全世界待望の“モンスター”再到来だ! WBAスーパー・IBF世界バンタム級チャンピオン井上尚弥(27歳=大橋)のラスベガス・デビュー戦がついに決定した。9日、所属する大橋ジムでリモート会見が開かれ、10月31日(日本時間11月1日)、MGMグランド・コンベンションセンターでWBA3位・IBF4位のジェイソン・マロニー(29歳=オーストラリア)の挑戦を受けることが発表された。
上写真=基礎練習を積み重ねる井上
予定されていたWBO同級王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)との3団体統一戦からは変更となった。期日がなかなか決定しない状況に、カシメロ側がしびれを切らしたかたちで、今月26日にアメリカ・オーランドで防衛戦を決定。両者の対決は、とりあえず「延期という認識」(大橋秀行会長)。井上尚弥も「流れたものはしかたがない。お互い勝ち上がって行けばいずれ……」と、すでに気持ちは切り替えている。それよりも、試合ができる喜びにあふれ、「ずっと試合モードでいたので本当に楽しみです」と笑顔をたたえた。
挑戦者マロニーは、トップ8が集まったWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)にも参加していた選手で、元WBA世界スーパーフライ級王者・河野公平を自国に呼んで6回TKOに下したこともある(河野はマロニー戦がラストファイトとなった)。井上が2回で仕留めたエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)が、WBSS初戦で拳を交えており、1-2のスプリット判定で敗れたものの、無敗だったロドリゲスを大いに苦しめたもの。この試合を直に会場で観戦した井上は、「タフでスタミナもあって、技術の高い選手。カシメロより総合力も高く、穴のない選手。突破口をどう切り開くか。より気を引き締めないと」と、その印象を語る。
試合はいまのところ無観客で行われる予定で、井上は「前回の(ノニト)ドネア戦で大観衆の後押しを受けた。仮にピンチになったときの精神力が重要。リングに立ったときにどう感じるか。集中力が大切になってきます」と、初めての経験に想いをめぐらせ、“無観客対策”として、イメージトレーニングに取り組むという。ジムワークの際に音楽をかけない“無音状態”をつくっているのもそのひとつだ。
ドネアとのWBSS決勝からおよそ1年。この試合で右目眼窩底骨折、右まぶたのカットに見舞われ、「正直、4月に試合があったら、少し不安だったけれど、いまはもう完全に回復して万全の状態ですから」と、この間隔をプラスに捉えている。かつて右拳負傷で築いたブランク時は「練習ができなかった」が、今回は順調にトレーニングを積めている。そこもポジティブに考えられる要素のひとつだ。
「プロデビューから8年。ゴールまであと8年と考えると折り返し。第2章のスタートです」
憧れの聖地ラスベガスから、新たな物語が始まる。
文_本間 暁
写真_本間 暁、ゲッティイメージズ
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