11月7日(木)、さいたまスーパーアリーナで行われることがすでに発表されていた『WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)決勝』、WBA・IBF世界バンタム級チャンピオン井上尚弥(大橋)対WBA同級スーパーチャンピオン、ノニト・ドネア(フィリピン)の国内記者会見が26日、東京都内のホテルで両選手そろって行われた。また、尚弥の弟でWBC世界バンタム級暫定チャンピオンの拓真(大橋)と、WBC同級正規王者ノルディ・ウーバーリ(フランス)の王座統一戦も同時に開催されることが発表された。
上写真=左から井上真吾トレーナー、拓真、尚弥、大橋会長、ドネア、ドネア夫人でマネージャーのレイチェルさん
今月初めにWBSSサイドから、正式に開催場所と日程は発表されていたが、ドネアの来日スケジュールと、交渉が続いていたウーバーリvs.拓真の決定を待って、大々的な発表が行われたというわけだ。
5月にイギリス・グラスゴーでエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回KOで下した尚弥のパフォーマンスを、ドネアはリングサイドでしっかりと観戦。リングに上がって祝福し、さらには試合後の記者会見にもドネアは訪れ、エールの交換を行った。そして、あらためて約3ヵ月ぶりの再会。ガッチリと両手で握手を交わし、ふたたび健闘を誓い合った。
「自分にとって、これまでの中で最大のキャリアになる試合。そして、次のキャリアに向けて、どんなに大切な試合になるか。それは自覚しています」(尚弥)
彼が培ってきたキャリアはすべて見させてもらっている──。
尚弥は、ドネアのボクシングを吸収して成長してきたことを包み隠さない。
「海外だろうが日本だろうが素晴らしいと思った選手の良い部分は、どんどん真似をして自分のものにしようとしています」。常日頃から尚弥は公言してはばからない。そんな中でも、尚弥に影響を与えた選手の中でもトップクラスなのがドネアだ。
フェルナンド・モンティエル(メキシコ)の右をかわしざま叩き込んで全世界を震撼させた左フックを尚弥も完コピし、さらに進化させている。左フックのカウンターからさらに右アッパーカットを打ち込むコンビネーションなど、尚弥はコピーにとどまらず、必ずオリジナルを構築する。
「ナオヤは驚くべき恐るべきファイター。私は彼の成長をずっと見てきている」と、ドネアもかつてアドバイスを送った若武者の“巨大化”をしっかりと追い続けてきた。
すでにパウンド・フォー・パウンド・ランキングでトップ3に入らんばかりのインパクトを与えている井上尚弥。そして、フライ、バンタム、スーパーバンタム、フェザーと5階級制覇を果たし、マニー・パッキャオに次ぐ“フィリピンが生んだレジェンド”となっているドネア。この軽量級モンスター同士の一戦を、この日本で見ることができるのは、夢のような話だ。
「“生きた伝説”同士の一戦。この戦いの場にいられることが本当に幸せです」。大橋秀行会長の言葉は、まさにボクシングファンの想いを代弁している。
そして、昨年末にWBC暫定王座を獲得し、正規王者ウーバーリとの対戦を義務づけられながら、ウーバーリ側の都合で遅々として“統一戦”が決まらなかった拓真も、ようやく頂上決戦を迎えることができる。
「久々に兄と一緒に、同じリングで戦える。しかも、目標としていた兄弟での世界タイトルマッチ。楽しみでもあり、負けられない」と拓真。
ふたりが同じリングに立つのは昨年5月以来で、今度がちょうど10試合目の競演となる。そしてダブル世界タイトルマッチとしてはもちろん初めて。
「自分の試合よりも、前にやる試合のほうが緊張してしまう(笑)」と、尚弥はいつもながら、弟・拓真の試合を気に懸けるが、「拓真のことを信じてる」と、切磋琢磨し合って磨いてきた日々の重みをひと言で言い表した。
「(ウーバーリは)好戦的で技術もあり、ハートもある過去最強の選手。けれども、兄弟ダブルで勝ちたいし、ふたりでバンタム級を制覇したい」と拓真。
ビッグマッチの連戦でチーフを務める父・真吾トレーナーは、「アマチュア時代からふたりが連続して戦っていたので。世界タイトルマッチだろうが、試合は試合。これまで同様、試合自体の重みは一緒」と、心構えはいつもどおり、を強調した。
なお、チケットはA席10万円、B席5万円、C席3万円、D席2万円、E席1万円の5種で、9月2日(月)から大橋ボクシングジム、帝拳プロモーション、ローソンチケット、楽天チケットで一般販売される予定となっている。
文_本間 暁
写真_山口高明
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