退したセインツは、昨シーズン、元バッカニアーズ全体1位指名のウィンストンを新たなエースとして上々の滑り出しを見せたが、ウィンストンが膝に重傷を負ってシーズンアウトとなった。その後テイサム・ヒル、トレバー・シーミアン、イアン・ブックと3人のQBを使ってなんとか9勝8敗としたが、プレーオフ進出は逃していた。

 セインツは、サプリメンタル(補足)ドラフトを除くと、NFLで最も長い期間、QBをドラフト1巡で指名していない。1971年1巡全体2位で指名したアーチー・マニング(ペイトン、イーライの父)以来、50年間他のポジションを指名してきた。

 1年以上前からワトソンのトレード交渉に参加していたパンサーズは、元ジェッツのドラフト1巡指名、サム・ダーノルドとP.J.ウォーカーが現在手元にいるQB。FAでQBを探しつつ、4月のドラフトでQBを1巡指名する可能性もありそうだ。
ワトソンの移籍で、ブラウンズでは居場所がなくなったQBメイフィールド=photo by Getty Images

【小座野容斉】

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