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2022-10-07

【アメフト】日本からNFLへの道が開けるか 富士通WR松井の「40ヤード4秒41」の意味とは

NFLの国際コンバインで40ヤード走計測に臨む富士通WR松井=Xリーグ提供

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 アメリカのメジャープロスポーツの中で唯一、日本の選手が1人も届いていないのが米プロフットボールリーグ・NFLだ。アメリカンフットボールの世界最高峰リーグであり、米国で圧倒的人気No.1を誇るNFLに日本人選手を、というのは、関係者・ファンを問わず悲願となっている。


 その未踏の領域に、1人の若者が挑もうとしている。国内アメフトのトップリーグ「X1スーパー」富士通フロンティアーズのWR松井理己(25)だ。(写真はすべてXリーグ提供)

 英国・ロンドンで10月3・4日にかけて行われたNFLの国際コンバインで、松井が40ヤード(36.58m)走で4秒41という素晴らしいタイムを出したのだ。松井は2回走って、4秒51と4秒41だったという。

 ニュースを聞いて、直ぐに2022年2月のNFLドラフト候補生を集めた「スカウティングコンバイン」の数値を調べた。手元にある「NFLドラフト候補名鑑2022」の110ページに掲載のコンバイン数値を確認すると、4秒41位はWR31人中9位タイに相当する。

 松井は、これまでもカナダのプロフットボールCFLの日本国内コンバインで、立ち幅跳び(318センチ)、3コーンドリル(6秒76)などの好記録を出していた。立ち幅跳びは、NFLコンバインなら上位1/3で、3コーンドリルは計測した14人中3位ということになる。

 ただ、40ヤード走だけが課題だった。松井のCFLコンバインでの40ヤード走は4秒7台。NFLでは、TEやLBでも、遅いとされる数値だ。

 スピードが求められるWRやRB、ディフェンスのCBでは、40ヤード4秒4台が基準。それ以外の数値がどんなによかろうと、評価されないという。

 だから、今回の4秒41という数字は、とても大きな意味を持つ。

 今回のコンバインで、Xリーグが発表している数値は40ヤード走だけだが、3コーンドリルやショートシャトルの測定値でも、RB/TEと同じグループの中で松井がトップだったという。

 レシーブ能力やプレー理解、ルートを走る能力などは、関学大時代から高く評価されていた松井だけに、レシーバーとしてのポジションドリルでは、すべてのパスを問題なくキャッチ。オーバーショルダー(肩越し)の難しいパスをキャッチした瞬間は周りの選手たちから歓声が上がったという。

 今回のコンバインには、アメリカ・カナダ以外の13か国から44人が招待されたが、WRは松井だけ。それもあってか、Xリーグによると、全メニューが終わった後にコーチに呼ばれ、予定にはなかったドリルをいくつか行ったという。

 今回のタイムだけで何かが決まったわけでも約束されたわけでもない。だが、日本のアメフト界にとって次のステップが見えてくる可能性は極めて大きい。
2022年のNFLスカウティングコンバイン、WRの測定データ(ベンチプレスは計測人数が1人だったので外しています)
松井理己(まつい・りき)

 松井は、1997年3月7日生まれの25歳。兵庫県の市立西宮高校でアメフトをはじめ、関西学院大学進学後は、甲子園ボウルに3回出場し、2回学生日本一に輝いた。2019年に富士通に入社。2020年日本代表。日本選手権・ライスボウル優勝2回。今年1月の大会ではライスボウルMVPを受賞。185センチ・85キロ。
NFLの国際コンバインで好記録が出て、笑顔を見せる富士通WR松井=Xリーグ提供

NFLの「IPPプログラム」とは

 今回のコンバインは、NFLの世界的な選手育成システム「IPPプログラム(International Player Pathway Program)」の候補選手を絞り込むためのもの。
  IPPプログラムは、米国のカレッジフットボールか、カナダのCFLを経由する以外に、選手となる方法が事実上なかったNFLが、国際的な選手発掘のパイプラインを強化する狙いを持って運営している。今回のコンバインの結果、10名前後が「IPP候補生」となって来年の1月から3月に米フロリダ州のIMGアカデミーに招待され、そこで専門のトレーニングを積む。候補生はさらに絞られて、最終的には4選手がNFLの任意の4チームに選ばれ、サマーキャンプにフル帯同し、開幕時には各々のチームで海外出身プラクティススクワッド(PS)として登録される。これは、通常のPSの外側にある。

 シーズン開幕後、海外出身PSのままではロースター(正選手)昇格はできないが、チームが一般PS枠で登録し直せば、正選手になる資格が生じるという。
 日本からは、2年前に、オービックシーガルズのRB李卓(現在はCFLモントリオール・アルエッツ)が日本人として初めてコンバインを突破して候補生となり、IMGアカデミーでトレーニングを重ねたが、最終的に4人には選出されなかった。また、昨年のコンバインには、IBMビッグブルーのWRで、2020年の日本代表主将を務めた近江克仁が招かれた。

NFLの国際コンバインに臨む富士通WR松井=Xリーグ提供

【小座野容斉】

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