22日、東京・後楽園ホールで行われたスーパーバンタム級10回戦は、大注目の武居由樹(25歳=大橋)が、日本同級16位の河村真吾(31歳=堺春木)を2回1分22秒TKO。プロボクシングデビュー以来4連続KO勝利を収めた。文_本間 暁(武居vs.河村)、宮崎正博(佐々木尽vs.マーカス・スミス)
写真_菊田義久
これまで2度の東洋太平洋王座挑戦はいずれも敗れたものの、しぶとく食い下がるボクシングに定評のあったサウスポー河村。しかし、そんなベテランも武居にかかってはなす術がなかった。
これまで3連続初回KOを重ねてきた武居だったが、立ち上がりからリングを大きく使い、課題としている右リードを多用。左ストレート、左右アッパーカット、左右フックと、種々を上下左右に散らして丁寧にスタート。「長いラウンドを、何なら判定でもいいと思っていた」と、自身は初回KO勝ちにこだわりを持っていなかった。
それよりも、八重樫東トレーナーと課題にしてきたのは、バリエーションの豊富さを本番のリングで出すこと。初めて迎えたインターバルでは、「ジャブをビシッと打とう」ということを確認したのだという。
右も左も多彩さを披露した武居(右)。大橋秀行会長も「4試合目にして初めてボクシングをした」とその成長ぶりに目を細めた 河村の堅いガード上を武居は左右フックで叩きつける。インパクトの瞬間に最大限の力が集まるようで、河村の左目下はその衝撃で早くもうっすらと赤みを帯びていた。河村も、武居のパンチの強烈な威力をすでに感じ取っていただろう。そして会場に詰めかけた観客も、武居が攻撃を仕掛ける毎にどよめく。それほど迫力が伝播するものだった。
2回、なおもパンチを散らしていく武居に、河村が右リードを放つ。それをヘッドスリップでかわしざま、武居はキャンバスを蹴って跳んだ。と同時に、得意の右フックを河村の顔面に叩き込む。すると、河村は立ったまま気絶した状態となり、スローモーションのようにゆっくりと、背中からキャンバスに倒れ込んだ。当然、レフェリーはノーカウントで試合を止めた。
「(KOパンチは)小さいころからやっていたパンチ。でも、右フック以外で倒したかった」と武居。「その右フックを当てやすくするために、ジャブやワンツーなど、ストレート系を多く使わせたかった」と八重樫トレーナー。まるで全盛期のナジーム・ハメド(イギリス)を彷彿させるような身体能力を披露してみせたが、武居にとっては格闘技経験から培った感覚的かつ、反応が生んだブローだったのだろう。
強打のスミスに何もさせず、豪打で追い込んだ佐々木 ウェルター級8回戦では強打の佐々木尽(20歳=八王子中屋)が、マーカス・スミス(36歳=平仲ボクシングスクール)を5回2分49秒TKOで破っている。
佐々木は3回からいきなりペースを上げる。2年4ヵ月ぶりのリングながら、7勝7KO(1敗1分)と強打のサウスポー、スミスを追い立てていった。叩きつける左フック、ねじ込む右パンチ。まずはボディ攻撃で効果を上げていく。スミスの動きが鈍りをみせたところで、今度は顔面に豪打のシャワー。5回、左フックでぐらつく対戦者を追い、佐々木は左右をまとめ打ち。足もともおぼろなスミスにレフェリーがストップをかけた。
昨年10月、スーパーライト級のWBOアジアパシフィック、日本タイトルの王座決定戦でオーバーウェイトを犯した上にTKO負けしている佐々木は再起戦。「大きなミスをしてしまったが、周囲がボクシングに居場所を与えてくれました」と前戦での不首尾を詫びてから「世界のウェルター級は日本人には無理と言われますが、いずれは挑んでいきたい」とリング上で宣言した。その圧倒的なパンチの迫力を見れば、どうしても期待したくなってくる。13戦12勝(11KO)1敗。