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2022-06-11

【陸上】「100mをやめておけばというのは違う」3日間で6レース、日本選手権で100mH日本記録保持者の青木益未が100mにも挑んだ理由

3日間で6レースに臨んだ青木

オレゴン世界選手権代表選考会を兼ねた第106回日本選手権(6月9日~12日/大阪・ヤンマースタジアム長居)。東京五輪女子100mH代表で日本記録保持者の青木益未(七十七銀行)は100mHと100mの“二刀流”に挑戦した。100mでは11秒59(+0.6)で4位入賞。100mHは予選で12秒94(+0.3)と大会記録を塗り替えたが、決勝は13秒28(+0.8)で、初優勝の福部真子(日本建設工業)に0秒18差で及ばなかった。

世界との“距離”を縮めるための選択

3日間で6レースをこなすタフなスケジュール。6レース目の100mH決勝を走り終えた青木は「ハードルでタイムが悪くても勝てれば最高の形で終われるなと思っていたけれど。だから100mをやめておけば優勝できたかと言われると、それも違うと思う。力不足だなって感じですね」と悔しさをのぞかせた。ハードな挑戦だったが、世界との“距離”を縮めるための選択に後悔はなかったようだ。

中高生時代はスプリンターとして活躍した青木。中学時代にジュニアオリンピックの100mで優勝し、創志学園高(岡山)進学後は1年生にしてインターハイを制した。その後はハードルに転向したが、東京五輪を経て「世界の選手はベースのスプリント力が高く、技術だけで追いつける問題ではない」と気付き、本職であるハードルの延長線上で、今季は100mのレースにも臨んでいた。

「海外では(100mHの)トップオブトップでなくとも(100mを)11秒4台で走っている選手が多くいるのでスプリントだけでも同じ位置に並びたい」

100mで「11秒4台」を目標に臨んだ今大会。大会初日の予選で11秒54(+0.8)の自己新をマークすると、準決勝では11秒51(+0.6)とさらに記録を更新した。トップスプリンターがそろうなか、2日目の決勝でも11秒59(+0.6)で4位に入り、11秒5台を3本そろえる地力の高さを示した。

この日は100mH予選、準決勝にも出場し、準決勝の約40分後に100m決勝に臨むというハードスケジュール。「期待しないでください」と語っていた100mHでは、予選で12秒94(+0.3)と大会記録を塗り替え、準決勝でも13秒03(-0.1)をマークして決勝に進出した。

「ハードリングがどうこうというよりシンプルにインターバルがすごく走れていました。予選と準決勝のように力みすぎずに自分のテンポをキープできたらいい」と迎えた3日目の決勝。序盤から福部にリードを奪われ、ハードルを越えるごとにその差は広がっていった。

「もう全然ダメですね。バランスを崩して、ハードルにぶつけて、スムーズに走れませんでした。予選の12秒台と準決勝の13秒0台は自信になると思っていたけれど、コンディションが悪いなかでも勝たないとあまり意味を持たないというのは残念でした」

本職のタイトルこそ逃したが、スプリントのアベレージが高まり、ハードルの予選では「日本記録を出したときのようにどんどんハードルが来て、それにしっかり対応するという形で勝手に進む感覚があった」と手応えも得ている。世界選手権の参加標準記録(12秒84)まで、あと0秒02。有効期間内の今月26日に開催される布勢スプリント(鳥取)に出場し、記録突破を狙うつもりだ。

「布勢には寺田さん(明日香、ジャパンクリエイト)も出場すると聞いています。コンディションが整えばいい勝負ができていい記録も狙えると思うので前向きに考えていきたいです」


100mH決勝では福部(右)に敗れたが、2種目への挑戦で手応えも得た
100mH決勝では福部(右)に敗れたが、2種目への挑戦で手応えも得た

文/荘司結有 写真/中野英聡、毛受亮介

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