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2022-12-27

【箱根駅伝の一番星】順大の伊豫田が関東インカレ10000m優勝を自信に「順大のキーマンは自分だと思っています」

伊豫田は、関東インカレで自身初のタイトルを獲得した(写真/田中慎一郎)

陸マガの箱根駅伝2023カウントダウン企画「箱根駅伝の一番星」では出場20校の注目選手を紹介。箱根では2年連続3区を務め、区間5位、3位とチームの順位を引き上げる快走を見せてきた。今季の関東インカレ1部では10000mで優勝。これをきっかけに意識が変わり、チームの“エース”、“キーマン”としての自覚が芽生えてきた。来る最後の箱根駅伝。往路のメンバーの主軸としてチームを目標の“総合優勝”を目指す。

3区が終わった時点で先頭が見える位置に

「自分たちの学年では野村(優作、4年)や西澤(侑真、4年)がエースです。僕は彼らを支える存在になれればいいと思っています」

自分はエースではない。3年生までの伊豫田はそう言い続けてきた。前回の箱根3区では17位で受けたタスキを10位にまで押し上げる快走でチームの2位躍進に貢献。エースと呼ぶにふさわしい結果を残したが、それでも春の時点ではまだ遠慮がちに「本当に苦しい場面になったときにチームのために走れるのがエース。自分にそれができるかというと、まだ力が足りないと思います」と、慎重な姿勢を崩さなかった。

その伊豫田が関東インカレ1部10000mで優勝したことをきっかけに変わった。伊豫田にとっても個人として学生初タイトル。この種目での順大勢の優勝は、箱根2区で長く区間記録を保持した三代直樹(現・富士通コーチ)以来で、偉大な先輩に肩を並べたことで大きな自信をつかんだ

「周りの見る目も変わりましたし、自分の目指すところも高くなりました。最後の学生駅伝シーズン、他大学のエースと戦ってみたいと思っています」

ここまでの駅伝2戦は出雲で3区区間8位、全日本も7区区間6位とその実力からすれば不本意な結果に終っている。故障ではなく、夏から継続して練習ができていながら、コンディショニングがうまくいっていないことが要因だ。ただ全日本では青学大のエース、近藤幸太郎(4年)と並走し、食らいつく場面があった。

「自分の調子を考えれば、無理せずに離れて自分のペースを刻むべきだったかもしれませんが、箱根を見据える上で、近藤君と少しでも戦っておきたかったんです」

エースとしての矜持だろう。その心意気を長門俊介監督も「伊豫田があの走りをしてくれたことは良かったです。ほかの選手にもその気持ちは伝わったと思います」と高く評価する。

 総合優勝を目指す箱根では序盤3区間の出来が重要と夏から言い続けてきた。その考えは今も変わらない。

「優勝するためには3区を終わった時点で、先頭が見える位置にいる必要があります。ここまでの駅伝2戦で駒大の田澤君(廉、4年)、青学大の近藤君がテンション高くきていますので、往路前半の重要性はさらに増しているはずです。そのなかで順大のキーマンは自分だと思っています。最後の箱根はそれくらい自分にプレッシャーをかけて臨むつもりです」

あとはコンディションを上げていくだけだ。追う展開になっても力を発揮できることは前回の箱根で証明している。学生最後の大一番ではエースとして、周りも自分も納得する走りでチームを高みへと引き上げるつもりだ。


チームの主軸としての自覚をもって挑む最後の箱根駅伝。往路でチームに流れを引き寄せる走りを見せる(写真/藤井勝冶)

いよだ・たつや◎2000年7月18日、広島県生まれ。169cm・58kg、O型。七尾中→舟入高(広島)。2年時に箱根予選会でチーム4番手の24位で本戦出場に貢献。初の大学駅伝出走はこの年の全日本で、2区14位。箱根は3区でチームをシード圏内に引き上げた(区間5位)。3年時は出雲1区5位、全日本3区5位、箱根3区3位。全国男女混合駅伝では2連覇中。今季は、関東インカレ1部10000mで優勝を果たした。出雲は3区8位(総合5位)、全日本は7区6位(総合4位)。自己ベストは5000m13分43秒71、10000m28分06秒26(共に2021年)、ハーフ1時間02分11秒(22年)。

 

文/加藤康博 写真/田中慎一郎、藤井勝冶

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