8月17日(日本時間18日)、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスで行われたWBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチで、チャンピオンのエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)が10位の挑戦者フランシスコ・デ・バカ(アメリカ)を3回1分54秒KOで破り、2度目の防衛に成功した。
上写真=ナバレッテの長い右が、デ・バカの顔面を捉える
身長170センチにリーチが183センチという長い腕を生かしたコンビネーションが持ち味のナバレッテがその攻撃力で、全勝のチャレンジャーをねじ伏せた。
ローカルファイターのままアメリカに初遠征したナバレッテが、高評価の王者アイザック・ドグボエ(ガーナ)からWBOタイトルを奪ったのが8ヵ月前。今年5月の再戦では初戦以上に前王者を攻め上げて最終回TKOに追い込み、世界に大きくアピールした。
このドグボエとの2連戦をくぐり抜けたチャンピオンは、「統一戦がしたい。それが叶わないなら階級を上げる」と先を見据えており、圧倒的有利が予想される今回の防衛戦は早々に終わらせたかったのだろう。開始からの攻めはやや粗っぽくもみえた。
重そうな長い左ジャブ、右ストレートに得意の左アッパーで主導権をとりに行くナバレッテだが、振りが大きく無駄な動きも目につく。挑戦者デ・バカは打ち終わりを狙ったまとめ打ちでそんな王者を揺さぶろうとした。2回には果敢に懐へ入り、右ボディブロー、左フックでナバレッテの顔を叩いてみせる。しかし、そこでチャンピオンにスイッチが入るのだ。左ボディブローを叩きつけて挑戦者の動きを止めると、右アッパーからのコンパクトな3連打でデ・バカをノックダウン。そして3回、猛烈な連打でチャレンジャーをロープに詰め、左フックのダブルでレフェリーにストップを決意させた(カリフォルニア州ルールでKO)。
メジャーリーグサッカーに昨年加入したロサンゼルス・フットボールクラブの本拠地、バンク・オブ・カリフォルニア・スタジアムで初めて行われたボクシング興行で、会場を沸かせたナバレッテは「皆さんの応援に感謝します。ロサンゼルスのメキシカンボクシングの伝統を、私も守っていきたいと思います」と宣言。さらに、9月14日にラスベガスで予定されているヘビー級戦、タイソン・フューリー(イギリス)対オット・ワリン(スウェーデン)戦の前座に登場する計画があることも明かしている。その日まですでに1ヵ月を切っているが、ほぼ無傷で早期決着をつけたチャンピオンは、メキシコ独立記念日の週末に花を添えることに意欲的だ。戦績は29戦28勝(24KO)1敗。世界初挑戦が初黒星となったデ・バカは21戦20勝(6KO)1敗。
この日のアンダーカードでは、元WBOスーパーバンタム級チャンピオンのジェシー・マグダレノ(アメリカ)がラファエル・リベラ(メキシコ)とフェザー級10回戦を行い、9回2分55秒負傷判定3-0で勝利した。
サウスポーのマグダレノは、積極果敢なリベラを左アッパーで迎え撃ち、2回には右フックから左を素早くつないでリベラをぐらつかせた。過去一度もKO負けがないメキシコ人の前進は止まらず、中盤のマグダレノはその圧力を持て余し気味だったが、7回に左を効かせて右をフォロー。ダメージを蓄積させ、9回に左でダウンを奪った。ところがその後、リベラのヒジが当たってマグダレノの鼻梁から激しく出血。アクシデントによる負傷で続行不能と裁定され、それまでの採点により、マグダレノが89対81、89対81、88対82でジャッジ三者の支持を得た。
2016年秋に、世界5階級制覇者ノニト・ドネア(フィリピン)を議論の残る判定で破りWBOスーパーバンタム級王座を奪ったマグダレノは、初防衛ののちにブランクを作った。その間に暫定王者となったドグボエと昨年4月に統一戦を行うも11回TKO負けで王座陥落。今年3月に再起し、現在はWBOフェザー級4位で「世界返り咲き」のチャンスをうかがっている。が、この階級では体格の不利を巧さで埋めることになりそう。戦績は28戦27勝(18KO)1敗。リベラは34戦27勝(18KO)4敗2分1無効試合。今年2月、試合直前の代役を買って出てWBAスーパー世界フェザー級王者レオ・サンタクルス(メキシコ)に挑戦、フルラウンドを戦っていた。
文_宮田有理子 Text by Yuriko MIyata
Photo by Mikey Williams/Top Rank
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