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2019-11-30

【ボクシング】ベガス・デビューの平岡アンディは計量パス バルデスの対戦者は4キロオーバー

アメリカの大手プロモーション、トップランクと契約した不敗のスーパーライト級ホープ、平岡アンディ(大橋)は30日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのコスモポリタン・ラスベガスでアメリカでのデビュー戦(8回戦)を行う。29日に行われた計量では対戦者のロヘリオ・カサレス(アメリカ)とともにスーパーライト級リミット内でパスした。一方、この日の目玉カード、スーパーフェザー級デビューに臨む前WBO世界フェザー級チャンピオン、オスカル・バルデス(メキシコ)は対戦者が4キロオーバーし、急きょ、前座に出場するアダム・ロペス(アメリカ)相手にカードが変更された。

上写真=わけありの試合になったが、バルデスがスーパーフェザー級デビュー

驚きのオーバーウェイト

 またしても計量でのハプニングだった。6度も守ったフェザー級のWBOタイトルを返上し、新天地に登場するオスカル・バルデスは58.7キロとスーパーフェザー級リミットを余して計量。一方、対戦者のアンドレス・グティエレス(メキシコ)はなんと63.6キロ。試合は即座にキャンセルされた。

「この試合のために3ヵ月準備したんだ」と残念がるバルデスの要請で、トップランクは調整に入る。前座のフェザー級10回戦に出場予定で、計量をフェザー級リミットでパスしていたアダム・ロペスに対戦者変更を打診。OKが取れたためにバルデス対ロペスの10回戦が組まれることになった。

 26歳のグティエレスは5年もトップ戦線で戦い、一時は世界チャンピオンの有力候補と言われた時期もある。ESPN+を通して全米にストリーミング中継されるカードで、バルデスとしても新階級での力をアピールしたかっただけに、この試合中止はあまりに痛い。ロペスもホープの一翼に上げられている23歳の若手だが、この試合が2度目の10回戦、ウェイトもフェザー級と、いかにも物足りないカードになってしまった。

 1週間前、ルイス・ネリ(メキシコ)が体重超過で、前IBF世界バンタム級チャンピオン、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に対戦を拒否され、また、WBO世界スーパーバンタム級戦に出場したフリオ・セハ(メキシコ)も2キロ以上もリミットを上回り、挑戦者資格をはく奪された。計量失格に対する厳罰化など、世界的な議論が高まっている矢先の“事件”だった。

計量にパスした平岡アンディ(写真:大橋ジム提供)

バルデスのライバル、フランプトンも出場

 なお、当日のコスモポリタン・ラスベガスの主なカードは以下のとおり。

WBO世界スーパーウェルター級暫定王座決定戦
カルロス・アダメス(ドミニカ共和国/25歳/18戦18勝14KO/69.6キロ)VSパトリック・テシェイラ(ブラジル/28歳/30勝22KO1敗/69.5キロ)
スーパーフェザー級10回戦
カール・フランプトン(イギリス/32歳/26勝15KO2敗/58.1キロ)VSタイラー・マクレアリー(アメリカ/26歳/16勝7KO1分/57.8キロ)
スーパーライト級10回戦
アーノルド・バルボサ・ジュニア(アメリカ/27歳//63.5キロ)VSウィリアム・シウバ(ブラジル/32歳/27勝15KO2敗/63.3キロ)

カルロス・アダメス

 カルロス・アダメス対パトリック・テシェイラは当初、挑戦者決定戦として行われるはずだったが、チャンピオンのハイメ・ムンギア(メキシコ)のミドル級転向によって、暫定王座決定戦に昇格したもの。さらにこの試合の勝者は12月早々に東京で開催されるWBO総会で正規チャンピオンに認定される方針という。ドミニカ共和国期待のパワーパンチャー、アダメスの本領発揮を見たいところ。
 カール・フランプトンはジョシュ・ウォーリントン(イギリス)に敗れて以来、11ヵ月ぶりのリングになる。対戦するタイラー・マクレアリーは少年ボクシングのナショナルチャンピオンで、世界ランクに入ったこともある。フランプトンはスーパーフェザー級転向も視野に入れた戦いにもなる。
 アンダーカードにはヘビー級期待のギド・ビアネーリョ(イタリア/5戦5勝5KO)とジャレッド・アンダーソン(アメリカ/1戦1勝1KO)がそれぞれ6回戦と4回戦に出場する。ビアネーリョは198センチの巨漢パンチャーで、リオ五輪代表からアメリカでプロ転向した。20歳のアンダーソンは少年ボクシング91キロ級で無敵を誇った。シニアでもリオ五輪銀メダルのワシリー・レビット(カザフスタン)に食い下がって豊かな素質を証明している。

井上尚弥の対戦者候補? テテがWBO王座統一戦

ゾラニ・テテ

30日(日本時間12月1日)の注目カード

○アリーナ・バーミンガム(イギリス・バーミンガム)
WBO世界バンタム級王座統一戦12回戦
ゾラニ・テテ(南アフリカ/31歳/28勝21KO3敗/52.7キロ)VSジョンリール・カシメロ(フィリピン/30歳/28勝19KO4敗/53.2キロ)

 正規王者テテと暫定王者カシメロの対戦になる。井上尚弥(大橋)との対戦を再三アピールする11秒KO男テテは、よく切れるパンチを持つ長身サウスポー。WBSSトーナメントを故障で離脱したため、13ヵ月ぶりの実戦になる。テテの留守中に暫定政権の主になったカシメロも3階級制覇の実力者。安定感で勝るテテ優位とみられるが、カシメロの一発強打には油断禁物だ。
 前座にはイギリス・タイトルマッチ12回戦が3組、WBOヨーロッパ・タイトルマッチ10回戦が2組と超ロングラン・イベントになりそうだ。イギリス王座を争うスーパーフェザー級のサム・ボーエン(27歳/15戦15勝11KO)、スーパーミドル級レロン・リチャーズ(27歳/12戦12勝3KO)、WBOヨーロッパ・スーパーウェルター級王座決定戦に出場するハムザー・シーラス(20歳/9戦9勝5KO)らはいずれ世界戦に出場するような選手に育つかもしれない。また、バンタム級のスター候補デニス・マッカン(4戦4勝3KO)も注目。

■ロシア勢がウェルター戦線に名乗り

アレクサンデル・ベスプーチン

※12月1日午前4時からDAZNで放映
○カジノ・ドゥ・モンテカルロ・セール・メドサン(モナコ・モンテカルロ)
WBA世界ウェルター級王座決定戦12回戦
アレクサンデル・ベスプーチン(ロシア/28歳/13戦13勝9KO/66.5キロ)VSレジャブ・ブタエフ(ロシア/25歳/12戦12勝9KO/66.3キロ)
統一女子世界ウェルター級タイトルマッチ10回戦
セシリア・ブレークハス(ノルウェー/38歳/35戦35勝/66.5キロ)VSビクトリア・ブストス(アルゼンチン/30歳/19勝5敗/66.5キロ)

 アメリカを主戦地にするロシア人同士が、初の世界王座をかけて激突する。トップランク傘下でウェストコースト地区を拠点にするベスプーチンと、この試合のプロモーター、エディ・ハーンとタッグを組むディベラ・エンターテイメントと契約するブタエフの対決だ。ベスプーチンが硬質なパンチを武器にするサウスポーなら、ブタエフは長身のパンチャースタイル。スリルあふれる技術戦が楽しめそう。
 女子ボクシング無敵の女王ブレークハスはIBFのスーパーライト級暫定王者ブストス相手になんとトータル24度目の防衛戦になる。後発の女子ボクシングとは言え、ジョー・ルイス(アメリカ=世界ヘビー級王者)の25度に迫る大記録に臨む。ブストスはケイティ・テイラー(アイルランド)には完敗しており、ブレークハスが取りこぼす可能性は低いとみる。
 前座のヘビー級10回戦には、北京五輪スーパーヘビー級銀メダリストのザン・ジレイ(中国/張志磊/36歳/20戦20勝16KO/126.1キロ)が14ヵ月ぶりのリング。一時、ビッグバンのニックネームでアメリカで売り出されたが、その後、試合になかなか恵まれない。前戦より10キロ近く増量したのも気になるところだ。

セシリア・ブレークハス

そのほか

○ブリスベーン(オーストラリア・クィーンズランド州)
スーパーミドル級10回戦
アンソニー・ムンディン(オーストラリア/44歳/48勝28KO9敗)VSジョン・ウェイン・パー(オーストラリア/43歳/10勝10KO3敗)

○青島(中国)
ライト級12回戦
ヤン・ヨンギャン(中国/楊永強/27歳/12戦12勝9KO)VSJR・マグブー(フィリピン/29歳/18勝9KO3敗2分)

○ナルヴァ(エストニア)
ヘビー級8回戦
ロバート・ヘレニウス(フィンランド/35歳/28勝17KO3敗)VSマテウス・オソリオ(ブラジル/35歳/9勝9KO4敗)

○ラパス(メキシコ・バハカリフォルニア州)フライ級10回戦
ホセリト・ベラスケス(メキシコ/26歳/11戦11勝9KO)VSアドリアン・クリエル(メキシコ/20歳/15勝3KO2敗)

○シウダー・ビクトリア(メキシコ・タマウリパス州)
フランシスコ・ロドリゲス(メキシコ/26歳/32勝23KO4敗1分)VSホセ・カルデナス(メキシコ/23歳/17勝14KO5敗)
エデュアルド・エルナンデス(メキシコ/22歳/28勝25KO1敗)VSセルヒオ・プエンテ(メキシコ/32歳/28勝12KO8敗)

○ザコパネ(ポーランド)
クルーザー級10回戦
クジシュトフ・ヴロダルチク(ポーランド/38歳/57勝34KO4敗1分)VSテイラー・マビカ(ガボン/40歳/19勝10KO4敗1分)

スブリエル・マシアス

○ファハルド(プエルトリコ)
スーパーライト級10回戦
スブリエル・マシアス(プエルトリコ/27歳/14戦14勝14KO)VSジョナタン・エニス(アルゼンチン/25歳/24勝9KO12敗1分1NC)

○マイコープ(ロシア)
クルーザー級12回戦
ルスラン・ファイフェル(ロシア/28歳/24勝16KO1敗)VSユーリ・カシンスキー(ロシア/33歳/18戦18勝16KO)

○台北(台湾)
スーパーバンタム級10回戦
杉田ダイスケ(ワタナベ/31歳/5勝3KO1敗)VSエディソン・ベルエラ(フィリピン/36歳/18勝6KO42敗8分)
スーパーバンタム級10回戦
田村亮一(JBスポーツ/32歳/12勝6KO5敗1分)VSモエンサク・ヨー(インドネシア/33歳/6勝4KO5敗1分

文◎宮崎正博 写真◎ゲッティイメージズ

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