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2022-09-13

【相撲編集部が選ぶ秋場所3日目の一番】肩透かしだけじゃない! 翠富士が初顔の正代を堂々寄り切り

理想的な取り口で大関正代を破った翠富士。上位陣にとっては対応の難しい相手がまた一人生まれた

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翠富士(寄り切り)正代

「(大関が)3人いるので、1人は勝ちたいと思っていました」
 
初日からの“対大関3連戦”の3戦目で、翠富士が正代から白星を挙げた。
 
先場所西11枚目で10勝、一気に10枚番付を上げ、今場所が幕内上位初挑戦の翠富士。正代とも初顔合わせだったが、“正代攻略にはこれ”という理想的な取り口だった。
 
立ち合い、両ハズの形で相手の胸に頭から当たると、ハズには入れなかったが相手の左を右でおっつけて攻め込んだ。押し返してくるところを右に回って突き落とし、いったん離れたが、左の突きで起こして右から左とモロ差し。左を巻き替えてくるところを右からの上手出し投げで崩し、頭をつけながら最後は右を引きつけ、左ハズで寄り切った。
 
聞けば、安治川親方(元関脇安美錦)に「霧馬山関みたいな感じで行けば勝てる」という言葉をもらっていたとか。確かに、立ち合いの頭の角度と右手の形は2日目の霧馬山とよく似ていた。胸を出すような形になることが多い正代には、小兵力士は相手の胸に頭をつけ、相手から廻しを遠くしながら動き回る作戦が一番、ということだろう。研究の成果を感じさせる内容となった。

「(小兵で)何してくるか分からなかったので後手に回った」と正代。肩透かしが看板となっている翠富士だが、肩透かしを見せずとも、さまざまな技を先手先手で繰り出し、最後は大関を堂々寄り切ったこの日の取り口は見事。相手の胸に角度よく頭をつけ、出し投げで揺さぶって、最後にハズで押す姿には、少し古いが、元関脇鷲羽山の相撲を思い出した。上位陣にとってまた対応の悩ましい力士が一人誕生したことは間違いないだろう。
 
この日は、三役でただ一人連勝していた御嶽海が受けに回って明生に黒星。連日、このコラムで持ち上げた力士が翌日「即コケ」になってしまって申し訳ないが、それだけ相撲は単純なものではないということ。相手もあることで、今日よかったからと言って、明日も同じ立ち合いができるとは限らないのだ。
 
ということで、今日は誰かを必要以上に持ち上げるのはやめておくが、いずれにせよ三役の全勝がいなくなり、優勝争いは混戦模様に。まだ本調子とは言えないが、地力のある照ノ富士に、誰が競りかけていくか。立ち合いさえ取り戻せば、爆発力のある御嶽海や逸ノ城はまだ消せないと思うが……。そのほか上位では、ここ2日間内容のいい豊昇龍が三役昇進後では初の2ケタへ乗せるペースで星を伸ばしていけるかが今後の注目か。
 
3日目を終わって全勝は玉鷲、若元春、北勝富士、隆の勝、王鵬の平幕5人。ここにも優勝経験者に三役経験者、さらには期待の若手がそろっており、上位陣のつぶし合いを横目にスルスルと抜け出す力士が出てくる可能性もゼロではない。

文=藤本泰祐

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