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2022-12-01

スマイルスポーツマガジン・インタビュー 【陸上/駅伝】原晋監督「箱根駅伝で正月から元気を与えたい」

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青山学院大学の駅伝部を率いて19年の原監督。2023年1月の箱根駅伝では前回大会に続く連覇を狙う(写真:スマイルスポーツマガジン)

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青山学院大学陸上競技部(駅伝部)を率いる原晋監督は、独自の育成メソッドとチームマネジメントで箱根駅伝4連覇、大学駅伝三冠など、数々のタイトルをチームにもたらしてきた。チームの強さの秘訣や、箱根駅伝の面白さ、そして連覇を狙う2023年の第99回大会に向けての意気込みをスマイルスポーツマガジンのインタビューで語ってもらった。

 
――大会新記録で優勝した今年(第98回)の箱根駅伝を振り返っていただきたいのですが、1年生を二人抜擢するなど、采配が冴えていた印象でした。

「大会新記録で圧倒的な勝利を得ましたが、これは監督に就任して18年間の積み重ねの上にある勝利だと思っています。培ってきた“原メソッド”というものがあって、その方程式に則って選考をしているので、1年生であっても、一定の基準を満たした選手はしっかり走ってくれてますよね」

――根拠に基づいた選手選考や区間配置が勝因なのですね。

「我々はある程度の方程式に則ってやっています。スポーツ界、特にこの箱根駅伝の世界で、初めてマネジメントによって勝利に導いた監督かなと、誰も言ってくれないので自分で言います(笑)」

――箱根駅伝は10区間、いろいろなコースがあるので、適材適所に選手を配置することがポイントですね。

「その通りです。単独走が得意な選手、集団で走るのが得意な選手、日差しに弱い選手、涼しいときに力を発揮する選手、朝早いレースは苦手な選手、向かい風に強い選手、追い風で走るのが得意な選手……と、特徴はいろいろあります。普段のトレーニングから、選手の弱みと強みを見極めながら区間配置をしています」

                    

今年の箱根駅伝を大会新記録で制して胴上げをされる原監督(写真/陸上競技マガジン、代表撮影)

――練習の面だけでなく、私生活や学業の面も含めて、選手たちにはどういったことを求めていますか?

「授業や単位取得を疎かにしないことは大前提です。前期・後期の試験の後には、必ず成績一覧表を提出させて面談をしています。試験期間中は全員で勉強会の時間を設けますし、練習もフリーにして勉強に支障がないようにしています」

――学業との両立を大事にしているのですね。

「箱根駅伝はメジャー競技になって、結果を出すと選手も輝いているように見えると思います。ただ、あくまでもクラブ活動の一つに過ぎません。だとしたら、勝った、負けたを教えるだけでなく、箱根駅伝を一つのツールとして考えて、計画力だったり、分析力だったり、突破する力だったりを身につけてもらうことが大事だと思います。指導者の言うことを『はい』『はい』と聞いているだけでなく、自分で課題と向き合って、成果を出す方法を考えていけるような選手になってほしいと常々考えています」

――選手の自主性というのは、青山学院の伝統になっていますね。

「自主的に活動していても、志を一つにして同じ目標に向かっていくなら、敢えてグループをつくらなくても自然とグループになるんです。良いことの旗印のもとには、無理やり集めなくても、自然と人が集まってきます。逆に悪いことを企てる人ほど、人を囲って組織をつくろうとする傾向があるのかなと思います。良いグループは自然と一つになっていきますし、一人ひとりが自主性、リーダーのマインドを持っていれば、みんなが輝いていけます。それが強い組織になっていくということだと思います」

――青山学院は選手層が厚く、実力があってもなかなか駅伝に出られない選手もいます。そのなかで選手のモチベーションを下げさせないために、心掛けていることはありますか?

「選手の個を見てあげることですね。個の集合体がチームになってくるので、両輪で動かすということです。従来のピラミッド型のマネジメント手法から、新しい組織形態に変わっていく時期なのかなと思っています。上の人から言われて動く、上意下達のスタイルではなく、共通の理念のもと、それぞれが自分の考えで責任を持って動く。個性はあっていいので、尖った選手もいれば、丸い選手もいる。三角の選手もいれば、同じ丸でも色の違う選手がいる。いろいろな選手がいていいんです。理念は共有しつつ、それぞれの個性がぶつかり合って、組織ができていけばいいと思います」

――2023年の箱根駅伝の展望もお聞きしたいと思います。

「2023年の箱根駅伝で勝つのは、青山学院か駒澤大学。10区間となると、選手層的に二強になると思います」

――戦力的には青山学院大学と駒澤大学が抜けていると。

「やはり柱がいますよね。駒澤大学は田澤廉選手や鈴木芽吹選手、山野力選手などがいますし、ウチも近藤幸太郎、岸本大紀、中村唯翔、横田俊吾の4年生が充実しています。加えて3年生の佐藤一世。この5人は駅伝力があります。特殊区間の山登りは昨年走った若林宏樹と4年生の脇田幸太朗、世界も経験した1年生の黒田朝日。山下りも2年生の野村昭夢、4年生の西川魁星がいます」



箱根駅伝で活躍が期待される青山学院大学の近藤幸太郎選手と駒澤大学の田澤廉選手(写真/陸上競技マガジン)

――むしろ10人に絞るのが大変ですね。

「12月10日に決まる16人のエントリーに向けて、11月の世田谷ハーフマラソン、宮古ハーフマラソン、MARCH対抗戦(10000m)とあって、11月末からは最終合宿があります。これらに夏合宿の消化率を加味して16人を選ぶのですが、ギリギリの選考で選手にストレスがかかってきます。その中で選手が諦めた時点で終わりですし、ケガなく、ストレスを乗り越えていかないといけません。不思議と段々と絞られていくもので、勝利の方程式はできていますし、青山学院は強いと思います。勝てそうな雰囲気が出てきました」

――最後に今後の目標をお願いします。

「スポーツ界にはいまだに昭和の育成メソッドから抜けきれない部分があって、体罰での支配が残っています。令和の時代に入って、スポーツのメソッドを変えていく必要があると思っています。私には原メソッドという普遍的なものがあるわけですから、一陸上長距離の指導者としてだけではなく、いろいろな競技団体をお手伝いしていきたい気持ちがあります」

――スポーツ界全体を視野に入れての活動も考えているのですか?

「来年度から中学部活動の民営化が始まります。各市町村の皆さんも、どうしていくかお困りのところもあると思います。我がチームから、令和の時代に添った最新の指導スタイルを学んでもらいたいという思いがあります。中学部活動の指導者研修システムというものを、ある程度確立していますので、それを普及させていきたいです。地球社会共生学部の教授という立場を利用しながら、現場でのメソッドを教える展開をしていくことが私の課題ですね」 

――駅伝部としての目標は?

「私も来年で監督就任20年になるので、そろそろ後継者の育成に着手していきたいです。優勝する、しないはさておいて、常に三大駅伝では上位で戦い続けられる組織形態をつくっていきたいです。箱根駅伝では、都民の皆さんをはじめ、多くの人々に感動、勇気、元気をお届けする、パワフルな走りをお見せしたいなと思います。画一的な指導スタイルではなく、青学のランナーは何かやってくれるという、ワクワク、ドキドキするような走りで学生たちを輝かせ、結果として見ている方々にお正月から元気を与えたいです」

こちらに掲載したインタビューのほか、ビジネスマンとしての経験や、伝統ある箱根駅伝に対する考え方、2024年の第100回箱根駅伝への思いなどカラー4ページにわたる原晋監督のロングインタビューは、12月1日に(公財)東京都スポーツ文化事業団が発行した『スマイルスポーツマガジンVol.92』に掲載されています。

 

  

(写真:スマイルスポーツマガジン)
はら・すすむ
1967年3月8日生まれ、広島県出身。世羅高校-中京大学を経て中国電力陸上部に1期生として入部。主将として1993年の全日本実業団駅伝に初出場を果たす。1995年に現役を引退し、サラリーマン生活を送った後、2004年より青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督に就任。2009年に33年ぶりの箱根駅伝出場を果たすと、2015年に青学史上初の箱根駅伝総合優勝を達成し、2018年まで4連覇を飾る。2017年には箱根駅伝、出雲駅伝、全日本大学駅伝の三冠を達成した。2019年4月より、青山学院大学の地球社会共生学部の教授を務める。

 


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