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2022-09-24

【NFL】ブラウンズが宿敵撃破 スティーラーズに昔日の面影なし 第3週サーズデーナイト

ブラウンズをけん引したRBチャブ=photo by Getty Images

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 アメリカンフットボールの世界最高峰、米プロフットボール・NFLは、第3週のサースデーナイトゲーム(TNF)が、現地9月22日夜(日本時間23日午前)、オハイオ州クリーブランドであった。クリーブランド・ブラウンズとピッツバーグ・スティーラーズの地区内対決は、過去十数年、苦汁をなめ続けたブラウンズが、後半に地力の差を見せてスティーラーズを破り、2勝1敗とした。(写真はすべて Getty Images)

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NFL Week3 サーズデーナイトゲーム
クリーブランド・ブラウンズ○29-17●ピッツバーグ・スティーラーズ
(2022年9月22日、クリーブランド ファーストエナジースタジアム)

RBチャブらオフェンス躍動、QBブリセットの冷静な指揮も光る

 ブラウンズが、後半の攻防を制して、宿敵スティーラーズを撃破した。原動力はオフェンスだ。


 RBでは、ニック・チャブとカリーム・ハントがフィールドを走り回って、弱体スティーラーズディフェンスを蹂躙した。チャブはラン23回、113ヤード、1タッチダウン(TD)。ハントは12回47ヤード。QBジャコビー・ブリセットも含めた3人で171ヤードを走った。

 レシーバー陣ではWRアマリ・クーパーと、TEデビッド・ジョクウ。

 WRクーパーは101ヤード、1TDレシーブ。スティーラーズのCBアケロ・ウィザースプーンが3Qに負傷退場すると、次のオフェンスシリーズで、縦のルートを走り32ヤードのパスをキャッチ。これがRBチャブのTDにつながった。クーパーは2試合連続の100ヤードレシーブ。ブラウンズでは、2013年のジョシュ・ゴードン以来だという。

 TEジョクウは、キャリアで2番目となるレシーブ89ヤード、1TD。10回のターゲットで9回キャッチする集中力を見せた。193センチ113キロで、垂直跳び102センチ、立ち幅跳び338センチという驚異の身体能力を誇り、NFLを代表するTEになれる素材と言われながら、伸び悩んでいただけに、この日のパフォーマンスを常時続けられるようなら、スーパースターへの道が開く。

 オフェンスを冷静にリードしたのは、QBジャコビー・ブリセット。パス21/31で220ヤード、2TD、インターセプト(INT)なしだった。レーティング109.6には、文句がない。どちらかと言えばポケットパサーだが、勝負どころではランでファーストダウンも奪った。

 ブリセットは、ライアン・フィッツパトリックが引退後は、NFLで屈指のジャーニーマン(旅人)QBだ。ペイトリオッツを皮切りに現在が4チーム目。過去3チームではすべて複数試合の先発を経験してきた。

 バックアップQBとして移籍すると、不思議と、先発予定のQBが、突如の引退や負傷欠場ということになり、出番が回ってくる。派手さはないが、ゲームを壊さず、確実なパス成績を残してきた。ブラウンズでも、2番手QBだったが、デショーン・ワトソンの不祥事による欠場で、少なくとも11月一杯まではエースを務めることになる。

 今季はここまでパス596ヤード、4TD1INT。チャブとハントというリーグ屈指のRBデュオがいるだけに、パス優先のオフェンスに頼る必要がない。QBワトソンの復帰まで、しっかりとしたシーズンを築くことができるかもしれない。

弱いディフェンス、弱いラン、課題は山積

 NFL最多、スーパーボウル6回制覇の強豪スティーラーズ。原動力は強力なディフェンスと、止められないランオフェンスのコンビネーションだった。そのチームの看板は、完全に羊頭狗肉となった。チームの弱体化は隠しようがなく、王者に昔日の面影はない。

 昨年までのオフェンスの大黒柱QBベン・ロスリスバーガーの引退と、ディフェンスの中心、OLBのT.J.ワットの負傷欠場で、彼らが糊塗していたチーム弱体化の現状が明らかになったと言ったら言い過ぎだろうか。

 特にランディフェンスが酷い。昨シーズンはNFL最下位の32位、1試合平均で146ヤードも走られた。オフにディフェンスコーディネーターの交代があったが、状況は何ら改善していない。

 スティーラーズは、近年、パスディフェンスを重視して、大きなNT(ノーズタックル)を配した3-4隊形から、OLBを含めたフロント4人のサブパッケージを多用するようになっており、対戦相手に、LOS(ライン・オブ・スクリーメージ)をコントロールされると、RBのランが止まらなくなる。

 LBも、ドラフト1巡指名のデビン・ブッシュが、負傷から復帰後、人に弱くなったうえ、DB陣もタックルが甘い選手が多い。
 
 第2週は、試合最終盤に、ペイトリオッツのRBを止められずランで6分以上時間を消費されて敗れた。この日もラン38回で171ヤード、ファーストダウン更新12回を許した。

 ラン守備の弱体化と表裏一体のように、ランオフェンスも低迷から抜け出られない。過去4シーズンはリーグ31位、29位、32位、28位。パスプロテクション重視で、ランブロックを疎かにしてきたOLのため、昨年のゴールデンルーキー、RBナジ-・ハリスでも走れない試合が続いている。

 引退したロスリスバーガーの晩年に、パスに依存し過ぎたツケが、表面化している。
 
 オフェンスの問題点としては、今季からスターターQBとなったミッチ・トゥルビスキーをやり玉に挙げるメディアや地元ファンは多い。ベアーズ時代から変わらない、ショートパス主体で、ドライブできないクオーターバッキングに対するものだ。

 この試合の前半で、トゥルビスキーは批判に反論したかに見えた。パス8/9で、ルーキーWRジョージ・ピケンズにTDパスも決めた。

 しかし、中央のパスがないことをブラウンズディフェンスに見抜かれ、アジャストされた後半は、TDなしで、1FGのみに終わった。

 現地メディアでは、トゥルビスキーを降板させ、今年1巡指名したQBケニー・ピケットのスターター起用を求める論調が増えている。だが、ピケットは、ピッツバーグ大学で長くプレーしたスター選手であり、地元メディアのピケットの実力評価は割り引いて考える必要がある。

 QBを変えただけではどうにもならない問題が、今のスティーラーズには山積している。

 スティーラーズは、次週、ジェッツと対戦した後は、ビルズ、バッカニアーズ、ドルフィンズ、イーグルスと、現在のNFLでトップクラスのチームと連続で対戦する。


 就任15シーズン一度も負け越しが無かったマイク・トムリンヘッドコーチだが、今季は年貢の納め時となるのかもしれない。

【小座野容斉】

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