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2022-06-08

【陸上】日本選手権展望・女子中長距離/守りに入らない田中希実は3種目で代表を狙い毎日出走。最終日は800mと5000mのダブル決勝

1500mと5000mでは3位以内に入れば代表内定の田中が800mでも代表を狙っていく

オレゴン世界選手権代表選考を兼ねた第106回日本選手権(6月9日~12日/ヤンマースタジアム長居)。800m、1500m、5000mでの代表入りを目指す田中希実(豊田自動織機)は4日間フル出走。オレゴン世界選手権参加標準突破済みで3位以内に入れば内定の1500mと5000m、ワールドランキング(ポイント制)での出場を目指す800m、それぞれどう戦うのか。

オリンピック8位の1500mは優位

昨年に続いて田中希実が中長距離3種目に出場する。初日(9日)に1500mの予選、2日目(10日)に1500m決勝、3日目(11日)に800m予選、4日目(12日)に800m決勝&5000m決勝というスケジュール。昨年は800m3位、1500m優勝、5000m3位の成績だった。

1500mと5000mは世界選手権参加標準記録を突破済みなので、3位以内に入れば代表に内定するが、800mは標準記録(1分59秒50)突破までは難しい。それでもワールドランキングでの出場が望める順位(出場枠48人で1国3人カウントの世界ランキングが6月6日時点で57位)につけている。田中と父親でもある田中健智コーチは「守りに入って800mをやめたら5000mもダメになる」と話しているという。今年は3種目の代表入りを目指した戦いに挑む。

昨年と大きな違いが2つある。1つは5000mの東京五輪代表権を前回はすでに獲得していたのに対し、今年は標準記録こそ突破しているが代表にはまだ決まっていないこと。もう1つは800m決勝と5000m決勝の間隔が、前回の30分から70分に広がったこと。精神的には昨年の方が余裕を持って臨めたが、今年は精神的には厳しくなるものの、肉体的には最終日の余裕度が大きくなる。

最初に登場する1500mの今季は、東京オリンピックで8位に入賞し、自己記録の3分59秒19を出した昨年と比べるといまひとつ。5月のダイヤモンドリーグ・ユージーン大会では4分07秒43の15位。田中コーチによれば最下位という結果に、本人はショックを受けていたという。

だが1200m通過は3分15秒で、4分02秒33(その時点の日本新)で走った東京五輪予選と同じハイペースだった。昨年の5月は4分9秒台だったことと比べても悪くない。

後半の2種目を考えて多少温存したとしても、田中のラストの強さを考えれば優勝の確率は高い。田中とともに東京五輪代表だった卜部蘭(積水化学)、チームメイトの後藤夢(豊田自動織機)、関東インカレ優勝の樫原沙紀(筑波大3年)らが田中にどこまで迫るか、というレースになりそうだ。


田中と共に東京オリンピック1500mに出場の卜部。昨年の日本選手権は800mで田中に勝利

800mは順位優先でタイムもできるだけ上げる

800mは世界ランキングのポイントを上げるには、予選でタイムを狙うことになる。決勝は順位ポイントが高くなるので、順位を優先するなかで少しでもタイムを上げる走り方になりそうだ。

この種目は前回優勝の卜部が一番の強敵か。卜部、田中、塩見綾乃(岩谷産業)、川田朱夏(ニコニコのり)の4人が自己記録2分2秒台で力が伯仲している。だが今季は田中より400mのスピードがある塩見、川田の調子が上がらず、静岡国際でも200m通過では20m近く離されていた田中が優勝した。その2人の調子が上がらないと、卜部と田中の1500m東京五輪代表コンビが1、2位を占めることになる。

5000mは田中、廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)、萩谷楓(エディオン)に、木村友香(資生堂)と佐藤早也伽(積水化学)も加えた5人が世界選手権標準記録を破っている。記録よりも3位以内に入ることが優先されるレースになる。

田中の回復度は昨年よりも上がるが、それでもかなりの疲労のなかでのレースになる。田中はペースと自身の状態を見て優勝争いに加わるか、3位争いに集中するか、判断を迫られる。トラック最終種目まで、今年も田中の挑戦から目が離せない日本選手権になる。


800mで田中のライバルとなる塩見。400mのスピードでは田中を上回る

文/寺田辰朗 写真/小山真司、中野英聡

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