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2022-11-30

変形性ひざ関節症教室 第4回 一生手術せずにひざをもたせることはできるのか?

ひざは健康寿命延伸の要の関節。ところが、中高年になると、ひざ関節の軟骨がすり減り、「ひざが痛い」「水がたまる」「痛くて長く歩けない」「ひざが変形した」などといった症状に悩む方が増えてきます。本連載では、ひざの専門医・田代俊之ドクターが、ひざ関節の構造と機能、変形性ひざ関節症の症状と治療について、やさしく解説していきます。今回のテーマは「手術」について。手術をしないという判断は、どんな状態でも正しいのでしょうか。

Q 一生手術をしないでもたせることはできますか?
A 希望する生活が送れなくなったら手術を考えましょう

 変形性ひざ関節症の治療の目標は痛みをなくすことです。痛みをなくす治療のメインは運動療法です。まずは運動療法などの保存治療をしっかり行いましょう。ほとんどの患者さんは、保存治療を継続すれば、買い物・旅行などの日常生活やスポーツなどの趣味といった、自分の希望する生活を維持することができると思います。

 しかし、すべての患者さんが保存治療だけで、希望する生活を続けられるわけではないのも事実です。保存治療をしっかり行っても日常生活や趣味が満足にできなくなってきた場合には、手術を考える必要があるかもしれません。

 手術はあくまでもやりたいこと(目標)をできるようにするための手段です。手術をするかどうかを決めるときには、まず、自分がやりたいこと、続けたい生活について考えることから始めましょう。そのうえで、経験豊富な医師に相談することをお勧めします。

 手術は、関節が変形しているからではなく、自分の目指す生活を続けるために行うものだということを、しっかり認識して判断しましょう。

※手術の種類や方法については、今後の連載のなかで詳しく紹介します。

Q  手術後にも運動療法を行うのでしょうか?
A  手術後こそ積極的に運動療法を行いましょう

 手術はあくまでも歩行時の痛みを除くために行うものです。手術を受けたからといって、筋力や体力がつくことはありません。運動療法で行った筋力を鍛える運動、ひざの曲げ伸ばしをする運動、歩くことは、手術後も続ける必要があります。

 ひざの痛みをなくして「もっと歩きたい」という気持ちから手術を受ける判断をしたはずです。手術後はどんどん歩きましょう。リハビリテーションはどれも簡単なものばかりです。もしも手術後にこれらをすることができないという方は、手術をお勧めしません。

※運動療法については、今後の連載のなかで詳しく紹介します。

プロフィール◎田代俊之(たしろ・としゆき)さん
JCHO東京山手メディカルセンター整形外科部長
1990年山梨医科大学卒業後、東京大学整形外科入局。東京逓信病院、JR東京総合病院勤務をへて、2014年に東京山手メディカルセンターへ。2017年4月より現職。ひざ関節の疾患を専門とし、靭帯損傷、半月板損傷、変形性関節症などについて、長年にわたって幅広く対応している。2004年より中高齢者に向けたひざ痛教室を毎月開催している。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。陸上競技実業団チーム(長距離)のドクターも務める。

この記事は、ベースボール・マガジン社の『図解・即解!基礎からわかる健康シリーズ 変形性ひざ関節症』(田代俊之著、A5判、本体1,500円+税)からの転載です(一部加筆あり)。 Copyrightⓒ2022 BASEBALL MAGAZINE SHA. Co., Ltd. All rights reserved.

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