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2019-12-22

【ボクシング】藤本京太郎、果敢な挑戦も…。 超新星デュボアに痛烈KO負け

WBA世界ヘビー級13位にランクされる藤本京太郎(角海老宝石)は21日(日本時間22日早朝)、イギリス・ロンドン・ハックニーウィックのコッパーボックス・アリーナで不敗の新星ダニエル・デュボア(イギリス)と12回戦を行ったが、2回2分10秒KO負けを喫した。次世代ヘビー級のリーダーと目される22歳に果敢に挑んだ藤本だったが、歯が立たなかった。

上写真=デュボアの右を浴び、長々とのびた藤本

勇敢なチャレンジに変わりはないが…

 最初に断っておきたい。いかなる結末があったにしろ、今回の藤本の戦いは称えられてしかるべきである。何よりもこの一戦、日本ボクシング史上、『最大』の戦いであったのは厳然たる事実である。不毛とも言える日本ヘビー級の現状にもめげず、ひとり奮闘してきた藤本は、25歳以下では世界のだれよりもすぐれた才能を持つとされるデュボアと敵地で戦ったのだ。

「ジョイスあたりだったら、もっとやれたかも」と誰かが言ったが、そのとおり、リオ五輪銀ダリストでプロで10連勝9KOしているジョー・ジョイス(イギリス)はやや単調なきらいがあるから、もっと藤本の持ち味は出たかもしれない。だが、あえて最大の難関に立ち向かったことに拍手を送りたい。

 ましてこの試合には日本非公認ながらWBCシルバーとWBOインターナショナルのタイトルがかけられていた。WBCシルバーは世界挑戦権の近距離にいる立ち位置を証明するタイトルでもある。過去にディリアン・ホワイト(イギリス)、アレクサンデル・ポベトキン(ロシア)、バーメイン・スティバーン(カナダ)らがこの王座に君臨した。だから、藤本は夢の世界ヘビー級王座挑戦への大きな足がかりとして、このタイトルに挑んだことになる。孤高のジャパニーズ・ヘビーウェイトのかくも高き野心と勇気に一点でさえ、ケチがつけられようか。

 だが、この結果は実力の差以外のなにものでもない。身長196センチ、体重109キロのデュボアはあまりに速く、そしてパワフルで、技術的にもきわめてハイレベルだった。身長で13センチ、体重で4.5キロ劣る33歳の藤本は、何もできないまま追い立てられ、そして倒された。

鋭い左ジャブで藤本は最初からペースを握られる

ジャブで倒され、右ストレートに眠る

 デュボアびいきに取り囲まれたリングにオープニングラウンドのゴングは鳴る。ここまで13戦全勝12KOのイギリス人は、まずジャブから切り出した。この一発で藤本は後ずさりする。その後もジャブ、ダイナミックな右、あるいはワンツーから左フックまでがコンビネーションで攻めたてる。藤本に反撃の手立てはなかった。

 そして2回だ。戦いは一気にフィニッシュへと導かれた。おそらく藤本の動作のすべてが読み切られていたのだろう。頭を小刻みに振って、左を伸ばした瞬間、左ジャブではじき返されて、そのまま腰からキャンバスに落ちた。

 ここはさしてダメージはなかったのかもしれない。打ち合いに出たデュボアに、藤本も右のオーバーハンドを2発打ち返す。しかし、打ち負けた。ロープを背に連打を浴びる。ここは耐えた藤本だったが、いったん距離を取ったデュボアを追って右を放とうとした瞬間、逆に強烈な右カウンターを顔面に打ち抜かれる。垂直に落下した藤本は尻をキャンバスに打ちつけて、それから大の字に。レフェリーは即座に試合をストップした。(記録はイギリスの慣例でテクニカル・テンカウントの解釈によってKO)

「相手が出てくるところをねらって打ったんだ。今日はいい夜だった」と会心の勝利を喜んだデュボアは「もちろん、今の僕は100%じゃない。もっと練習を重ねなければいけない」と言いながらも「そろそろ次のステップに上るころだと思っている」と世界タイトル周辺での戦いに意欲を見せた。

 次戦はさきほど名前を上げたジョー・ジョイスとの注目の対戦が、4月実現に向けて計画されている。会場もこの日の7500人収容のコッパーボックス・アリーナから2万人のキャパを持つ、同じロンドン市内グリニッジのO2アリーナに格上げになるようだ。

 倒された後、3分間も立てなかった藤本は、これで23戦21勝(13KO)2敗。

文◎宮崎正博 
写真◎ゲッティ イメージズ

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