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2022-11-22

【相撲編集部が選ぶ九州場所10日目の一番】攻める相撲で正代を破る。1敗並走の豊昇龍、初優勝へ前進

最後は突き落としに遭い、危なかった豊昇龍だが、正代の左足が先に出ており辛勝。攻めて勝ったこの日の内容は、終盤戦に向けての好材料だと言える

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豊昇龍(寄り倒し)正代

豊昇龍が大関正代を寄り倒し、1敗を守った。
 
優勝争いのトップを王鵬と並走する豊昇龍にとってはこの場所初めての、自分より番付上位の力士との対戦。もちろん、カド番の今場所、ここまで黒星が1つ先行の正代にとっても負けられない戦いだ。
 
立ち合いは、頭からいった豊昇龍がやや当たり勝った。ただ狙った右差しは正代にはね上げられる。それでも頭を下げて左で押し込むと、そのまま左を浅く差し、右は抱えただけでどっと前に出て体を預けた。土俵際、正代の右からの突き落としにほぼ同時に落ち、微妙かと思われたが、両者が倒れる前に正代の左足が出ており、軍配通り豊昇龍の勝ちとなった。

「自分から攻めたい気持ちがあったんで、しっかり取れたかなと思います」と豊昇龍。この日は、この言葉どおり、“攻めて勝った”ことに価値があった。
 
初優勝に向け、1敗でトップを走る豊昇龍だが、この日までの相撲の内容としては、技のキレはさすがと言えるものの、逆転勝ちや投げでの勝利も多く、攻め切っての勝ちが少ないのがやや懸念材料だった。それがこの日は、勝負どころで迷わず前に出ての白星だ。この勝ち方は、今後の対上位戦に向けて、相撲内容が上がっていくきっかけになる可能性がうかがえるもの。そういう意味でも、大きな1勝となる可能性がある。
 
残りの対戦相手を予想すると、明日、御嶽海が決定で、あとは貴景勝、若隆景、霧馬山、錦富士が有力。もしも王鵬が最後まで優勝争いに残ってきた場合は誰かと入れ替わる、という感じだろうか。どの相手にも、やはり「正面から行っても強いぞ」というイメージを抱かせておくことは大事だろう。
 
一方、1敗で並走するのは、豊昇龍とは同学年、同期入門の王鵬。この日は碧山を寄り切り、組んでも勝てるところを見せた。明日は3敗の阿炎と対戦。おそらくこのあとは好成績者との対戦が続いていくはずで、ここからが本当の優勝争いとなる。入幕5場所目、終盤の優勝争いはもちろん初めての経験になるが、怖いもの知らずの勢いでどこまで勝ち抜いていけるか。ただもしそこを勝ち抜いて、最後に豊昇龍との直接対決に持ち込んだときには、同期だけに気後れなくぶつかれる可能性はある。
 
ここに、明日の髙安-錦富士戦の勝者が絡んでいく、というのが、当座の優勝争いの形になりそうだ。
 
また、この日、豊昇龍に敗れた正代は6敗目でカド番脱出へは残り1敗しか許されない状況となり、関脇御嶽海は翠富士に敗れて今場所後の大関復帰の望みが断たれた。今後、優勝争いがどう展開していくかは分からないが、少なくとも今場所が、大関以下の勢力図が大きく塗り替わるきっかけの場所になることは、間違いがなくなった。

文=藤本泰祐

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