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2022-11-11

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第4回「懸賞、賞金」その2

勝ち越しを決めて、満面笑みの千代大龍

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近年、増えているものはな~んだ? と問われたら、2つ挙げたい。
1つ目は社会問題化している高齢者の交通事故。あれは困ったものですね。対応も難しい。
残る1つが幕内の取組に懸かる懸賞だ。勝った力士にご祝儀をつける、というのは大相撲ならではの、もう風物詩と言っていい。令和元年秋場所から力士の取り分が1本6万円にアップした。その総数が毎場所、2000本前後ですよ。ようし、勝って取ってやろう、と力士たちのモチベーションも一段と上がろうというものです。
気になるのはあの懸賞、あるいは賞金の使い道です。令和元年夏場所、たっぷり稼いだ朝乃山に師匠が「部屋にクーラー付けて」と“公開おねだり”していましたが、野暮を承知でその使い道を探ってみました。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

娘名義で貯金

現在、懸賞の半分近く、2万6千7百円也が天引きされ、本人名義で強制的に貯金される。かつて、宵越しの金は持たねえ、とばかり、獲得した賞金を全部使ってしまい、年末に税金がドッと来て青くなる力士が続出したためだ。でも、こんなしっかり者の子供を持った力士は、そんな心配はいらないんじゃないでしょうか。
 
平成30(2018)年初場所千秋楽、東前頭3枚目の千代大龍は大栄翔を押し出して8勝目を挙げ、次の春場所の小結昇進を確実にした。この日はまた、長女・椿ちゃんの4歳の誕生日でもあった。早く帰ってお祝いしなきゃ、と帰り支度を始めた千代大龍は、急にその手を止めて苦笑いしながらこう打ち明けた。

「娘がね。数を数えるのを覚えてね。毎日、テレビで(自分の取組にかかる)懸賞の数を数えているんですよ。だから、(獲得した懸賞金はごまかさず)娘名義の口座にそっくり入れて、将来の資金にしているんです。でも、今日は勝ち越したので特別だ。炭酸を作る機械を買ってプレゼントしようかな」
 
千代大龍は200キロ近い巨体を目いっぱいぶつける豪快な相撲が持ち味。でも、娘さんにはかないませんね。

月刊『相撲』令和元年7月号掲載

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