close

2022-12-02

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第4回「懸賞、賞金」その3

平成30年6月9日、夏場所で新入幕を果たし、敢闘賞を獲得した旭大星が芳恵夫人と挙式

全ての画像を見る
近年、増えているものはな~んだ? と問われたら、2つ挙げたい。
1つ目は社会問題化している高齢者の交通事故。あれは困ったものですね。対応も難しい。
残る1つが幕内の取組に懸かる懸賞だ。勝った力士にご祝儀をつける、というのは大相撲ならではの、もう風物詩と言っていい。令和元年秋場所から力士の取り分が1本6万円にアップした。その総数が毎場所、2000本前後ですよ。ようし、勝って取ってやろう、と力士たちのモチベーションも一段と上がろうというものです。
気になるのはあの懸賞、あるいは賞金の使い道です。令和元年夏場所、たっぷり稼いだ朝乃山に師匠が「部屋にクーラー付けて」と“公開おねだり”していましたが、野暮を承知でその使い道を探ってみました。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

挙式前に敢闘賞

懸賞は昇進祝いのお返しとしても最高だ。平成30(2018)年夏場所、場所後の6月9日に1つ年下の芳恵夫人との結婚式を控えていた旭大星が待望の新入幕を果たした。平成10年夏場所の北勝鬨(現伊勢ノ海親方)以来、実に20年ぶりの北海道出身の幕内力士でもあった。

「地元(旭川市)も、ものすごく盛り上がってくれています。すぐ十両に落ちたら意味がない。まずは勝ち越しです」
 
と旭大星は大張り切り。初日、惜しくも妙義龍に寄り切られ、白星発進とはならなかったが、2日目、39歳6カ月という史上最高齢で再入幕したばかりのベテラン、安美錦(現安治川親方)を裾払いで鮮やかにひっくり返し、待望の幕内初白星を挙げた。道産子力士としては北勝鬨が平成10年夏場所千秋楽に勝って以来のことで、その勝った相手が旭大星の師匠の旭天鵬(現大島親方)というのも因縁めいていた。
 
幕内力士として初めて獲得した懸賞は4本。笑顔を振りまいて引き揚げてきた旭大星は、

「この懸賞は、化粧廻しをつくってくれた人と、オヤジに渡しますよ。渡したい人はまだまだいっぱいいます。だからいっぱい勝ちたい」
 
といかにもうれしそうだった。
 
この場所、旭大星が獲得した懸賞は全部で11本。意外に数が伸びず、おそらく渡したい人全員には行き渡らなかったんじゃないかな。でも、旭大星はもう一つ、ビッグな賞金をゲットした。千秋楽に千代丸に勝って10勝ラインに到達し、敢闘賞に輝いたのだ。旭大星は、

「これで(花婿として)恰好つきますね。この賞金(200万円)は結婚式にまわして少し豪華にしよう」
 
と声を弾ませていた。

月刊『相撲』令和元年7月号掲載

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事