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2022-11-17

【相撲編集部が選ぶ九州場所5日目の一番】とっさに飛び出た河津掛け! 豊昇龍が鋭い動きで1敗守る

外掛けから切り返しにきた翠富士の左足に右足を掛け返し、河津掛けを決める豊昇龍。このあと右上手を放して手が先に着かないようにする細かい動きも見せた

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豊昇龍(河津掛け)翠富士

「10年ぶり! へえ~。よかったですね」

いつもはそそくさとリモート会見を切り上げるのが常の豊昇龍が、思わず表情を崩した。河津掛けという決まり手が、幕内では10年ぶりのものだと聞いたときだ(前回は平成24年3月場所5日目、隆の山が勢相手に決めている)。
 
この日の相手は食いつかれるとうるさい翠富士。立ち合い右に飛んで上手を狙い、捕まえにいった。ただ廻しは取れたものの、左を深く差され、右も浅く入れられた。さらにそのあと右から振り回しに行ったところに左外掛けを掛けられて、後ろにつかれるような形になってしまった。
 
翠富士はここぞとばかりに外掛けから切り返しで勝負に出る。そのときだ。豊昇龍はとっさに右足つま先を翠富士の左かかとに掛けて河津掛け。さらには倒れる中で右の上手を放して先に手が着かないようにするとっさの動きを見せて白星を手にした。

「ビャンバ(豊昇龍)以外だったら(自分の技を)食っていたと思う」と、負けた翠富士もこの鋭い動きにはビックリだ。

「狙ったわけじゃないんで。流れでそうなった。とにかく集中しかしてなかった」と豊昇龍。素早い反応でモノにした、いかにも豊昇龍らしい白星だった。
 
豊昇龍はこれで1敗を守り、幕内のトップをキープした。5日目が始まる前には14人いた1敗力士は、取組を終わったところで8人まで減ったが、豊昇龍はその8人の中では番付最上位。優勝争いを引っ張っていくべき立場になったと言っていいだろう。
 
今場所、4つの白星のうち、立ち合いからいいペースで攻め切ったのは3日目の逸ノ城戦のみで、内容的にはこの日を含めて逆転勝ちしている印象のほうが強いが、そういう相撲をしっかり白星に結びつけているところが、かえって中盤以降への期待を抱かせる。この日の取組などもまさにそうだが、先場所は8勝をすべて違う決まり手で勝っていることでも分かるとおり、一つのパターンだけでなく、どんな展開になっても素早く体が反応し、白星につなげられるのが、豊昇龍の大きな魅力だ。この辺りは、まさに動きの鋭さと多彩な技で沸かせた叔父さん(元横綱朝青龍)譲りだと言えるだろう。
 
そういえば、豊昇龍は10月に行われた全日本力士選士権で初優勝したとき、平成14年の同じ大会で叔父の朝青龍が初めて優勝し、その直後の11月場所で初優勝していることを聞かされ、「マジですか? 頑張ります」とこの場所に向け気合を入れていた。もしかしたら叔父さんの快挙の再現が、現実味を帯びつつあるのかもしれない。

文=藤本泰祐

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