close

2022-08-14

【ボクシング】誘い込んで左アッパー一撃! 力石政法が頭脳プレーで初防衛

またもや頭脳的戦い方を披露した力石(写真は5月)

全ての画像を見る
 14日、大阪府・エディオンアリーナ大阪第1競技場で行われたOPBF東洋太平洋スーパーフェザータイトルマッチ12回戦は、チャンピオンの力石政法(28歳=緑)が、挑戦者13位のトムジュン・マングバット(24歳=フィリピン)を4回2分46秒TKOで下し、5月に王座決定戦で手にしたベルトの初防衛に成功した。

 前座試合で、青コーナー側の外国人選手が立て続けに痛烈なKO勝利を遂げていた。ボクシング界では古くから「同じコーナーの勝利、KOは続く」と“言い伝え”られており、案外、気にする選手や関係者は多い。実際、そういう日を何度も見てきている。15勝中、実に12もKO勝ちを収めてきた(3敗1分)フィリピンの俊英は、やる気満々。しかも、無闇にスイングするような荒くれものでなく、サウスポーの力石に対し、左ジャブ、右ストレートをスムーズにボディに刺してくる、技の持ち主でもあった。会場に、何となく不穏な空気が流れているように感じた。2回には、プレスを強めながら力石の左に対し、右アッパーをボディに合わせる。力石も、顔には出さなかったものの、「一筋縄ではいかない」相手と認識したはずだ。

 しかし、そこからの対応力が素晴らしい。左へ左へとじりじりずれていくステップを使いながら、多彩な角度から放つ右ジャブ、マングバットが圧力をかけてくれば右フックを引っ掛けてバランスを崩させる。そこから回り込んで左ストレート、左右アッパー。無理に押し戻そうとするのでなく、マングバットの前進、突進を楽しんでいるかのようだった。

 懐が深く、距離も遠い力石を、マングバットは強引に捉えようとした。大きく強い踏み込みから右ストレートを上下に飛ばす。しかし届かない。王者のスピードが優に勝る上、届きそうで届かない距離をキープすることにも長けている。だからマングバットは余計に、そのパターンにこだわった。それが力石が“はめ込んだ罠”だった。

 4回、入ってくるマングバットを、またもや右フックであしらうとサイドへターン。マングバットもここを狙っていた。右ストレートでボディに追撃。しかし、力石は狙いすましていた。右フックから左アッパー。これがまともにアゴに炸裂すると、挑戦者は背中からキャンバスに落下。頭も打ってしまい、レフェリーは即座にストップしたのだった。

 相手の力を利用する頭脳プレー。これぞ力石の真骨頂だ。心配なのはただひとつ、適正階級がスーパーフェザーかどうかという点。そこの判断さえ間違わなければ、さらに上を期待できる能力の持ち主だ。
 初防衛に成功した力石の戦績は13戦12勝(7KO)1敗。

血沸き肉躍る壮絶な戦いとなった福永vs.山下

まさに“決闘”となった元全日本新人王対決、福永(左)と山下(写真はそれぞれ過去の試合より)

まさに“決闘”となった元全日本新人王対決、福永(左)と山下(写真はそれぞれ過去の試合より)

 前座で行われた56.5kg(スーパーバンタム級+800g、フェザー級-600g)契約8回戦は、近年稀に見る壮絶なファイトとなった。コロナ禍で声出し応援が禁じられているが、世が世なら大歓声、大熱狂を呼んだ試合となったろう。
 先制したのは、2019年7月以来の試合となった元日本ランカーの山下賢哉(26歳=JB SPORTS)だった。絶妙な距離をキープした山下は、フリッカージャブ、左右アッパーで日本スーパーバンタム級15位の福永宇宙(ふくなが・そら、24歳=黒潮)をコントロール。福永は早々に右目周辺を腫らし、不安を抱えることになる。
 そして3回、なおもジャブをヒットさせた山下は、ショート連打から右で福永に尻もちを着かせたのだ。
「これまでのキャリアで初めてのダウン」だった福永を、山下は一気に攻め立てる。ロープに詰まりながら、福永は必死にこれを回避したものの、続く4回も山下の猛烈な連打は続いた。
 が、ここで福永は左フックを決めてみせる。すると、今度は山下の体が大きく揺らぐ。山下は左目上をカットし流血。ここからが壮絶な戦いの始まりとなる。
 福永が右のトリプルを決めて山下をグラつかせれば、山下は左フックの相打ちに優る。5回にはふたたびジャブボクシングで福永の腫れを狙う。互いにボディブローを効かせ合い、右を打てば右を返し、左フックには左。しかも、ただの殴り合いではなく、カウンターを狙い、合わせ合うという“決闘”。ともに倒れそうで倒れない(どちらかが倒れていれば、そこで終わったろう)展開が最後の最後まで続いたのだった。
 4回以降の展開を見れば、8回終了のゴングが鳴らされるとは到底思えなかった。しかし、ふたりは尋常ならざる勝利への執念を見せた。76対75、76対75、77対74と判定は福永が握ったが、ボクシングという競技の真髄を見せてくれた想いが勝る。第三者にとっては、敗者が存在しない戦いだった。
 福永の戦績は11戦11勝(5KO)。山下の戦績は20戦14勝(11KO)6敗。

文_本間 暁(ABEMA視聴)

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事