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2022-12-07

【NFL】49ersの新QBパーディーは、有馬隼人さんが「次代のブレイディ」としてプッシュしていた

【49ers vs ドルフィンズ】急遽出場し、チームを勝利に導いた49ersのルーキーQBパーディー。有馬隼人さんが「次のブレイディ」候補としていた=photo by Getty Images

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アメリカンフットボールの最高峰、米プロフットボールのNFLで、また新たなQBが注目を集めている。サンフランシスコ 49ersのルーキー、ブロック・パーディーだ。
 現地12月4日(日本時間12月5日)に行われた今季13週の対マイアミ ドルフィンズ戦で、パーディーは試合序盤で負傷したエースQBジミー・ガロポロをリリーフ、33-17で、見事にチームに勝利をもたらしたのだ。

 この試合後に、Xリーグのアサヒビール シルバースターヘッドコーチでNFL解説者としてもお馴染みのキャスター、有馬隼人さんが、筆者にメッセージを送ってきてくれた。

「ブロック・パーディが救援勝利!そしてスターターに。来ましたね!来た感じがします」

 普段は冷静な有馬さんが、少し興奮気味だった。その理由も理解できた。というのは、有馬さんはパーディーを今春のNFLドラフトの前から「次のブレイディ候補」としてピックアップしていたからだ。
【49ers vs ドルフィンズ】急遽出場し、チームを勝利に導いた49ersのルーキーQBパーディー。ドルフィンズQBタゴバイロアと握手を交わす=photo by Getty Images
"ブレイディ要素"は概ね揃っている

 今年4月に出版した、アメリカンフットボール・マガジン『NFLドラフト候補名鑑2022』の中で、有馬さんはQBのパートを担当した。
 「次代のトム・ブレイディを探せ」と題した、長文レポートの中で、有馬さんが文末に、こんなことを書いた。

    ◇    ◇

 ■次のブレイディ候補は見つけられるか

 今回のドラフトでの上位指名候補のQBを簡単に考察してみたが、"ブレイディ候補"はいるだろうか?と言われれば?お察しのとおり答えはNOとなってしまう。

 それぞれのQBが存分に魅力を持っているのは無論だが。

 そんななかで、ひとり面白そうなQBがいる。ドラフトでは5巡目あたりで指名を受けるだろうか。アイオワ州立大のブロック・パーディである。

 サイズ不足ではあるが、備わっているパッシングスキルは非常に頼もしい。細やかで乱れにくい投球動作と素早い判断力が光り、ポケットワークもうまい。"ブレイディ要素"は概ね揃っているように見える。

 映像を見てもらえるとわかるが、いろいろな動作やスローイングがブレイディに近似している。どのチームに入団して、どんな境遇になるかわからない。ただ、出場のチャンスが回ってくれば、及第点以上の結果を残せそうだという期待感が募ってやまない。

今春のNFLコンバインでパスのドリルをするQBパーディー。有馬隼人さんが「次のブレイディ」候補としていた=photo by Getty Images

   ◇     ◇

 改めて読み直して、流石は有馬さんだと感心した。パーディーの特徴をほぼ言い当てていたからだ。

 ドルフィンズ戦で、パーディーは49ersのセカンドドライブから登場した。パス25/37、210ヤード、2タッチダウン(TD)、1インターセプト(INT)、レーティングは88.8。49ersが5連勝で8勝4敗とする原動力となった。

 公式戦デビューは7週のチーフス戦だったが、この時は敗戦処理起用。21点差の残り試合時間3分からの登場だったので、勝敗のプレッシャーはまったくなかった。

 それに引き換え、今回は、プレーオフ戦線を見据えた大事な一戦で、しかもアクシデントによる突然の登場。しかし、パーディーは、落ち着いていた。49ersのオフェンスはパーディーが登場以降、22回のファーストダウンを更新し、23点を奪った。文句のない実質デビュー戦だった。

『持っている系』の男 このQBをプレーオフで見たい

 筆者が感じたパーディーの良さは、「クイックで正確、そしてドルフィンズディフェンスに怖気づいていない」というものだ。

 その辺を改めて有馬さんに聞いた。

 「試合展開も含めて、恵まれてましたね。『持っている系』の男かもですね。

 やっぱりスキルセットはブレイディに似ています。(デビュー時の)同時期のブレイディよりも全体的に良いですし、球のスピードもありますね。

 判断が早く、オンタイミングで投げるのでトラブルになりにくいですし、(相手の)パスインターフェアももらえます。また、勇敢に攻める姿勢を持ちながらも、リスクヘッジを遂行できている点も良いです。

 フィールドがよく見えていますし、自分で頭の整理ができるQBですね。堂々と飄々としている姿も好感が持てます。

 ゴリゴリのフィジカル系QBが増えてきた中で、このタイプの活躍は稀少でワクワクします。

 今回は途中交代で出場し、それほど精神的プレッシャーはなかったと思いますが、今後スターターに就いたらどうなるか、見所ですね。このQBをプレーオフで見てみたいです。」

というコメントを頂いた。
【49ers vs ドルフィンズ】急遽出場し、チームを勝利に導いた49ersのルーキーQBパーディー。有馬隼人さんが「次のブレイディ」候補としていた=photo by Getty Images
 付言すると、2022年ドラフトで、7巡262位で最後尾の指名を受け「Mr. Irrelevant (ミスター・イレレバント) 」となったパーディーだが、決して、掘り出し物でも、無名の存在でもなかった。

 母校のアイオワ州立大は、中堅の実力校として知られる。パーディーは1年生から先発QBとなり、2年時にはパス3982ヤード、27TD・9INTという成績で、カレッジトップQBの1人と目されていた。4年間48試合で30勝、ボウルゲームにも4回出場した。ただ、3年、4年とパス成績が伸び悩み気味で、プロからの評価が下がったのだった。
アイオワ州立大時代のQBパーディー。実力派QBとして知られていた=photo by Getty Images
   ◇    ◇

 ガロポロの負傷は、骨折で、インジュアリーリザーブ入り。今季中の復帰は難しいとされている。今後しばらくパーディーがQBを務める可能性が高い。49ersの次戦の相手は、バッカニアーズだ。13週のマンデーナイトゲームで、セインツ相手に、通算44回目の4Q逆転勝利ドライブを達成した「GOAT」トム・ブレイディが相手となる。こういう点も、パーディーが持っている証なのかもしれない。

 ブレイディもまた、2001年シーズン序盤、エースQBドリュー・ブレッドソーの突然の負傷で、リリーフとして登場したのが、実質デビューだった。次戦、NFL初先発の相手チームとQBが、コルツのペイトン・マニングだった。そしてブレイディは、この後、長年のライバルとなるマニングに勝利している。

 パーディーが、GOAT相手にどのようなプレーを見せるのか、見逃せない。

【小座野容斉】

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