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2022-06-11

【アメフト】CFLが開幕 日本人4選手の現在の状況は? ユニークなルール改正も紹介

プレシーズンゲーム初戦では出場機会があったアルゴノーツ佐藤だが、この後、1度カットされた=phoyo by Getty Images

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カナダのプロフットボール・CFL(カナディアンフットボールリーグ)は、現地6月9日、(日本時間6月10日)、2022年シーズンが開幕した。カルガリー・スタンピーダーズが、ホームのマクマーンスタジアムに、モントリオール・アルエッツを迎えた開幕戦は、スタンピーダーズが30-27で勝利した。アルエッツのRB李卓は出場は無かった。
 現地10日(日本時間11日)には、2シーズン連続グレイカップ優勝のウィニペグ・ブルーボマーズが本拠地でオタワ・レッドブラックスと対戦し、ブルーボマーズが、終了間際の劇的なフィールドゴール(FG)を決めて、19-17で逆転勝ちした。ブルーボマーズのLB丸尾玲寿里が試合に出場したが、スタッツは残っていない。
 グローバルプレーヤー枠で、日本から参加している4選手の動向や、今季のCFLの話題を探った。

李卓が所属するアルエッツのエースQBアダムス。大学時代には、現ラムズのWRクーパー・カップとホットラインを形成していた=phoyo by Getty Images

エースRB負傷 李卓にもチャンスか

 CFLは隣国アメリカのカレッジフットボール経験者を主戦力としている。そのため、外国人選手枠は、米国人選手向けのインターナショナルプレーヤー枠と、日本やメキシコ、欧州などに向けたグローバルプレーヤー枠の2種類がある。
 今季、日本人選手はグローバルドラフトでは指名が無かったため、昨年指名された中から今季も契約が継続している4選手が、活動している。

 アルエッツのRB李卓は、プレシーズンゲームでは出番もあったが開幕前にプラクティスロースターに落とされた。アルエッツには、2シーズン連続1000ヤード超えで、CFLでもトップクラスの実力を持つ大型RBウィリアム・スタンバック、若手の成長株ジェシュラン・アントウィーの2人がアクティブロースターに登録された。
 そのアントウィーが、開幕戦では70ヤードのビッグゲインを含むラン98ヤードと活躍。一方で、主力のスタンバックが後半に負傷した。程度は不明だが、自力で歩けずにカートで搬出されたことから、重傷なのかもしれない。第2週以降のアルエッツがRB陣をどのように構築するのかは注目したい。李がアクティブロースターに昇格する可能性もある。

王者ボマーズに所属する丸尾と町野は

 ブルーボマーズには、LB丸尾玲寿里とOL町野友哉が在籍している。丸尾は開幕からアクティブロースターに入り、ゲームにも出場したがスタッツは残っていない。丸尾は、昨年のグローバルドラフト1巡全体4位で指名され、初年度は7試合に出場し、スペシャルチームで6タックルを記録した。また、2022年春には日本のXリーグのパナソニック・インパルスに移籍した。日本人4選手の中では最も出場機会が多い。

 町野は開幕をプラクティスロースター登録で迎えた。196センチ142キロの体格は、チーム内全ポジションを通じても、身長・体重共に上位5番目までに入る。
 ブルーボマーズは、アクティブロースターのOLは8人しかおらず、しかも4人は30代と年齢が高い。町野が、シーズン後半に向けてアクティブロースター昇格、そして試合出場の可能性は十分に考えられる。

アルゴノーツ佐藤は難しい立場

 トロント・アルゴノーツのK(キッカー)佐藤敏基は、4人の中で、最も難しい立場に置かれている。CFLのプレシーズンゲームは2試合だが、1試合目に出場した直後に、いったんはカットされた。理由は、はっきりしている。有力なライバルが現れたのだ。

 正Kのボリス・ビーディーはCFLでも有数の実績と実力を持ち、負傷でもない限りその座は揺るがない。ただ、ビーディーは、KとP(パンター)を兼任していたため、ビーディーをPに専念させる話が一部であった。その場合、Kは佐藤ということになるはずだった。

 今春、アルゴノーツの補強は、反対の方向に動いた。4月のグローバルドラフト1巡で、オーストラリア人のPジョン・ハガティーを指名したのだ。ハガティーは、196センチ、103キロの大型選手で図抜けた脚力を持つ。カレッジフットボールのFBS、ウェスタンケンタッキー大で3シーズンで39試合に出場、パントの平均距離は48.7ヤード、50ヤード以上のパントを53回も記録したという実績の持ち主だった。所属するカンファレンスUSAでファーストチームにも選出されていた。

 ハガティーはNFLドラフトで指名があってもおかしくない実力の持ち主だったが、今年のドラフト候補は優秀なPが多かったため指名がなく、アルゴノーツに合流した。そしてプレシーズン2試合の結果、アクティブロースターに昇格している。
 アルゴノーツは、ハガティーをP、ビーディーをKにそれぞれ専念させた。
 NFLのサマーキャンプなどでPが故障したチームが出てくれば、ハガティーが引き抜かれる可能性がある。その場合、ビーディーをPに動かす選択肢もある。それも踏まえて、アルゴノーツは佐藤と再契約しプラクティスロースターに加えている。

 今季から同時に2人のQBがセット可能に

 今季、CFLは、ユニークなルール改正がいくつかある。
 よりクリエイティブなプレーコールを可能にするため、オフェンスが同時に2人のQBをセットさせることができるようになった。これまでいなかったカナダ人QBが少しづつ増え始めたのもこうした状況と裏表の関係にありそうだ。。

 ハッシュマーク(フィールドの中央に縦方向に2本引かれた破線)を17ヤードから9ヤードの間隔に狭めた。オフェンスのボールが置かれる位置はハッシュの上からなので、オフェンスが常に中央近くからとなる。またKにとっては朗報で、フィールドゴール(FG)の際には、ゴールに対して角度が垂直に近くなるため、精度が向上し、決めやすくなる。

 新たな審判として「コミュニケーション・コーディネーター」が加わり、各チームのサイドラインに配置されることになった。ヘッドコーチ(HC)とフィールド・オフィシャルの間の迅速なコミュニケーションを可能にするためだという。

 また、レビューを担当するコマンドセンターが、コーチのチャレンジやフィールド・オフィシャルの協議を必要とせずに、レビューできるプレーの種類を拡大した。ボールポゼッションの判定、アウトオブバウンズか、否かの判定、フォーメーションの不正や、無資格レシーバーのダウンフィールド侵入などは、フィールドからの連絡がなくともレビューができるという。
  
             ◇

 CFLは、9チームが10月末まで21週間に渡ってレギュラーシーズン18試合を戦う。11月からはプレーオフとなり、王座決定戦「第109回グレイカップ」はは11月20日に開催される予定だ。
CFLの優勝トロフィー「グレイカップ」=phoyo by Getty Images

【小座野容斉】

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