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2022-11-19

【相撲編集部が選ぶ九州場所7日目の一番】先場所の覇者を圧倒。琴ノ若、25歳の“バースデー白星”で4連勝

うまく中に入って先場所の覇者・玉鷲を圧倒。大柄だが、体の寄せ方など細かな相撲の動きもうまい

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琴ノ若(押し出し)玉鷲

先場所の優勝者に、何もさせなかった。
 
この日玉鷲と対戦した琴ノ若だ。立ち合い、頭で当たってくる玉鷲に、下から掬うように差すとサッと二本差し。体は大きくても、こういうところはうまい琴ノ若、そのまま体を密着させて東土俵へ運ぶ。玉鷲は懸命に振りほどくが、そのあとは半ば突いて出るような形で青房下に押し出した。

「攻めが最後まできっちりできたと思います。(中に)入っても振りほどいてきたりするので、中途半端なことはしないで、前に出るならしっかり出るということだけ頭に入れてやりました」という、まさに思い描いていたとおりの、会心の相撲だったことは間違いない。
 
今場所は初日から3連敗のスタートだったが、4日目に若隆景の攻めを腕捻りでしのいで初日を出すと、5日目は土俵中央で若元春を押し倒し、6日目は翔猿をつかまえて小手投げと、相手の攻めをしっかり受け止める相撲で星を戻してきた。そしてこの日は今場所初めて相手を土俵の外へ運び出す形での会心の勝利と、徐々に内容も上向き、いよいよ白星先行となった。
 
これまでの7日間で関脇以上との対戦はほとんど終えており、残る対三役は御嶽海、霧馬山、大栄翔のみ。調子が上がってきただけに、この辺りとの対戦をうまく乗り切れれば、髙安との直接対決を残していることがむしろアドバンテージに変わってくる可能性も。

「一日一日粘っていけば、終盤に(優勝争いの)チャンスがあるのでは」の問いには、「まず目の前の一番をしっかりやって、その結果かなと思います」と冷静だが、後半戦の追い込みに注目だ。
 
実はこの日は琴ノ若にとって25歳の誕生日。最近は力士の現役寿命が延びているので、27歳ぐらいまでは若手のイメージがあるが、現在、幕内上位にいる日本人力士の中では一番の若手。祖父が元横綱琴櫻、父が元関脇琴ノ若というDNAから考えても、新たな、さらに言えば安定感のある日本人大関、そして横綱を待望するファンには最大の希望の星と言っていい。
 
25歳の目標を問われると、「まだ上があるので、しっかり上を見据えて。自分の持てる力をしっかり出し切って、どんどん上がっていければいい」と、その目はしっかりと上を見据えている。
 
現在西前頭筆頭。関脇、小結が渋滞気味の最近の番付傾向からすると、「大関候補」と呼ばれる位置までたどり着くにも、この先、ときに9番、10番以上挙げる場所を挟みつつ、何場所も連続して勝ち越していかなければならないが、その高いハードルを越えていけるポテンシャルが、この力士にはある。まずは今場所を、勝ち越しはもちろん、できれば初めて上位での2ケタ勝利の壁を破る場所にしたいところだ。

文=藤本泰祐

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