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2022-08-19

【陸上】恩師に届けた2つの金メダル。大野聖登がケガを乗り越えインターハイ男子中距離二冠

800m、1500mで優勝を果たし、二冠を獲得した大野(写真/中野英聡)

8月3日から7日までの5日間、徳島県鳴門市の大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムで行われた全国高校総体(インターハイ)陸上競技。暑い日が続くなか、選手たちのハイレベルなパフォーマンスが見られた。
男子中距離では、大野聖登(秋田工高3年・秋田)が800mを1分51秒14、1500mを3分44秒93で制し二冠を獲得。昨年から言葉にし続けてきた目標を達成した。

 全力で駆け抜けた全5レース「駅伝では3位を」

「最後まであきらめなくて本当に良かったです」

インターハイでのすべてのレースを終えた6日。800mの決勝のレースのあと大野は呼吸を整えながら笑顔を見せた。そこには800mと1500mでの二冠獲得まで、この1年のすべての想いが詰まっていた。

昨年の福井インターハイ。大野は、史上初の1分48秒台決着となるハイレベルなレースが展開された800mで高2歴代7位の1分50秒42をマークし4位、3人が高校歴代トップ10入りを果たした1500mでも高2歴代3位で5位(共に歴代順位は当時)に入った。

12月に行われた全国高校駅伝では、6区で6つ順位を上げ、区間賞を獲得。チームとしては入賞できなかったものの、あと一歩となる9位に大きく貢献し、高校ラストシーズンに向けて自信をつけた。

福井インターハイ、全国高校駅伝のレース後に口にした3年目の目標は「800mと1500mでインターハイ二冠」。2年目の実績を受け、“追う立場”から“追われる立場”になったという自覚が芽生え、冬期練習では、「常に後ろには誰かいる」と自分自身にプレッシャーをかけ、取り組んできたという。

迎えた2022年のトラックシーズン。インターハイ路線もスタートし、ここから、というときに大野はアクシデントに襲われる。シンスプリントが悪化し、5月初旬にスネを疲労骨折してしまったのだ。

徳島で行われる全国高校総体へは、5月末に行われる県大会、6月中旬に行われるブロック大会を突破しないと出場はできない。県大会まであと数週間のところでの疲労骨折のダメージは大きく、将来を見据え一度はインターハイ路線をあきらめる選択肢もあった。

それでも、2年時から掲げてきた二冠という目標、インターハイ出場をあきらめきれなかった大野は、顧問の髙橋正仁先生とも相談の上、脚への負担を減らし、心肺機能は鍛えられるバイクを使用して練習を続行。県大会ではなんとか1位通過を果たした。6月の東北大会までも走り込みはできず、不安の残るなかレースに出場。1500mは前半から攻めの姿勢を見せるも走り込み不足もあり、スパート勝負に敗れて2位に。それでも3日目に行われた800mでは自己記録を更新して1位となった。

「インターハイ二冠」の目標達成のため、“東北二冠”も狙っていた大野は1500mについて、「去年と同じ、ラスト勝負で負けてしまってダサい。ここまで支えてくれた親にも監督にも申し訳ない」と反省を口にしていたが、その一方で「しっかりと休んでインターハイ二冠に向けて勝ちにこだわっていきたい」と気持ちはすぐ全国に切り替えていた。

7月には、脚の痛みも落ち着き、負荷の高い練習もこなせていたと大野。1500mを中心にした「持久系の練習」をやってきたそうだが、流しで持ち味のトップスピードを維持してきた。秋以降の駅伝シーズン、また大学進学後は長距離をやりたいと話す大野にとって、800mはこのインターハイがラストレース。1500mも今季ラストレースがこの大会だった。

「二冠を目標にやってきてどうしても勝たせてやりたかった」という髙橋先生にしっかりと2つの金メダルを届けた大野。

ここからは全国高校駅伝に向けての練習をしていくという。今年は「昨年の佐藤圭汰さん(洛南高、現・駒大1年)のような留学生にも負けない走りをしたい」と3区に意欲を示しており、「“お前たちの代に懸ける”と言ってくれた髙橋先生にうれし泣きをしてもらいたい」と話す大野。目標としている3位入賞に向け、スタートを切っている。

「父のよう」と慕う髙橋先生(左)と笑顔で肩を並べる大野(写真/椛本結城)
「父のよう」と慕う髙橋先生(左)と笑顔で肩を並べる大野(写真/椛本結城)

文/常盤真葵 写真/椛本結城、中野英聡

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